第2話 夜の公園

それからどうやっておんぼろアパートまで帰ったのかはあまり覚えていなかったが何とかして部屋まではたどり着くことはできた。

 まあおんぼろアパートといえどもとりあえず部屋には風呂、トイレは備えられていたので熱いシャワーでも浴びれば気分も一新されあとはぐっすりと寝られると思いただそのことだけを思い描いていた。


 二階まで階段を上りそこから二つ目が僕の部屋だった。しかしながら階段を上りながら何となく違和感を感じていた。

 

 おんぼろアパートと自分でも言っているがそれは高級マンションと比べてそれほど豪華な作りではないという意味であり、そこそこの快適な暮らしはできる環境ではあった。


 ところがその日は本当におんぼろアパートになっていた。階段の所々に穴があり、危うくこけそうになったりした。


 たった一日でこんなに建物が劣化するわけはないと思ったがとりあえす部屋の前に立つとズボンのポケットから鍵を取り出し開けようと差し込むとどうもうまく入らずに回すことが出来なかった。


 何回も試してみたがやはり無理だった。


 こんなことをしていても埒が明かないので今晩は近くの公園で夜を明かして朝になったら大家さんに連絡してクレームを言うことにするほうが賢明だと判断した。


 また階段を下りたが今度は手摺もグラグラになっていることに気が付き、もうちょっとでそのまま下まで転がり落ちそうになった。


 公園まではさほど遠い距離ではなかったのですぐに着いた。


 ブランコがあったのでそこに腰かけて夜空を見上げて感慨に深けた。どうも酒を毎晩飲んでいるのが悪かったのか?いや、酒なら誰でも飲んでいるのでそれなら酒を飲む人全員が今晩みたいな怪奇現象に合いテレビとか新聞で報道されて社会問題になっているはずである。

 そんなニュースを聞いたこともなければ見たこともない。


 いろいろと考えてもこの場で結論は出そうにないのでここは時の流れに身をまかせるしかなさそうである。そういうタイトルの歌謡曲もあったことだし。

 

 この時はまだ田沼耕作はいつもの生活が続くと思っていた。


 

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