第13話
「よし、行こうか」
食器を洗い終え自室へ戻った宗はすぐにヘッドギア『ネバー』をつけてAWOの世界に戻った。
「よっと・・・ぐふっ」
シュウがAWOの地に足をつけると同時にお腹に衝撃がはしった。そして、シュウは後ろにあったベットに倒れた。
「ああ、シュウ様お帰りなさいませ。信じていました、いましたけれど不安でした。この12時間34分24秒不安で不安で仕方ありませんでした。・・・ああ、そうですそうです、シュウ様がもう元の世界に戻る必要がないようにすればいいんです。私がずっとお世話をします、シュウ様はベットの上でゴロゴロとまったりすごしていればいいですよ。私がごはんを食べさせてあげます、お風呂も私がお入れします、下のお世話も私がします。シュウ様が望むのであれば私の体を使って癒してさしあげます。なので、ず~と私と一緒にいましょう」
シュウのお腹にはしった衝撃はエルがシュウに飛びついてきた衝撃であった。そして、押し倒された形になったシュウにまたがるようになっているエルは光のなくなった目をシュウに向けつつまくし立てるように言ってきた。
シュウはそんなエルをみて怖がるでも気味悪がるでもなく愛おしく思った。なので、シュウはエルの頭を抱き寄せ、その頭を撫でた。
「エル、ごめんけどそれはできないんだ。向こうには大切な家族もいるし友達もいる。だけど、それと同じくらいエルのことも大切だ。だから、時間があるときはできるだけこっちにいるしエルと一緒にいるからそれで許してくれないか?」
頭を撫でつつエルにそう言ったシュウの顔はいつもの眠たげな顔ではなく愛おしげな顔していた。
「・・・申し訳ありません、シュウ様。取り乱してしまっていたようです。ですが、もう少しこのままでお願いします」
エルはそう言ってシュウに体を預けた。そんなシュウはエルの頭を撫で続けた。
「ガブリエル様、シュウ様はお帰りになりまし・・・」
二人がそんなことをしているとドアが開いた。そこには顔を赤くしたリリアがいた。
「す、すいません!ま、ま、まさかお二人がそのようなことをしちぇいるとは!し、しちゅれいちます!」
リリアは二人がベットの上で抱き合っているのをみて慌てたように部屋を出て行った。
「あ~、後で誤解を解かないと・・・」
「私は誤解されたままでもかまいませんが」
エルはシュウの胸に頬ずりをしつつ言った。その言葉に苦笑しつつシュウはエルの頭を撫で続けた。
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「えっと、お帰りなさいませシュウ様」
帰ってきたリリアの誤解を解いたシュウはエルに膝枕をしてもらいベットに横になっていた。リリアはちらちらとシュウのことを見ていた。実際はエルのしている膝枕をうらやましげに見ていたのだがシュウは気づかなかった。
「うん、ただいま」
「あの、それでですね魔力操作について教えていただきたいのですが・・・」
「いいよ、なら今からでも大丈夫?」
ベットでエルに膝枕されているシュウを見て少し遠慮がちにリリアが言ってきた。それに対しなんでもない感じに言った。
「はい、大丈夫です!」
シュウの答えに嬉しそうに答えたリリアだが、そんなリリアを見ていたエルは
「また、シュウ様に近づく雌豚が・・・」
と小声で言っていた。
「じゃあ、こっち来て座って」
シュウは膝枕から起き上がるとベットの端に座り、その横をぽんぽんと叩きリリアに座るように促した。
「そ、それでは失礼します」
「・・・そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
シュウの隣、しかもベットということで緊張しているリリアに魔力操作をすることに緊張しているんだと考えたシュウは落ち着けようと頭を撫でた。
「は、はひ~」
だが、リリアは頭を撫でられたことでさらに緊張してしまった。
「リリア様には私が教えますのでシュウ様はこちらの本を読んでお待ちになってください」
そんなシュウとリリアの間に強引に入り込んできたエルはどこか怒った口調でシュウに本を渡した。
「・・・わかった、ならエルにまかせるね」
そんなエルに苦笑しつつ本を受け取る。そして、ベットに寝転がり本を開いた。
「それではリリア様、魔力操作についてお教えします」
「・・・はい」
シュウに教えてもらえると思っていたリリアは残念そうな顔をしたが、魔力操作は自分にとって重要なことなので気持ちを切り替えまじめに聞くことにした。
「まず、魔力操作をおこなう前に体内にある魔力を感じていただきます。目を閉じ体の中にある魔力を感じてください」
「わかりました」
リリアは目を閉じ集中した。
10分ほどして再び目を開けた。
「・・・まったくわかりません」
どこか悔しそうに、そして申し訳なさそうにエルに告げる。
「まあ、そうでしょう。普通、魔力がどういったものであるかわからない状態で魔力を感じられることはありません。感じられたのならそれは異常なことなのですから」
本を読みつつエルとリリアのほうにも意識を向けていたシュウはエルの言葉を聞いていたたまれなさを感じた。
――俺、魔力がどんなものか知らない状態で魔力感じたけど・・・
シュウは魔力を感じるとき血液のようなものっと思って魔力を感じたがそれは現実での創作物のなかに書かれていたものであって魔力が血液のようなものであるかは実際はまったくちがう。だが、シュウは魔法適正がものすごく高いため魔力をすぐに感じることが出来たのだ。
「ですから、私がリリア様に魔力を流しますのでそれで魔力がどのようなものかを感じてください」
シュウが自分の異常性を認識しているとエルがリリアの手をとっていた。そして、エルが魔力を流し始めた。リリアも目を閉じ集中して魔力がどのようなものなのかを感じている。
「わかりました」
少しするとリリアがそう言って目を開けた。
「それではもう一度、体内の魔力を感じてください」
再び目を閉じたリリアは1分もかからないうちに目を開けた。
「魔力を感じることが出来ました」
「ほう、リリア様は才能がありそうですね」
「そ、そうですか」
リリアがすぐに魔力を感じたことにエルは驚きそう賞賛した。リリアはほめられたことで照れたような顔をした。
「そして、最後になりますが体を巡る魔力を手に集中させてください」
「もう最後なんですか?」
「はい、ただこの魔力を集中させることはかなり難しいので頑張ってください」
シュウはそれを聞いて自分も手に魔力を集めてみるとすぐに出来た。
「シュウ様は魔視をすでにしようできるので簡単に出来てしまいますよ」
「・・・なるほどね」
シュウがやっていることを感じたエルはシュウにそう言った。
「ん~、確かに難しいですね」
シュウ達がやり取りをしている間にリリアもやっていたようだがうまく出来ないようだ。
「これはすぐにできるようになるものではないので時間があるときにでもしていればいつかできるようになります」
「わかりました」
そして、リリアは1時間ほどシュウの部屋で魔力を集める練習をしていたが出来なかった。リリアはこのあと用事があるようで部屋を出て行った。出て行くとき、「また来ます」と言っていったのでまた会いに来るつもりのようだ。
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