第二章:聖地を巡る意味

15.

 首筋を伝う汗を手の甲で拭った。夏らしい蒸し暑さがきっと夜になってから増すだろう。そういう空気の匂いだった。

 夕暮れ時の虫の声を聴いていると、何かの催眠術をかけられているような気分になる。短い間隔を置いて繰り返される鳴き声は一度意識すればなかなか消えてはくれず、気が付けば頭の中をそれに支配される。

 そろそろ戻ろうと考えて、ゲズゥ・スディルは麓の集落の方へゆっくりと歩き出した。人の出入りが多いのか、はっきりとした道が地面に浮き上がっている。といっても奥深く入るのではなく民家がまだ見下ろせるような距離まで登って、食物を採集する為のものと見受ける。

 ゲズゥは集落の広場へ向かって山を降りた。木製の屋根に覆われたそこはさっきからずっと視界の中に入れたままで、山の上からも広場の様子を観察していた。

 宗教画や石像の聖女のような慈愛に満ちた表情を民衆に向けるミスリアを眺めて、何故だか釈然としなかった。

 彼の目には小柄な少女が愛想を振りまいているようにしか見えないのに、民衆の誰もがまるで神の御前に立ったかのように涙を浮かべて感動している。ミスリアに最も近い位置の老婆が、触れるのもおこがましいとでも思っているのか、白いスカートにおそるおそる手を伸ばしている。

 信仰心というものは、よくわからない。

 あの盲目さは果たしてどこから来るものなのか。何かに縋りたいと願っていた人間の前にたまたま現れて手を差し伸べれば、お手頃な信仰対象として認識されるのだろうか?

 いくら崇め立てようと、あれは生身の人間だ。奇跡の力にだっておそらくは限りがある。

 人が王を戴くのと似ているのだろうが、違うのは聖女や聖人には血なまぐさい背景が一切無いことだ。

 ゲズゥにしてみれば、宗教という概念は気味の悪い洗脳手段に思える。大衆を操作するために誰かが作り出す物だ。特にどこそこで新しい邪神教が興されたなんて話を聞くと、真っ先にそういう感想が浮かぶ。教団とやらが違うのかは知らない。

「ありがとうございます、聖女さま」

「お大事に」

 例によって人の怪我や病気の治癒に勤しむ聖女ミスリアが、柔らかく微笑む。

 ゲズゥは音一つ立てずに、広場の隅に滑り込んだ。

 どうにも不可解だ。

 宗教の象徴とも言える立場のこの少女が、人を洗脳したがっているようには見えない。ならばそれが目当てで聖女という職を選んだのではないのだろう。

 では、人を「救う」ことこそが唯一の目的か。

 何の迷いも無くそういった生き方を貫けるはずが無いと、ゲズゥは確信していた。純真無垢で居られるのは子供の頃までだ。皆、どこかで人間の不安定さをも併せ持っている。あの司祭がいい例だ。人間は常に善意と愛想を完璧に振りまけるようにはできていない。

 もう一つ考えうるのは、ミスリア自身が救われたがっているという可能性だ。宗教に溺れる人間の多くは、他の手段では解決できない悩みを抱えている者だ。

 根拠などどこにも無いが、これが一番しっくり来る。

「ヴィールヴ=ハイス教団はなんと素晴らしいのでしょう。山の向こうの輩もこの感覚を知ればいいのに」

 目を潤ませて、集落の長老らしい男が熱弁を振るう。

「そうですね」

 微笑を崩していないが、その一言を発したミスリアの声はどこか冷たかった。周りの他の人間はうんうんと強く頭を上下させるだけで、気付いていないらしい。

「この力があれば病も減り、そして聖獣が蘇れば世界から魔物が消えるのでしょう? 苦しみがなくなれば人間は皆幸せになれる。仲良く暮らせる。真の楽園が地上に顕現しますよ!」

