第11話 Sightseeing:裏

 一度だけ、旅行でアフリカ大陸へ行ったことがあった。昔から旅行をするのが好きで、休暇が来るたびに家を出た。

 高校時代はあまり遠くへ行くことができなかったけど、大学入学後、私の足の届く範囲は格段に広がり、バイトをしては旅行をするというのを繰り返していた。


 いろいろな所に足を運び、ひたすらに美しい景色を探し求めた。


 屋久島にも行った。厳島神社にも行った。白川郷にも行った。


 一通り日本を回った後は世界に行った。初回はやっぱりパリ!二回目はオーストラリア。そして三回目が、アフリカ大陸のナミブ砂漠。


 世界へ出て、日本の景色には独特な荘厳さがあることを知った。家の中に土足で入らないという文化があるからだろうか。どこに行っても、入ってはいけない領域が必ず一つは存在した。


 国外のそういった場所は、そういう意味では開けている。


 日本を出て良かった。まだ、美しい世界はある。

 二回目の海外旅行までは、そう思っていた。


 ナミブ砂漠を訪れた時、絶望した。


 ガイドの方と訪れたのは、「夜のナミブ砂漠」だった。


 夜のナミブ砂漠に来た理由はただ一つ。世界から認められた、世界一の星空を見るため。 

 

 冷えた砂漠に立ち、夜空を見上げる。

 

 そこには、私の知らない世界があった。この時だった。私が絶望したのは。


 今まで、美しい景色を探してきて、どれも比べることができないくらい素晴らしい景色を見てきた。それなのにこの景色は、ずば抜けて美しすぎる。


 見とれてしまっていた。この景色は、地球で見ることのできる地球外の景色。夜のはずなのに、光で溢れている景色。砂漠に立っているはずなのに、宙に浮いているような感覚になってしまう景色。

 

 こんな景色を見せられてしまったら、きっと私は、他の景色を美しいと思えない。この星空が、世界で一番美しいと直感で思ってしまった。


 私の旅行人生は、きっとあの時終わったのだ。


 今でも旅行は続けているが、昔ほど感動することはない。私はもう、旅行を楽しめないのだろうか。

 

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