第6話

「さてと、魔法に関してはもういいから本の続きを読も。エルは好きにしてていいよ」


「では私は紅茶をお入れします」


 エルがそういうと椅子と机そして、ティーセットがあらわれた。


「・・・どこからだしたんだよ」


「メイドのたしなみです。シュウ様こちらにお座りください」


 シュウはエルに促されるままに椅子に座った。そして、エルは紅茶を入れ始めた。


「シュウくん、大丈夫!かなり強い力を感じたのだッ・・・!」


 シュウが本を読み始めようとしたときリリシアがかなり焦った感じでこちらに走ってきた。そして、エルを見て驚いた表情をした。


「なっ、え、て、天使が何でここにいるの?」


 リリシアはエルを指差しつつそう言葉を発した。


「?俺が召喚したんですよ」


 シュウがそう返すとリリシアはさらに驚いた表情をした。


「召喚したってそんな魔術ないはずよ」


「魔術?俺は魔法を使ったんですよ」


 ほらこれっと魔法について書かれた本をリリシアに向けつつ言った。


「シュウ様、紅茶がはいりました」


「ん、ありがと」


 シュウはエルがいれたお茶を一口飲む。その紅茶はちょうどよい苦さが口に広がり飲みやすい温度に調節されたそれはとてもおいしかった。


「めっちゃおいしい」


「ありがとうございます」


 エルは軽くお辞儀をするとシュウの後ろに控えた。そして、シュウは本を読むのを再開した。


「っは!シュ、シュウくん魔法っていった・・・!」


「貴様、シュウ様は今お忙しい。見てわからないのか?」


 エルはシュウに対して話していた声とはちがいかなり冷たい声で、認識できない速度でどこからかだした剣をリリシアの首筋に当てた。剣を首筋に当てられたリリシアはエルの威圧に体どころか声すらあげられず呼吸が止まった。


「こらこら、リリシアさんをいじめちゃダメだろ」


 そんな中のんびりとした声でシュウは本でエルの頭を軽くこづく。


「失礼いたしました」


 エルはそう言うとリリシアの首筋から剣を放す。剣を放されたリリシアは威圧もとかれたので止まっていた呼吸を再開する。そして、足から力が抜け床に腰を下ろした。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


「大丈夫ですか、リリシアさん?」


 シュウは荒い呼吸を繰り返すリリシアに手を差し出す。


「・・・ふう、大丈夫よ。ありがとう」


 呼吸を整えたリリシアはシュウの手をとり立ち上がった。


「それで少し話を聞いてもらえないかしら?」


 シュウはそれを聞いてめんどくさいなと思ったがリリシアの目が真剣だったので聞くことにした。


「・・・わかりました。エル椅子をもう一つ出してくれ、それと紅茶も頼む」


「承りました」


 シュウがエルに頼むとすぐに用意された。


「リリシアさん座って話しましょう」


「・・・そうね」


 リリシアさんは椅子が一瞬で用意されたことに驚き、どこか諦めた表情をした。


「紅茶でございます」


 リリシアが椅子に座るとエルが紅茶を出した。それをリリシアは一口飲むと目を見開いた。


「・・・おいしい」


「ありがとうございます」


 エルは軽く頭を下げる。


「それで話っていうのは?」


 リリシアが紅茶の味に驚いているとシュウがリリシアに促す。


「そ、そうね、話していうのはいろいろあるのだけれどまずはあなたの後ろに控えている天使のことよ」


「エルですか?」


 シュウがちらりとエルのほうを見るとにこりっと笑顔を向けてきた。


「ええ、天使というのは神話にでてくる伝説の存在なのよ。神に仕え、神のために力を振るうそんな存在よ。その力は天変地異ともよばれるほどの力を有していてたった一人で世界を取れるといわれているわ」


「へ~、エルってそんなにすごいんだ」


「恐縮です」


 シュウののんきな声にどこかあきれた表情をするリリシアとシュウにほめられ少し照れた表情をするエル。


「そんな存在をあなたは召喚していることが少し問題なのだけど・・・でも、ある意味ちょうどいいタイミングかもしれないわね」


「問題って?」


 最後のほうの言葉が何を言っているかわからなかったシュウは聞こえた言葉に質問した。


「それわね、天変地異ともよばれ世界も取れるほどの力を持つ天使を服従さしているあなた一人が有しているということよ。あなたがもし世界を取ると言えばそこの天使はあなたに従うでしょう?」


「もちろんでございます。シュウ様が世界がほしいといえば私は世界を手に入れてみましょう」


 エルの言葉にリリシアは顔を青くする。


「いらないよ、めんどくさい」


 そんな二人に対してシュウはそんな言葉を返す。


「そう言うと思っておりました」


 シュウの言葉のどこが嬉しいのかエルは笑顔で言った。リリシアも安心したようでふぅっと息を吐く。


「それでね、少し相談なのだけど国王陛下に会ってくれないかしら?」


「やだ」


 リリシアの提案を間髪入れずに拒否した。


「・・・どうしてかしら?」


「国王に会うなんて絶対にめんどい」


「・・・」


 シュウの言葉を聞いたリリシアはおもむろに椅子から立ち上がり、床に正座し土下座した。


「お願いします、どうか陛下にあってください」


 リリシアの行動にシュウは驚いた。そして、エルがリリシアの前に行き冷たい目を向けた。


「いいかげんにしなさい。理由も説明せずその提案を受けるわけがないでしょう、それにあなたに何かしら思惑があるのはわかっています・・・」


「エル下がって」


 なおもリリシアを罵倒しようとしたエルをシュウは下がらせると土下座しているリリシアの前にひざをつくとリリシアの頭に手を置いた。


「リリシアさんがそこまでするってことは何かしらの理由があるんでしょ?それにリリシアさんとは今日はじめて会いましたけど俺はリリシアさんが悪い人には見えません、むしろいい人だと思いました。だから、その理由も悪いことではないんですよね。だから、いいですよ、王様に会っても」


 シュウがそう言うとリリシアはバッと顔を上げた。


「・・・ありがとう」


 そんなリリシアは目に若干の涙を浮かべていた。

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