 長老に寄り添う息子らしい男がそう言って拳を握った。

「ええ、そうなるよう努めます」

 ミスリアはにっこり笑って頷いた。周囲の人間は感心や励ましの声を連ねる。

 知り合ってまだ日が浅いが、今の笑みが本心からではないとゲズゥは直感した。

 ああそうか、と何かが腑に落ちる。

 彼女にはあの盲目さが無い。友人だというあの聖人にもだ。二人の何かが「違う」と思っていた原因がこれでわかった。

 二人とも何かから救われたがっているようでありながら、教団の話をしている時はどこか理性的だった。客観しているような、分析しているような、疑り深さが僅かにあった。

 まるで、救われたいのに救われるとは本気で信じきれていないような。だからこそ、ミスリアも聖人も周りに布教しようなどとしないのかもしれない。今のミスリアは熱心に神や聖獣を讃える信徒を前にして、ただ穏やかに笑うだけだ。

 信心深さとは別の問題で、教団の教えを総て鵜呑みに出来ない理由があるのだろう。聖気という現象を扱えても、少なくともそれで誰もが幸せになれるとは思っていないようだ。

 ならば何故、世界を救う為の旅になど出るのか。何を目指してこの道に人生を捧げたのか。なんとなく、半端な覚悟で旅しているとでもいうのか。

 そこまで考えて、ゲズゥは誰にも聴こえないような吐息を漏らした。

 自分らしくない考え事などやめて、ゲズゥは足音一つ立てずにその場を離れることにした。

 広場から数えて三軒目の素朴な石造りの家が今夜の宿泊先だ。長老の次男の家だと聞いた。素朴とはいえ集落の数少ない二階建ての家である。

 中に入ると、長老の孫娘が台所で一人忙しなく家事をこなしていた。

「ようこそいらっしゃいました」

 ゲズゥを認めて、十代後半ぐらいの歳の少女が振り返った。鮮やかな赤い髪を大きなリボンでまとめ、膝丈のワンピースにエプロンという出で立ちだ。ここの他の娘たちに比べると際立って肌が白い印象がある。

「お夕飯でしたらもうすぐ出来上がりますので、くつろいで待っていてくださいね」

 はにかむ少女には返事を返さずに、ゲズゥは二階の客室へ向かった。階段を上り始めたところでまた話しかけられた。

「あ、あの! 一晩だけでよろしいんですか? 明日出発と言わずにもう少しのんびりしてからでも……。何もないところですが」

 精一杯おもてなしします、と消え入るような声で孫娘が続けた。

 一応足を止めていたゲズゥは、話がそれだけだとわかってまた動き出した。

「――本当に! ほんとに、ユリャン山脈を越えるつもりなんですか? あそこは危ないんですよ!」

 娘は今度はいきなりわけのわからないことを訴えた。

 つもりも何も行路を決めるのはミスリアだ、とゲズゥは割り切っている。彼に主体性が無いという訳では決してない。意見は勿論必要ならば出すが、それでも大抵の決断は委ねる気でいる。この旅はこれで良いと、いつの間にか自分で判断していた。おそらくは命を拾われたあの日に。

 やはり答えずに、ゲズゥは部屋の方へ進もうとした。

 その時、タイミングよく玄関が開いた。

「山脈の向こうに行かなければなりませんので、仕方ありません。迂回すれば一ヶ月以上は余分にかかります」

 入ってきたミスリアがたしなめるような口調で言う。

「……聖女様。そう……そうですよね。過ぎたことを言ってごめんなさい」

「いいえ。お気遣い有難うございます」

 しおらしく謝る孫娘に対して更に、ミスリアは宿や食事など色々と世話になることへの礼を言った。ミスリアの方が孫娘よりも年下だろうに殊勝なものだ。

 二人の少女をよそに、ゲズゥは二階へ上がった。

 狭い客室にベッドが一台あって、その他の家具といえば小さな鏡台が一台だけ。窓もまた一つしかなく、ガラスにも網にも覆われていない。壁には燭台がある。

 ゲズゥは背中から剣を下ろしてベッドに背中を預け、床にあぐらをかいた。

「お疲れ様です」

 扉が開き、ミスリアが姿を現した。疲れるようなことをしていないのにお疲れと言われるのは変だと思いつつ、

「戻るのが早かったな」

 とゲズゥは返した。

 広場のあの様子ではまだまだ働かされそうだと勝手に予想していた。

 他と隔絶された集落であるだけに、住人は最初こそはゲズゥたち余所者をしっかりと警戒していた。ところがミスリアが聖女という身分を明かした途端に歓迎されたのである。聖女・聖人どころか医術に通じた人間すら滅多にお目にかかれない辺境の地だという。

