第12話

「ん~、戻ってきた」


 現実世界に戻ってきた宗は体の凝りをほぐすために伸びをした。


「さてと、時間的にそろそろ夕食の準備しないと」


 時計を確認した宗はかぶっていた『ネバー』をはずすと一階に降りた。そして、リビングとキッチンが一緒になったリビングキッチンへと入り夕食の準備を始めた。


「さてと、大和にはチャーハンを作るって言ったけどチャーハンだけじゃ物足りないよな」


 宗は冷蔵庫の中を見ると卵がチャーハンを作るにしても結構あまっていた。


「卵スープでも作るか、卵ばっかりだけど」


 夕食のメニューを決めると宗はさっそく作り始めた。まず、卵スープを作ることにした。沸騰したお湯に中華スープのもとをいれ溶き卵を入れて卵スープの完成だ。


 次はチャーハンだ。これも、すぐに作ることが出来る。まずネギを縦半分に切り、小口切りにする。次にボールに卵をいれかき混ぜる、その中にごはんをいれよく合わさるように混ぜる。これがチャーハンをパラパラにするコツだ。熱したフライパンに油をひき、挽肉を強火で炒める。挽肉に火が通ったらごはんをいれ、ヘラで切るように混ぜながら炒める。ご飯がパラパラになってきたら、ネギと醤油を加えて軽く混ぜながら炒め、仕上げに酒を加えて軽く炒めたらほぼ完成だ。あとは味見をしつつ塩コショウで味を整えたら完成だ。


「よし、完成だ」


 チャーハンの味を整え終わり夕食が完成した。


「こんちゃーす」


「こんにちわ~」


 宗が夕食を完成させると玄関のほうで声が聞こえた。大和と楓が来たのだろう。部屋のドアが開くと宗めがけ一つの影が突っ込んできた。


「しゅーく~ん!」


 その影は宗の元に行くと宗に抱きついてきた。宗に抱きついたのは楓だった。長い黒髪をストレートにし、いつもは凛としている顔をだらしなく緩ました楓が宗を胸に抱き寄せている。


「・・・」


 宗は楓の大きな胸で抱きしめられているので息が出来ない状態になっているのだが、いつもより疲れているので抗うことすらめんどくさかった。


「姉貴、宗が死にそうになってるぞ」


「ああ、ゴメンねしゅーくん」


 大和に注意された楓は息が出来るよう少し力を弱めたが、楓は腕の中にいる宗に頬をこすりつけている。


「宗、どうした?いつもみたく避けるか叩き落とすかしろよ。つか、抵抗くらいしろよ」


 そう、宗は楓がいつも抱きついてくるのでいつもは避けるか叩き落しているのだが疲れていた宗はそれをしなかった。


「まあ、冷めないうちにごはん食べようよ」


 そういい楓の抱きつきから離れ席に着いた宗とどこか不思議そうにする大和と満足した表情の楓が席に着いた。


「「「いただきます」」」


 三人席についたと同時に手を合わせ食べ始めた。


「やっぱり、宗の作るメシはうまいな」


「ありがと、おかわりもあるよ」


 チャーハンをかきこむ大和に礼を言いつつ自分も食べる。いい出来だっという風に軽く頷く。


「そういえば宗悪かったな」


 ごはんを食べ始めてから中盤、大和は二杯目だがに大和はそう言って謝ってきた。


「・・・なにが?」


「いや、AWO最初教えてやるって言ってたのに教えてやれなくて」


 宗は最初大和がなぜ謝ってきたのかわからなかったが次の言葉で大和が何を言っているのか思い出した。実際宗は大和に言われるまでそのことを忘れていた。なぜなら、あの後いろいろありすぎてそのことを完全に忘れていたのである。


「ああ、前の仲間がいたんでしょ、なら仕方ないしうみゃい棒おごってくれるんだろ?」


「もちろん、10本おごってやる」


 うみゃい棒自体安いので宗がそこまで気にしていないのも大和はわかっているのだろう、申し訳なさそうにしているがそこまで深刻な雰囲気ではない。


「ねえ、しゅーちゃん、どうAWOは?」


 一緒に住んでいる楓も宗がAWOを始めたのを知っているのだろう、どんな感じであったか聞いてきた。


「ん~、なんていうか楽しいんだけどなんかなんていうんだろう・・・」


 楓の問いに宗はいまいちピンッとくる言葉がみつからなかった。


「楽しくないの?」


「楽しいんだけど、なんていったらいいのかな~」


 楓が不安そうに楽しくないのか聞いてきたのですぐ楽しいと答えたが、やはり続く言葉が出てこない。


「そういえば俺がメッセージ送った後どうしてたんだ?」


 若干雰囲気が悪くなったのを感じた大和は話題を変えるためそう質問した。


「えっと、あの後は~・・・」


 話題を振ってきた大和に感謝しつつ質問に答えようとした宗だが、説明するのがめんどくさいほどいろいろあったので省略して伝えることにした。


「図書館に行って、天使を召喚して、お城呼ばれて、お姫様助けた」


 宗の省略した説明を聞いた大和と楓は目を見開いて驚いた。そして、宗は驚いた二人をよそにチャーハンを再び食べ始めた。


「ちょ、ちょっと待て。天使ってなに?え、城って入れんの?姫様を助けるってなに!?」


「私も聞きたいな」


 宗は聞かれると思ったが説明するのがめんどうなのでどうしようか悩んでいると楓からまじめなトーンでの質問に仕方なく説明することにした。


「まず、天使だけど俺が魔法で召喚した。そして、召喚した天使を見た図書館の人が王城の関係者だったからお城に連れてかれた。連れてかれた原因は天使がすごい力を持っているのと病気の姫様を救ってくれるようお願いするため。それで、助けることにしたからお姫様を助けた」


 端的にまとめた宗の答えに二人とも驚きを隠せないでいた。


「天使を召喚ってそんなスキルあったか?」


「ちがうよ大和、しゅーくんは魔法っていったの。もし召喚系のスキルなら『召喚魔術』だもん」


 大和の疑問に楓が答えた。答えた楓もどこか納得していない様子であった。


「しゅーくん、質問するね」


「いいよ~」


「まず、職業は?」


召喚士サモナー


「最初に選んだスキルは?」


「魔物言語、妖精言語、竜人言語、神族言語、魔法言語」


「・・・魔法っていうのは?」


「図書館で『魔法について』ていう本を読んで試しに使ってみたら使えた」


「天使はどうやって召喚したの?」


「魔法を使おうとしてどんな魔法を使うか悩んで職業にあやかって召喚魔法を使ってみたら召喚できた」


 宗の回答を聞いてやはり納得できないっという風な楓。


「・・・魔法っていたいなんなのよ」


「世の理すら凌駕する術だって」


 楓の独り言に宗は答えた。それを聞きますます訳わからんという表情になった。


「まあ、いいじゃねえか姉貴宗が楽しそうにしてるんだから」


「・・・そうね」


 大和の言葉に楓は諦めたように息を吐いた。


「宗、今度一緒にAWOで遊ぼうぜ」


「うん」


 そして、夕食を食べ終わり大和たちは自宅に帰っていった。帰る時楓が「魔法について調べなくっちゃ・・・」といっていたのは誰の耳にも届かなかった。

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