第三章

男が口を開く。

「ここはどこだ」

「BLUE LIMBOという星です」

「地球ではないのか」

「はい。あなたは地球から来たのですね」

男はうつむく。

「どうしてここに来たのか覚えていらっしゃいますか」

「いや、まったく。俺はただ家にいただけで、気がついたらこんな、なにをどうして、こんな砂だらけの場所に……それで、生物も植物もないから、二日も歩き回れば腹が空いて……」

男は喋りながらこれまでのことを思い出そうとした。

「そうだ、せめて魚でも捕れないかと海に来たものの妙なことに凍っている。お前がそこにいなかったら、俺は今頃野垂れ死んでいただろう」

男はありがとうのひとつも言わずに部屋の隅を眺めている。

「待っていたのです」

男はヴィーナスの言葉に疑問を感じて横目に聞いた。

「どういう意味だ」

「あなたを待っていたのです」

男はわけがわからない、というように口角を拭いてまた部屋の隅を眺め直した。

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