「はい。『もう休みたいです』みたいなことを言ったら解放して下さいましたよ。そりゃあ疲れてるだろうしお腹も空いているだろう、って長老様の一声で皆も納得しました」

 ふぅ、とミスリアは声に出してため息をついた。心なしかふらついた足取りでベッドに歩み寄り、腰をかけた。ゲズゥからは腕を伸ばせば簡単に届く距離である。

「……血って、どうしてあんな色なんでしょうね。もっとこう、瞼の裏に残らないような無難な色であればいいのに」

「…………」

 例えば人間の体内から淡い水色の液体が漏れるのを想像してみたが、それはそれで気色悪い気がする。そもそも瞼の色に残らない色というのがわからない。

 目を擦るミスリアの投げやりな呟きを聞いて、何かに思い当たった。朝のうちに目撃した男が刺し殺される場面、そしてその死体の有様――臭いごと、否応無く脳裏に焼きつく類の映像だ。一日に何度でも思い出すような。

 ゲズゥとてふとした時に思い出すが、そういった場面に既に何も感じなくなって久しい。これでも子供の頃は、生理的な拒否反応やら嫌悪感があった。

「血の色が赤なのを理由付ける神話でもありそうだが、知らないのか」

 気を紛らわせられるかもしれないと踏んでくだらないことを訊いてみた。

「あるとしても私は知りません」

 苦笑い交じりにミスリアは答える。

「神話ですか……。今でこそヴィールヴ=ハイス教団が大陸の唯一の宗教集団と広く認識されていますが、その昔はもっと様々な信仰があったそうですよ。それぞれの団体が崇拝する神の名の下、大勢の人々が争い合うほどに」

 口元にかすかな笑みを浮かべて、ミスリアがそう語った。多少は気が紛れているらしい。

「ところが百年前にとある人物によって統一されて――」

「すみません」

 ふいに戸がノックされ、話はそこで切り上げられた。

「お夕飯できましたので良かったらどうぞお召し上がりください」

 言われてみれば、何かの煮物の濃厚な香りがここまで届いている。

「有難うございます。今行きますね」

 そうして赤毛の少女が誘うままに、ゲズゥとミスリアはダイニングルームへ向かった。


_______


 階段を降りる途中で、ミスリアは思わず立ち止まった。

 さっきからずっと胸の奥がざわついている気がしてならない。

「何だ」

 背後から聴こえてきた低い声は普段よりもいくらか低くなっている。流石、気付くのが早い。

「魔物って神出鬼没で一見何もないところから構築されるだけあって、気配を前もって察知するのは難しいんです」

「……いるのか」

 ゲズゥはその前振りからミスリアの言いたいことを読み取った。

「わかりません。でも胸騒ぎがします」

 ミスリアは服の下のアミュレットを知らず握り締めていた。

「おそらくこの集落に魔物狩り師はいない」

 淡々と告げる彼を、弾かれたように振り返る。前髪に隠れていない方の黒い瞳と目が合った。

 どうしてそんなことがわかるんですか? と訊ねようとして、結局その言葉は飲み込んだ。広場の中心に居たミスリアには人間観察をする余裕は無かった。しかしゲズゥが歩き回っていたのは知っている。

 魔物狩り師というのはぱっと見ただけですぐにそれとわかる。彼らは常に武器を持ち歩き、特に夜が近付くと獣のように鋭い目線で周囲を巡回する。いつどこに現れるか知れない化け物が相手である以上、そうしなければ遅れをとるからだ。その反面、道行く普通の人間には見向きもしない。

