第17話
「こちらが最後です」
エルにお姫様抱っこされたシュウは紹介された最後の家を見てみたのだが、
「・・・びみょー」
そう声に出してしまった。実際に紹介された家は作りもしっかりしていてどこも悪いところがないのだが、シュウはあまりピンときていない様子であった。
「・・・そうですか」
ギリムはシュウの言葉に軽く落胆してしまった。というのも、この最後の家を見に来るまで三件紹介されていたのだがシュウはどれもあまりピンときてはいないようだったのだ。
「確かにどれもいい家ではあるんだけど・・・」
落胆したギリムに若干申し訳なさを感じたシュウだった。
「エルはどう?」
「私はシュウ様がいるならどこでもかまいません」
シュウはエルに聞いてみるとそのような答えが返ってきた。それを聞いたシュウは苦笑を浮かべた。そんなシュウ達にギリムは言いずらそうに顔をしつつ話しかけた。
「・・・実はもう一件あるのですが、少し問題がありまして」
「問題って?」
「これは実際に見てもらったほうが早いでしょう」
ギリムはそう言うとシュウ達を連れ問題のある家へと向かった。もちろんシュウはエルに抱えられて・・・。
~~~~
「こちらになります」
ギリムに紹介された家はなんと和を感じさせる家であった。
「へ〜、いいじゃん」
家を見たシュウは今回初めて好感触を示した。
「ソーン様、少々よろしいですか?」
シュウが家に興味を持っているとギリムが中にいるであろう人物に声をかけつつ玄関をノックした。
「・・・もう誰か使ってるの?」
「あ〜、使っていると言うよりは憑いていると言ったほうが正しいかもしれません」
「?」
シュウがギリムの答えに不思議そうな顔をしていると玄関が開いた。
「おお、誰かと思ったらギリムじゃったか」
玄関から現れた人物は白ヒゲのはえた老人がいたのだが、
「・・・!?」
なんとその老人は足がなかったのだ。正確に言うなら足首から先が透けていて浮いている状態であった。そのことにシュウは驚いた。
「なるほど、
「霊魂?」
エルが呟きにシュウは聞き返す。
「はい。霊魂とは、生物が死んだ際通常は魂をまっさらにして次の生に移るのですが、たまに世に未練のあるものは世に残ったりします。この際、肉体はすでに死んでいるので魂の受け入れるものがないため魂のみで活動するのです。魂のみなので世に干渉することはできませんが、例外もいます」
「なるほど、幽霊みたいなもんか」
エルの説明を聞いたシュウは納得した。しかし、シュウ以外の二人は驚いた顔をしていた。
「なんと、ソーン様はレイスではないのですか?」
「レイスは霊魂になる際に憎悪などの悪意のみで世に残った魂のことです」
「そうだったのですね」
エルの言葉を聞き驚いた顔をギリムはした。
「それは知らんかったの〜」
そして、霊魂の老人も感心したような声をあげた。
「それで、その人は誰なんですか?」
「おっとこれは失礼しました。この方はソーン・ウィンクレス様です。元宮廷魔術士でウィンクレスという国で最も優秀な魔術士に送られる称号を与えられた人物です」
「今はこんななりじゃがな」
ギリムに紹介された老人、ソーンはヒゲを触りながら笑った。
「俺はシュウって言います。それで、今抱っこしてもらってるのがエルです」
「ガブリエルと申します」
「ふむ・・・」
エルが頭を下げるのを見ていたソーンが難しい顔をしていた。
「エル殿は何者なんじゃ?」
ソーンはエルの実力を測りきれないので警戒しているようであった。
「ああ、私は天使でシュウ様に仕えるメイドです」
そう言うと背中に羽を出現させた。
「なんと!?」
ソーンはエルの背中に出現した羽を見て驚いた。それは、エルが天使であったこともそうだが天使という高位の存在を使役しているシュウにも驚いたのである。
「ソーン様実はシュウ様はリリア様を救っていただいたのです。そして、その報酬として家をご所望だったのでこちらの家を紹介させていただきました」
「そうか。じゃが、わしはここを離れるわけにはいかんのじゃ」
「それは、どういうことですか?」
ソーンのどこか遠くを見つめる目を見ながらシュウは質問した。
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