第16話

「お疲れ様です」


二人が踊り終えたところにメリルが声をかけた。


「リリア様、今まで失敗していたところですが完璧にできていました。そして、シュウ様リリア様の練習相手になっていただきありがとうございます」


「気にしないで、俺がやってみたかっただけだから・・・それじゃあ、俺たちは行くから」


頭を下げるメリルにそう言うとシュウは部屋を出ていこうとした。


「あ、あの!・・・また、踊っていただけますか?」


ドアノブに手をかけたところにリリアが若干顔を赤くしながらシュウに言った。


「ん〜、気が向いたらね」


リリアの申し出に軽く一言返し部屋を出て行った。


「それじゃ、散歩の続きをしよっか」


「はい」


シュウとエルはそれから城の行ってはいけない場所以外を適当にぶらぶらした。


そして、散歩を終えたシュウたちは元の部屋に戻ってきた。


「さてと、まだ時間はいっぱいあるし何するか?」


部屋に戻ったシュウはまだ時間があるので何をするか考えていた。


「でしたら、魔法の練習をしてはいかがですか?」


「・・・魔法かぁ」


エルの提案にシュウは微妙そうな顔をした。なぜなら、シュウは魔法に関していえばできないことがない感じが自分の中にあるのを感じていたのだ。なぜ、そのような感情が生まれるのかシュウ自身もわからないがそう感じてしまっているのでエルの提案に頷けなかった。


「魔法の練習と言っても魔法のレパートリーを増やすことです」


「レパートリーを増やす?」


「はい、シュウ様がお使いになられた魔法は今のところ『召喚魔法』と『スパーク』のみです。それではさすがに少なすぎるので使える魔法の種類を増やすのです」


「なるほど」


確かにエルの言うとうりシュウは未だ二つしか魔法を使っていない。


「よし、それじゃあ魔法開発するか」


「はい、魔法はイメージが重要なのでしっかりしたイメージができていないと危ないのでご注意ください」


それからシュウは普段の怠惰な様子からは想像もつかないほどの集中力を発揮し寝る間も惜しんで魔法開発に取り組んだ。


それから十数時間経過した頃、部屋のドアがノックされた。


「シュウ様、家の方が見つかりました」


ノックしたのはギリムだった。そして、ドアをエルが開けた。


「どうぞお入りください」


ギリムが部屋に入るとそこには床に座り顔を伏せた状態でブツブツと何かをつぶやくシュウの姿が目に入り驚いた。なぜなら、普段のシュウの気だるげな雰囲気ではなく一心不乱に何かに取り組む姿を見たからだ。


「シュウ様、ギリム様が家を見つけになりましたよ」


エルがシュウを軽く揺するとシュウが顔を上げギリムの存在に気がついた。そして、集中が切れたのか先程までの雰囲気がなくなりいつもの気だるげな雰囲気へと戻った。


「いらっしゃい、ギリムさん。家が見つかりましたか?」


「はい、四件ほど候補が見つかったので実際に見ていただこうかと」


大きく伸びをしつつギリムに問いかけると何件か候補が見つかったことをシュウに告げた。


「見に行くって今から?」


「はい、そうですけど・・・」


それを聞いたシュウは微妙な顔をした。実は魔法の開発に集中して疲れていたので歩く気力が今はないのだ。そんなシュウの気持ちを悟ったのかエルがある提案をした。


「シュウ様もしよろしければ私がシュウ様を運びましょうか?」


なんとエルはシュウを物件まで運ぶと言うにだ。


「あ〜、ならそうしてもらおうかな」


普段のシュウならいくら面倒くさがりだからといってそこまでしてもらわないのだが、今は疲れ切っていたのでエルの申し出を受け入れたのだった。


「では、失礼します」


シュウの返答を聞いたエルはなんとシュウをお姫様抱っこした。


「・・・ま、いっか」


文句を言おうとしたシュウであったがめんどくさかったので、そのまま連れて行ってもらうことにした。


「それでは、私が案内いたしますのでついてきてください」


ギリムを先頭にしてシュウたちは部屋を出て行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る