 見れば、ゲズゥも部屋では下ろしていたはずの剣をいつの間にか再び背負い、腰に短剣を携帯している。

(準備がよくて守られる身としては頼もしいけど、敵に回したらどうなるかなんて、それは考えない方がいいかな……)

 背筋が冷たい手で撫でられたような錯覚を覚え、頭を横に振った。

(そんなことより魔物狩り師がいないとなると……この集落に結界は張られてないし、今までどうやって魔物を退けていたというの)

 黙々とそんなことを考えながら、食事の席に辿り着いた。

 ちょうど長老の次男夫婦が帰ってきていた。二人とも日に焼けて泥に汚れている。彼らは先ほどは広場に居なかったのか、ミスリアにとっては見知らぬ顔だ。俗に言う濃い顔立ちではあるけど、娘と同じくはにかむ時に笑窪が出来て、とても好感を持てる。三人揃って、瞳が空のように青い。

 互いに軽い挨拶を交わした。ミスリアらの事情なら誰かから伝え聞いたというらしく、詳しい説明は省けた。

「お父さん、お母さん、お疲れ様です」

 長老の孫娘が微笑みながらコップに水を注ぎ、それを両親にそれぞれ差し出す。

「ありがとう、ツェレネ。助かるわぁ」

 二人はコップを受け取って一気に飲み干した。

「私だって畑仕事くらい手伝うのに」

「何言ってるんだ。お前は町の学校に行くんだろーが、できるだけ勉強してた方がいい」

「……うん。そうだね!」

 短いやり取りを娘と交わした後、二人は着替えに行った。

「さあ! 遠慮なくお召し上がりください。お父さんたちを待たなくていいですからね!」

 ツェレネと呼ばれた少女はくるりと振り返った。真っ直ぐな赤い髪がふわっと広がり、ついつい見取れてしまう。

「ではお言葉に甘えて」

 ミスリアは椅子を引いて座った。

 四角いテーブルに並べられたご馳走が食欲をそそる。パンとチーズ、野菜炒めに鶏肉の煮物。これなら旅の道中に食べていた保存食の味を忘れられそうだ。

「あ、あの……スディル、さん? どうぞ席へ」

 ダイニングルームの片隅に立つゲズゥへ、ツェレネが声をかける。ミスリアと一緒に降りてきたはいいが、食事の席に着く気配がまったく無い。

 ちなみに身元が集落の人間に知られると面倒そうだからと、ゲズゥのことは苗字だけで紹介しておいた。

「一人分残しておけば彼は後でいただくと思いますから、今はお気になさらないでください」

 微笑みながらミスリアが代わりに答えた。ゲズゥが他人と一緒に座って食事を摂りたがらないのにいつの間にか慣れてしまっていたので、他の人がそれをおかしいと思うだろうことを失念していた。

「そうですか……?」

「ところでツェレネさん、町の学校に行かれるんですか?」

 やたら残念そうな眼差しをした少女に、ミスリアは違う話を振ってみた。すぐに彼女は我に返り、ミスリアの皿を盛り始める。

「おかしいですよね、いい歳して」

「え? そんなことありませんよ――――と、野菜はそのくらいで十分です、有難うございます」

 ミスリアは食べ物の盛られた皿を受け取った。

「まだその資金が貯まってないんです、あとちょっとってところで。私、先生になってここで学校を開くのが夢なんですよ」

 ツェレネはぱあっと顔を輝かせた。

「十年前くらい前でしょうか、とある旅の研究者様がここの集落にしばらく留まって下さって、字の読み書きや歴史など色々教えてもらったんです。書物も一杯いただいたんですよ! 私もああいう風になりたくて」

「素敵な夢ですね。きっと叶います」

「有難うございます、聖女様! あ、何かいらないご本とかあったら……」

「祈祷書しか持っていませんけど、それで良ければ差し上げましょうか?」

「いいんですか!?」

 両手を合わせて喜ぶ少女を前に、ダメと言うわけが無い。

「はい。私は中身はもう暗記していますので」

 ミスリアは懐から小さな本を取り出し、それをツェレネに渡した。何年か前に暗記してあるものを、形だけ持ち歩いていたのである。

(祈祷書でそこまで喜べるなんて凄いわ……)

