第2話
「なるほど。異世界、ね。まあ、僕と楓の愛のロマンスには必要なことだよね!」
「死ね。で、これからどーすんだ?」
「そこなのよね。幸い荷物の中に水分と食料はあるから問題ないのだけれど」
「こんな草原だし、肉食動物の5匹や10匹はいても可笑しくないよね」
「え、肉食動物…!?」
「いや、いるでしょ。ついさっき草食動物の骨っぽいのも見たし。あ、拾ったから見る?」
「梨紅、後にしなさい」
あっちゃんに怒らたので仕方なく諦める。
「まあでも骨だし、武器には使えるでしょ?」
「ええ。その点に関して"だけ"は褒めてあげる」
「やったねー。で、話を戻すんだけど。これから南方向に3日間くらい歩こうと思ってるんだけど。問題ないよね?」
「3日間ってまるまる?」
「いや、流石に睡眠とか適度に休憩しないと体調崩すしね。まるまるではないよ」
そう返せば長谷川さんはほっとした顔をした。
「で、ルール作ったから聞いてね。1つ、もしトイレに行きたいって思ったらそこら辺の茂みでして下さい。ちょっと遠くでしたい場合は、3人で行動すること!」
「2つ、食料は1日2回で少しずつ計画して食べること。勿論、水もよ」
「3つ、肉食動物が襲ってきたらまず逃げること。1匹だけなら協力して倒してもいいけど、大体群れで行動している筈だから。基本逃げること!…くらいかな?」
「因みに火の番は2人ずつします」
「ちょいちょい寝ながらってことだな」
「え、楓!もう一度ちょいちょいって言って!今の凄く可愛いかった!もういっ」
「しつけぇ!」
真っ赤な顔をして涼太を蹴り上げる楓。その光景にうんざりしながら呟く。
「……バカップルは相変わらずだねぇ」
「……諦めなさい。こいつらはもうどうにもならないわ」
「……そだね」
取り敢えず、ホモップル達をなんとか落ち着かせて、南へと進む。ただただ進むだけなのだが、街がどこにあるか分からない。いつまで歩かないといけないのか分からない。という精神的苦痛によりか、みんないつもよりもバテやすくなっていた。しかし、そんな中相変わらずな会話をしている2人を見て溜息をつく。
「はあんっ!バテてる楓も可愛いよ!はぁはぁっ!」
「っうるせぇし、きめぇんだよ!」
勿論、涼太が気持ち悪いのには賛成だが、涼太の言葉に顔を真っ赤にさせている楓も中々に恐怖の対象だった。この世にバカホモップルほど恐ろしいものはないだろうと、確信した瞬間だった。そうあっちゃんにこぼせば、あっちゃんも無言で頷いていた。だよね。と少し安心したと同時に、絶望した。私達はあとこれを3日ほど続けなければいけないということに。このバカホモップルの惚気を3日間ずっと聞かないといけないなんて地獄だ。そうこぼせば、今度は長谷川さんまでも真面目な顔で頷いていた。
げんなりとしながら歩けば楓命!な涼太がこちらを向いたので、何かあったのかと少し近づいて後悔した。
「おや!元気がないね!全くもう!僕と楓をちゃんと見習わなきゃダメだぞ♡」
「死ね。血反吐吐いて死ね」
この言葉にイラっとしたのは私だけではない筈だ。あっちゃんも顔を引きつらせているし、長谷川さんはドン引きしているようだった。
「アイツを餌にして逃げよう」
「どうせなら楓も入れなさいよ」
「えー…楓いれたらアイツ喜ぶじゃん。だからやだ」
「それもそうね」
楓の腕にしがみ付く涼太を見ながら、私とあっちゃんは9割本気で1割冗談な会話をする。そんな会話に私達は少し気分を良くしたが、相変わらず喧しい楓達(主に涼太)を見てまた気分が滅入るのだった。前途多難である。
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