このパーティは最強です。

能面女

第1話

私、雛森梨紅は親友のあっちゃんこと響ありさと幼馴染のホモップル春日涼太と進藤楓。そして、クラスのみんなから余り好かれていない…確か、長谷川姫花って子の5人で清水寺に行こうとしていたはずなんだけど。とついさっきまでの現状を思い返してみるが、見渡す限りの草原に思わず呆然となる。


「…ここどこ」

「……良かった。私の目が可笑しくなったわけじゃなさそうね」


ぼそりと呟いた私の言葉に、あっちゃんは安心したようだった。いや、安心している場合ではないのだけれど。ふと他のみんなは現状をどう受け止めているのかと周りを見渡す。そして、直ぐ後悔した。


「ああ、楓!ここは愛しの楓と僕しかいない2人だけの空間だ!さあ!俺の胸へと飛び込んでおいで!」

「この状況で何言ってんだよ。つーか、2人だけの空間じゃなくてもいつでも抱きしめあってんじゃねーか。今更気にする必要ねーだろ」

「……楓、今直ぐ君を抱きしめてもいいかい?」

「いいに決まってんだ……ダメに決まってんだろ!!って抱きつくんじゃねーよ!?」

「ああ、嬉しいよ!君の鼓動を感じる!」

「離せって言ってんだろ!!」

「………君は僕と抱き合うのが嫌なのかい?」

「………ちっ。少しだけだからな」

「ああ!ありがとう。ついでに、キス」

「ダメに決まってんだろ!?」


………あいつらに期待した自分が馬鹿だった。と痛感した瞬間だった。


「ホモップルはほっとこ。ところで、長谷部さんは?」

「長谷川さんのこと?あの子はまだ呆然としているわよ。話しかけてみる?」


そうそう長谷川さんだ。と苗字を今度こそ脳に叩き入れようと心の中で何回か復唱する。


「まあ、取り敢えず話しかけてみよ」


そう言いながら長谷川さんの元へと歩いて、肩をとんとんと叩く。


「あ、雛森さんと響さん…」

「ね、突然で申し訳ないんだけどここがどこだかわかったり…しないよねぇ」


困惑している顔を見て、期待はしていなかったがやはりと落ち込む。


「ここ、一体どこなんだろう」

「やっぱり、雛森さん達も分からない?」

「当たり前でしょ。まず、こんなに広い草原は京都にはないわ」

「え、じゃあ京都じゃなかったらここは?」

「待って。まずそもそも、ここが京都じゃなかったらって話自体が可笑しくない?」


長谷川さんの言葉に思わずつっこめば長谷川は怪訝な顔をした。まだ混乱してるし気付かないのも無理ないか。


「どういうこと?」

「京都っていってもだだっ広いし、一瞬でこんな場所に移動できるわけがないじゃん?」

「でも、京都の前に日本にこんなに広い草原自体あるかどうかも怪しいわよね。あったとしてももっと人が居るはずだわ」

「それな。ってか山すら見当たらないし…」


うーん。と頭を捻るがやはりこれしか答えは出てこない。


「うん。やっぱりここ日本じゃないんだよ」

「…え?」

「日本じゃない以前にここが私達の世界じゃないって可能性の方が高くない?」

「え、ちょ」

「じゃあ、それで話を進めよ。今度はあのホモップルも呼んで」

「そうね。流石にいつまでもいちゃつかれると困るものね」

「じゃあ、呼びに」

「え、ま、待って!」


呼びに行こうと言いながら長谷川さんに背を向ければ、肩を掴まれた。しかも強く掴まれたから結構痛い。


「何?」

「何でここが私達の世界じゃないってすぐ認めるの?」

「え、じゃあ、逆にここが自分達の世界だと長谷川さんは信じて疑わないの?」

「だって、異世界だなんてそんなの有り得ないよ!」

「えー。まず、京都に居たのに一瞬でここに移動してたってこと自体が有り得ない話じゃん」


そう言えば、長谷川さんは今思い出したという顔をする。


「でも、だからって異世界だって決め付けるのはおかしくない?」

「長谷川さん、私達はここが異世界だとは決め付けてないわよ」

「え?」

「ここは異世界の可能性が高いからそういう方向で話を進めて行こうねってだけだよ。違ったら安心ってだけだし。ね、あっちゃん」

「ええ。だから、別に私達がここは異世界だって断定したわけじゃないから、そんな不安にならなくていいわよ」


そう返せば気まずそうな顔をして長谷川さんは謝ってきた。そんな長谷川さんを見てふと思う。もしかしたら、長谷川さんは現状を正しく認識するのが苦手なだけで、長谷川さん自体はそこまで害はないのかもしれない。そう考えてみると、今までの長谷川さんの人物像が私の中でがらがらと崩れていくような感覚になった。しかし、この長谷川さんに対する新しい評価もがらがらと崩れていくことを私はまだ知らなかった。

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