 ご飯そっちのけでページを捲っている様子が微笑ましい。

 隅のゲズゥへチラッと視線を巡らせてみたら、彼は腕を組んで目を閉じていた。無関心なのは間違いないが、寝てはいないのだろう。

 ミスリアはパンを千切り、口に運んだ。硬い外側と柔らかい内側の調和がいい。二口目には、煮物の汁を少しつけてから食べた。鶏肉の旨みが染み込んで、想像以上に美味しい。自分も家事はよくやる方だと思うが、彼女の料理の腕はもっと上かもしれない。

 着替え終わったツェレネの両親も戻ると、食卓は更に賑やかになった。食べきれないのに、ミスリアの皿はどんどん盛られていく。

「ツェレネ、お前ももっと食べなさい」

「え~、肉体労働してないのにあんまり食べたら太っちゃうよ」

「年頃の娘が何言ってるんだか。お母さんなんてアンタぐらいの歳じゃあ……」

 ミスリアは微笑んで見守っていた。

 互いを思いやる家族、そして夢見る娘とそれを応援する両親。幸せな家庭とはこういうものなのかな、としみじみ思う。

 確かに昔は自分の家もこうだったはずだけれど、すっかり忘れていた。

(お姉さま)

 唇をぎゅっと噛み締めたのを周りに見られないように、ミスリアは俯いた。

 視線を感じて顔を上げると、黒曜石を思わせる瞳がこちらをじっと見ている。揺らぐ蝋燭の炎が映っていて綺麗だなと思った。

「ところで聖女様」

「は、はい。何でしょう」

 ツェレネに話しかけられ、ミスリアは視線を移した。

「デザートは、何が食べたいですか!?」

 青く澄んだ瞳がぐいっと近づいて来る。それがとてつもなく重要な問題であるかのように、彼女は興奮している。

「え、えーと」

 ミスリアは自分よりも背の高い美少女に気圧されていた。

 間近で見るツェレネは羨ましいくらいに可愛い。顔のパーツは形もバランスもよく、小顔で輪郭は柔らかい。鮮やかな赤い髪が色白の肌に冴え、長い睫毛まで綺麗な赤だ。

「たとえばパイとブレッドプディングのどちらがいいでしょう」

「で、ではブレッドプディングでお願いします」

「はい、すぐできますからね!」

 満面の笑顔でツェレネは請け負い、足軽に台所へ向かった。ミスリアが食器の片付けや洗い物を手伝おうとすると、客人は何もしなくて良いと家主は言う。

 そう言われれば仕方ないので、ミスリアは玄関先に出た。そこのベンチ型ブランコにそっと腰掛ける。ぎぃい、と木製ベンチの軋む音が響いた。

 昼間よりも空は晴れ、星の煌きが見えつつある。湿気が多いのか、ベンチがどことなくべた付いている気がする。

 薄闇の中には四角い家と、道を行き交う人間の姿があった。

(魔物は現れていないようだけど……)

 胸騒ぎはおさまらない。やはり長老の次男に問い質した方が良かったのだろうか。何故、魔物狩り師が一人も居ないのかを。

 ミスリアはブランコの鎖に手をかけ、ゆったりとベンチを揺らした。キィ、キィ、と鎖の軋む音がする。

 右を見上げれば、ゲズゥがいつの間にか隣に来ていた。

 彼は手に持った皿一杯の食べ物をみるみるうちに食べ尽くしていった。

 何だか緊張感が無い――そう思った途端、目が合った。

「羨ましそうに、あの娘を見ていたな」

 静かに彼は言った。食べ終わった皿を地面に置いている。

 その言葉に、ミスリアの心が揺れる。

 「そんなことありません」と否定するべきか、「よくわかりましたね」と肯定するべきか。

 嘘のつけないミスリアは、諦めて頷いた。

 さて、ツェレネの何が一番羨ましいのか絞ると――あの容姿も、家族も、確かに羨ましいけれど。

「……夢、を追っているのが素敵だなぁと思います。眩しいくらいに」

 同じように静かな声で、ミスリアは本心を語った。

「…………」

 ゲズゥの黒い右目は探るように細められている。こちらとしても、何故か目を逸らせない。

(そう思う私が変なの?)

