第14話

「さて、続きを読むか」


 リリアが部屋をでていき、シュウはエルから渡された本を読もうとしてふとあることに気づいた。


「そういえばこの部屋いつまで使っていいの?」


「一ヶ月ほど使ってもいいそうですよ」


 シュウの疑問にすでに聞いていたようでエルは答えた。


「それまでに住むところをさがさないとな~」


 通常プレイヤーは街の中では宿屋を利用してログアウトするのだが、シュウはそのへんの知識がないので家を買う必要があるのかと考えていた。


 そんなことをシュウが考えていると部屋のドアがノックされた。


「どうぞ~」


「失礼するぞ」


 部屋に入ってきたのはアレクセンともう一人男性が一緒に入ってきた。アレクセンが入ってきたのでベットから起き上がったが立つことはなくそのままベットへ座った。


「どうしたんですか?」


「ああ、リリアからシュウが帰ってきたのを聞いたから報酬を払おうと思ってな」


 アレクセンがそう口にすると後ろにいた男性が前に出てきた。


「私はこの国の宰相のギリム=オーションです。今回シュウ様への報酬は1億500万ゴールド、白金貨1枚と金貨50枚です。内訳がリリア様を救ってくださった報酬が1億ゴールド、リリア様への授業料が500万ゴールドとなります」


 宰相のギリムが言った報酬の額にシュウは驚いた。


「・・・そんなに?」


「はい。リリア様はお人柄か家臣や国民からの人気が高いためリリア様のお命はそれだけの、いやそれ以上の価値があるのです。そして、王宮の専属医師でも治せない病気を治したのでこの金額になりました」


「・・・でも、そんなにもらうのもな〜」


シュウはあまりにも凄すぎる金額に申し訳なさを少し感じていた。


「あ、そうだ。報酬は家にしてもらえないですか?」


「家ですか?」


「そう、家」


シュウ先程エルに聞いたこの部屋の期限があるので家を探していることを話した。


「ふむ、なるほど。わかった、家を報酬としよう。だが、5000万ゴールドは貰ってくれないだろうか。さすがに家だけでは報酬として少なすぎるからな」


「う〜ん、わかりました。それでいいですよ」


アレクセンの提案を受け入れたシュウは家を手にすることができたようだ。


「では、家をお探しするので1日お待ちいただいていいですか?」


「わかりました〜」


自分の家が手に入ることになったシュウは少しテンションが上がっていた。そんな、シュウにギリムが訪ねた。


「では、どのような家がよろしいですか?」


「う〜ん、そうだな〜あまり大きすぎる、屋敷みたいな家じゃなくて普通の家がいいな〜。大きさ的に4人家族が住む感じがいい。それと庭がある家がいい。そのくらいかな〜」


「・・・なるほど、わかりました。その条件でお探しします。では、報酬の5000万ゴールド、金貨50枚をお持ちしますので少々お待ちください」


そう言ってギリムは部屋を出ていった。


「本当に良かったのか?」


アレクセンがシュウに聞いてきた。1億ゴールドを断ったことを言っているのだろう。


「いいですよ、そんな大金どうすることもできないし5000万ゴールドでも多いかもしれませんから」


シュウはそう答えながら再びベットに寝転がった。


「そうか。無欲なのだな」


「それはないですよ〜、だって家もらうし俺のモットーは怠惰に生きることですし」


そう答えたシュウにアレクセンは苦笑した。


それから、アレクセンと他愛もない話をしながら待っていると部屋のドアが開いた。


「お待たせしました。こちらが金貨50枚です。それから、シュウ様の家ですが手配しましたのでお待ちください」


「ありがとうございます」


シュウは金貨50枚の入った袋を受け取ると光り輝き右手につけていた指輪に吸い込まれていった。おそらくインベントリに入ったのだろう。


「それじゃあ、俺は仕事があるから」


「わかりました」


そして、アレクセンはドアを開けようとしたところで振り返った。


「シュウ、娘を救ってくれてありがとう」


「どういたしまして」


それを言ったアレクセンは今度こそ部屋を出ていった。

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