たんたんたぬきの



天女様は男で



その男は実は叔父さんで、





もうさ。ちょっと休憩させてちょ..


と脱力している私のほっぺをぷにぷにと指で優しく突くこの中性的な美男子。



ちょ、やめ、叔父さんでも心臓に悪い..。




「愛らしい姫君。


私の名は、神宮じんぐうの久敬ひさたかと申します。


竹宮たけみやと皆から呼ばれております。


愛らしい姫君の名も教えていただけるでしょうか..?」




そう、すこし伺うように困ったような顔をして私に微笑む。




ガンガンガンガンッ!!!


頭の中から早鐘の打ち鳴らす音が聞こえる。




なにこの美男子。なにこの麗しさ!!

なにこのはにかみ具合!!!!



眩しい、死んじゃう。



「..わたしの なは..



ツバキインのチヅル ともうします。」


そこまで言って、お爺様の方へチラッと視線を持っていく。



するとお爺様は優しく頷いた。



うん。よし。


「あざなは

ひなみや です。


きょうで さんさいに なりました。



おじうえサマ、これからよろしくおねがいもうしあげます。」




そこまで言って 叔父上の方を伺い見ると、


菩薩のようなとても澄んだ微笑みでわたしを包むかのように見つめている。




そのままぎゅっと叔父上の腕に抱きしめられた。


「千鶴。


なんて可愛らしい名でしょうか。



字名は雛宮。


とても可愛らしい、愛らしい名ですね。


姫君にぴったりですよ。」




と、この上ない微笑みのまま、わたしの後頭部を撫でる。





やだどうしよう!!

精神年齢はきっと上か同じくらいなのにドキドキするんですけど!!!



そのまま、綺麗な叔父上に抱きしめられた事をこれ幸いと私もぎゅっとしがみついた。




後ろの方でお爺様が

「雛宮。そろそろこちらに戻ってこい。」


と言っているが叔父上は


「嫌です。渡しません。」


と私をつよく抱きしめる。



なにこれ私死ぬの?


わたし、こんなご褒美もらっていいの?







そう思っていると、屋敷の方が騒がしい。



思わず振り返り屋敷の様子を伺うと、使いの者が青い顔をしてバタバタと走り回っている。


なにがあったんだろうか..。



そんなことをぽやっと考えていたら、お爺様は「ありゃあ、椿院の女君だなぁ。」と笑っていた。



はい?


叔父上も

「そうですね。」と苦笑している。



眉間にしわを寄せ、苦笑しているお姿も素敵です!!!


叔父上の姿を眺めているとふと叔父上と、目が合う。

ふふっと微笑まれ、こちらもつられるようにへにゃっと笑ったら

「雛宮をさがしているように見えますが、


父上、姉上には雛宮が庭園にいること伝えてあるのでしょうか?」






................。


............。






あのまま抱えてこられたしな。

きっと言ってないやろし、


「わすれてました..。」


ごめんなさい..



と付け加えると今度は頰をスリスリと擦り合わせられた。



ひょええええええええええええええ!!!!







「良いのですよ。

ただ、もう少し雛宮とこうして居たかったのです。」そういって名残惜しそうに叔父上はすこし強く抱き締めた。



心臓がもたないです!!

貴方は私のなんなんですか!!!

恋人ですか?!思い人ですか?!!



と内心突っ込みまくりの私だが、

どうしてそんなに寂しそうに言うのか不思議だった。



そんなことを思っていたら後方より強く吹き荒れるような風を感じると共に「来やったぞ。」とお爺様が呟いた。





「姫、心配しましたよ。

可哀想に..

知らぬ人に連れてこられてしまったのですね。


ええ、わかっておりますとも。

姫は、勝手にこのような所にまで連れてこられたのでしょう?

強面男に、誑かし男。


さぞ怖かったでしょう。

ささ、こちらにいらっしゃい。」



そう優しく細く語りかける声とは反比例のごとく、私の脇腹を持ち叔父上の腕からベリベリと容赦無くひっぺがそうとする。




え、え?!!




「かかサマ?!」



思わず驚いたその舌ったらずな感じが堪らなく良かったのだろう叔父上は私の背にまわしてある腕をギュッと引き寄せると私を叔父上の胸へとしまう。




「竹宮。


姫は妾の姫ですよ?」



静かな声でかか様はそう言い放った。



「いえいえ、姉上。

姫は私の姪です。初めてお会いしたということもありますし、積もる話もありますので。」




そういって私を取り合う2人。


なにこの修羅場。


虚ろな目でお爺様を見上げると、ふぅむ。とどこか考え事をして私たちをみていた。





ちょww


お爺様助けてよ!(笑)




そう思っていたのが伝わったのか、

「そこまでじゃ!!!」



と一言制すと横から私をむんずと掴み2人から剥がし、私はお爺様の腕の中にしまわれそのまま屋敷へとスタスタ戻るお爺様。




後ろからは


「「父上!!おまちください!!」」





と2人が慌ててこちらへついてきた。





---------------------------



「おじいサマはおつよいのですね。」




そう微笑むと、



「父親らしい事を初めてした。

雛宮に感謝せねば。」



と笑っていた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る