 ミスリアには夢と言えるような夢は無い。顔を輝かせて他人に話せるような、そんなモノは。

 今の自分を形成しているのは美しい未来への期待などではなく、たった一つの果たさねばならない目標だ。使命と呼んでいいのかすらわからない。当然、果たした後のことも考えていない。

 しばらく、二人は無言で見詰め合った。

 ふと、ゲズゥは何かに気付いたように目を見開き、頭を巡らせた。

 思わずその視線の先を辿ると、そこには人影があった。足音が静かだったせいか、存在に気付けなかった。

「こんばんは」

 人影は軽く会釈をした。声変わりを経ても、まだ少年っぽさの残る声だ。

「こんばんは」

 ミスリアはベンチに座ったまま、礼を返した。

 少年は通り過ぎるのかと思いきや、どういうわけか彼は一直線に歩み寄ってくる。

 玄関の灯りに映し出された顔はゲズゥよりも年下の十七か十八くらいに見える。長袖のシャツに革のベストを着ている。

 彼もまた、広場では会わなかった人間だ。

「確か、旅の聖女さんっすよね。自分はトリスティオと言います」

 少年はもう一度会釈した。肩には弓を、背には矢筒を持っている。

 平均的な成人男性より背が低く、多分ツェレネと同じか少し高いくらいだろう。

「はい。ミスリア・ノイラートと申します」

 ブランコから降りて、ミスリアはスカートを広げる礼をした。

「彼は私の護衛を務めるスディル氏です」

 ゲズゥをも紹介し、ミスリアは振り返った。

 するとゲズゥは無表情に、トリスティオと名乗った少年を眺めている。

(何か興味を引くものを見つけたのかしら?)

「……なるほど、よろしくっす」

 一方でトリスティオは食い入るようにゲズゥを見上げている。

「なんか、メチャクチャ強そうっすね」

 独り言とも感想とも言えないような呟きを漏らした。ゲズゥの体格を見ているのか、装備を見ているのか、それとも雰囲気からそう感じているのかは判断できない。

「そうですね」

 うまい返し方が思い付かないので、ミスリアは無難に笑って答える。

「トリスティオさんはこの家に何か御用があるのですか? 皆、中に居ますけど」

「あー、いえ。巡回のついでに顔見せようかなーと思ってただけっす」

「巡回ですか?」

 何か重要なことを聞いたような気がして、ミスリアは訊き返した。答えが聞ける前に、玄関の扉が開いた。

「デザートできましたよ! せっかくですし外で食べますか――って、トリス、やっほー!」

 エプロン姿のツェレネは、トリスティオの姿を認めるなり空いた手をぶんぶんと振った。

 親しげに呼ばれたトリスティオも一度だけ手を振り返す。

 どこか照れているように体を強張らせているが、口元は確かに笑っている。

「おー、レネ。元気か」

「私はいつも元気だよ? それに昨日も会ったじゃない」

「そういえばそうだったな」

 照れ隠しのためか、彼は黒い巻き毛の前髪を指先に絡めている。

「変なの。それで、見回りどう? 何か居た?」

「や、居たら騒ぎにしてるって」

「じゃあトリスも一緒に食べようよ。魔物居ないなら外でもいいよね」

 ツェレネが笑顔で誘う。ツェレネの両親はというと、仕事で疲れているから屋内で食べるらしい。

「それは……」

 トリスティオは気遣わしげな視線を向けてきた。客であるミスリアたちに遠慮しているのだろう。

「是非、私からもお願いします」

 ミスリアが微笑みを返すとトリスティオはしばし考えるような素振りをし、頷いた。

(何か聞けるかもしれないし)

