Round4 最終選考会

第十五話 勝負しない? 

「オッケー。なんとか試合前に一通り把握できたな」


 その後、ひとりひとりの得意な攻撃を対戦して見せてもらっていたら、いつの間にやら試合数分前となっていた。


 今更連携を話し合う暇はない。

 が、問題はないだろう。

 さすがだ。思った通り、みんな凄まじい達人である。


 美織はいくつものチャクラムを正確に投げ飛ばすし、レンの空手のセンスを生かした肉弾戦は武器に頼ることが多い『AOA』では珍しくて、きっと多くのプレイヤーは対処に困るはずだ。

 

 黛さんは前に見せたスタイルではなく、今回は二挺拳銃による中距離攻撃をメインで行くと言う。美織、レン、そして俺が近距離攻撃型なだけに、この判断は助かる。


 そして司は特別モデルのビームライフルによる遠距離攻撃。こちらも上手く守ってやらないといけないが、遠距離からの支援攻撃に助けられることはきっと多いだろう。


 よし。これならイケる! まずは軽くこの予選を突破してやるぜ。


「ねぇ、せっかくだから勝負しない?」


「勝負? なんの?」


「誰が一番多く敵を倒せるかを競いあうの。で、一番ビリは今度みんなにご飯を奢るってのはどう?」


 美織がいきなりそんなことを言ってきた。

 おいおい、さすがにそれはナメすぎだろ。

 プロゲーマー百カ条にも「ナメプは身を滅ぼす」ってある。あまりに余裕ぶっこいてると、足元を掬われっぞ。


「何を言い出すかと思えば……」


 黛さんが溜息をついた。

 さすが、ぱらいそ一の常識人である黛さんだ。ここは俺が言うよりも、黛さんに注意してもらった方がいいだろう。


「美織らしいナイスアイデアですね。乗りました」


 えっ?


「では、皆さん、お先に失礼いたしますよ!」


 そして試合開始と同時にブースターを吹かして、一気に戦場へと突進する黛さん。

 えええええっ!?

 あんた、常識人じゃなかったのかよっ?

 

「決まりね! じゃあやっちゃうわよっ!」


「おう、負けるか!」


「僕も頑張ります!」


 そして黛さんに負けてたまるかとばかりに、他のみんなも散り散りになって戦場へと翔けていく。


 おいおいおい! これはチーム戦なんだぞ。分かってるのか、お前ら?

 みんな信じられないほどの手練てだれだからそう簡単にやられはしないと思うが、さすがにこうもバラバラに行動するとなるとさすがに心配だ。


「ええい。お前ら、ちょっと待てー」


 慌てて俺も機体に火を入れて、頼もしくもムチャクチャな連中たちを追いかけていった。




 そして実際にみんなの戦いぶりを見て、俺は確信することになる。


 俺たちはゴリンピックで絶対優勝出来る、って。

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