第8話 就職活動
その若い大家さんの家を後にした田沼耕作はこれからどうすべきか考えた。まず今晩泊まる所がないのでとりあえず駅前のカプセルホテルにでも一時的に身を寄せることにした。しかしながら、問題は解決していない。優先順位としては今所持しているお金を銀行預金も含めて早急に確認すべきである。
そういわけで駅前に向かった。ところがいくら探しても自分が口座を作っている銀行が見当たらない。
可能性としてその銀行に入り行員に訪ねてみればいいかと思った。そしてその「みっちゃん炭仲銀行」の自動ドアを通り抜けた。中はごく普通の銀行であった。壁とかにアニメに出てくる美少女の絵を飾っていることもなかった。一応、安心はする。
制服を着ている女子行員がいたので尋ねてみることにする。
「すいません。こちらの銀行に似ている名前のカードを持っているのですが、これは使えますでしょうか?」
「ちょっと見せてもらえますか?」
その女子行員は僕のカードをしげしげと見ていたが目を見開き不思議そうな顔をした。
「家にあった古いカードを持ってきたとかではないですよね。それに最近は詐欺が多くてね」
「いいえ違います。とりあえず、使えるかどうか確認したいだけです」
「まあ、あそこのATMで暗証番号が合っていれば使えます。合っていなければこちらとしましても警察に通報することになるかも知れませんが」
なぜ自分のお金なのに警察に通報されなければならないのか?それに詐欺が多いとはどういうことか?またしても不可解な現象である。しかしどうやらATMは使えそうなので行ってみる。カードを挿入口に差し込み暗証番号を押す。するとATMは間違えることなく正常に作動してくれた。
残高を確認すると三十万円ぐらいはあった。給料をもらったのがまだ昨日なのでそれほど減ってはいなのは良かった。そういえば思い出した。昨日は給料日なのでいつもよりはいいものを居酒屋で注文した。そんなことを思っていると腹もへってきたが、これから仕事が決まりある程度のお金が入るまではこの三十万円でやりくりしないといけない。カプセルホテルに行く前にコンビニエンスストアか本屋にでもより就職情報誌を買って帰ることにするか。
この時、田沼耕作は簡単に次の仕事が見つかると思っていた。
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