第10話 就職活動その二
その「みっちゃん炭仲銀行」を出ると交差点で信号待ちをする。すると同じように信号待ちをしている見た感じが欧米人だと思われる二人連れがいた。聞くともなしにその二人連れの会話が耳に入ってくる。どうやら英語を話しているようであるが途中から日本語が混じっていた。
「Hey、おとな、オナニー、おもちゃ!」
何だか経済とか今の国際情勢について話しているかと思ったが下ネタだったとは!それにしてもどうしてそこだけ日本語なんだよ!思わず心の中でツッコミを入れてしまった。しかし、少し落ち込んだ気分がその二人連れの外国人のおかげで和むことができた。日本人はどちらかと言うと暗い感じするが特に欧米人は活力に満ち溢れていて人生に対して前向きに取り組んでいるという感じがするのは僕だけだろうか?多少なりともその二人連れの外国人から活力をもらったので手をいつもよりは大袈裟にふりちょうど信号が青に変わったので渡ることにする。
さて、また例の顔馴染みがいると自分で勝手に思っていたコンビニエンスストアに入っていく。思えば異変はこのコンビニエンスストアから始まったのであまり縁起は良くないが今は昼時なので昨晩みたいなことはないだろうと思う。それに喉も乾いていたので何か飲み物と就職情報誌を買うことにする。飲み物のほうは缶コーヒーを探したが何やらちょっと変わった感じがする缶があった。普通は円筒形であるがキャップに近い部分が細くなっている?新発売に違いないとは思うがそういった種類の缶コーヒーがいくつかありメーカーがいっせいにそろって発売したのであろうか?そういう事もあるかもしれない。あまり気にしないことにする。
お次は肝心の就職情報誌である。雑誌コーナーに行き目当ての「ドューイング」という今日の朝までは存在していたであろうと思われる僕が勤務していた(いる?)会社に就職する時にお世話になった雑誌である。これさえあればいくらでも次の仕事は見つけられる。速攻で今日のうちにも面接に来てほしいと言われてその場で決まるかも知れない。そうすれば後は楽勝である。人生なんの心配もいらない。期待に興奮して探してみる。
ところがである。
いくら探してもその「ドューイング」が見つからない!発売日に売り切れたのであろうか?落胆と焦る気持ちが湧いてくる。またもや例の薄い板の時と同じ会話を店員としなければならないのであろうか?ここは一回この店から出た方がいいようである。とりあえず、缶コーヒーだけは買うことにして店を後にした。
たぶん、あの店は呪われているに違いないと田沼耕作は思った。そんな田沼耕作を電柱の陰から見ている一人の少女がいた。
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