メガネのメガネたる由縁

──……此処で一つ状況を整理しよう……──


状況整理其ノ壱・朝目が覚めたら夜中に拾ったメガネが人間になっていた。そして馬乗りだった俺に。(この時点でどうかと思う)

状況整理其ノ弐・メガネが美少女じゃなく汗臭いオッサンだった。(なんでオッサンなんだよ!)

状況整理其ノ参・何故か俺はこのメガネの所有者になりました☆(巫山戯るな!! そして柄にもない事するな!)


という所か……考えれば考える程、イラつきとイラつきとイラつきしか湧かない。

─────回想終了─────


「我が主殿、早くして下さいな早く早く早く早く! Hurry up、で御座います!」

「あ〜もううるっさい!」

「ァ痛っ!」


あまりの煩さに思わず蕎麦殻枕を投げ付ける。この変態メガネめ……と言いそうになった所でハッとして枕元の時計を見る。

時刻は八時十五分。何時もなら出ている時間だ。このまま行けば確実に遅刻だ。


「うっ、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 寝坊したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「だから起こして差し上げましたのに、失礼な主殿で御座います……」

「煩い! 普通はメガネが人間になるとは思わないだろうが!」


(くっそメガネに気を取られた! 無遅刻無欠席だったのに!)


慌てて着替えて朝飯用に買っていたスティックパンを引っ掴み、カバンに放り込むと家を出る。


「ちょっ主殿お待ちを……わた、私も……ッ!」


後ろでメガネが何か言っているが問答無用でシャットアウトする。だから気付かなかった。メガネの忠告が▪▪▪


「…………お気を付けください▪▪▪▪▪▪▪▪▪ね、我が主殿」


聞いていれば、こうなる事は無かったと思う──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メガネと俺と妖怪忌憚 幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕 @Kokurei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