 こんな誘い方はずるい気もするけれど、かといって急に「この集落の諸々の事情を聞かせて欲しい」と詰め寄っても不自然である。

 一同は裏庭のテーブルの席に腰掛け、食卓を整えた。ティーセットを並べ、皿とスプーンを配り、プディングを盛り付ける。

 当たり前のように、ゲズゥだけが離れた位置の樹に寄りかかって立っている。

「ツェレネさんはお料理が上手ですね」

「ありがとうございます。でも聖女さまの奇跡の力の方が凄いですよ」

「それは、凄いのは私ではなく教団の教えです」

「謙虚っすね」

 三人はブレッドプディングとハーブティーを楽しみ、しばらく雑談をした。

 頃合を見て、ミスリアはさっきと同じ質問を繰り返した。

「それでトリスティオさん、巡回をしていたというのは?」

 訊かれて、彼は目を瞬かせた。やや垂れ気味の目に、森のように深い緑色の瞳が揺れる。

「トリスティオさんは魔物狩り師なのですか?」

 ミスリアは質問を変えてみた。

「まさか。確かに、ついこの前までココに住んでた魔物狩り師に師事してたんっすけど。おれはまだまだ半人前で、教えてもらえてないことも多くて」

「彼らは王都に発ったんですよ」

 ツェレネが付け加えた。

「ミョレン国の王都のことですか」

 ティーカップを口に引き寄せながら、ミスリアは確認した。

「はい。二人のうち一人は王子サマに呼ばれて、もう一人は聖人サマの旅の護衛に指名されたって言ってたっす」

 それらの時期が重なった所為で、集落は今は魔物狩り師が不在という状態になったのだと言う。

「王子って……第三王子ではありませんよね?」

 なんとなく背中にゲズゥの視線を感じながら、ミスリアは訊ねた。

「第一じゃなかったかしら、ねえ」

 ツェレネは思い出すように顎に手を当て、トリスティオを見た。

「第一でしたよ。何かあるんすか?」

「いいえ、なんとなくです」

 ミスリアは笑ってごまかした。ゲズゥをチラリと盗み見れば、彼はどこへとも無く視線を遠くへやっている。

「それより、ミョレン国に聖人の呼びかけがあるんですね」

 教団との関係が芳しくない国なのに、意外に感じる。

「すっごい強い人ですから、いろんなトコから声かかってたんすよ。こんな辺境でひっそりと鍛えてただけなのに、いつの間にか噂が広まっちゃって」

 トリスティオは師のことを誇らしげに語る。ツェレネもうんうんと頭を縦に振って同意している。

「なるほど」

「方々からの話を聞いてて、一番ついて行きたいと思った人を選んだって言ってました。やー、おれもいつかはああなりたいっす」

「頑張ってください。きっとなれます」

 ミスリアはそっと微笑んだ。

 ツェレネにも励ましの言葉をかけられ、トリスティオが照れくさそうに笑う。

 その後続いた会話は、あまりミスリアの耳に入らなかった。

(また、夢を追ってる人……それにその聖人様も立派だわ)

 自分は、人がついて行きたいと思えるような人間では決して無い。

 そんな方法では人を集められないし、むしろ考え付きもしなかった。

 心のうちに広がる暗い波を自覚して、ミスリアは焦燥感を覚える。

 自分の良さを提示して呼びかけた訳でもなければ、潜在的な何かで引き寄せた訳でもなく。

(私は)

 また、斜め後ろのゲズゥを盗み見る。今度は気付いて、彼が視線を返す。黒い瞳には何も映らない。

(死ぬ間際の――実質、追い詰められていた人を――)

 他に選択肢の無い人間に半ば押し付けるような形で取引を持ちかけた自分は、間違っていたのかもしれない。

 意図して打算的な方法を取ったんじゃない――なんて、説いた所でただの言い訳である。

「――は、一人だけなんすか?」

「はい?」

 トリスティオに何か話しかけられている。ミスリアは悶々とした物思いから抜け出た。

「聖女さん、護衛は一人だけなんすか? 普通、聖人や聖女の旅は最低でも魔物狩り師が一人、戦士や兵士が二人は護衛についているって聞いてたんすけど」

「はい、普通はそうですね」

 なんて的を射たことを言うのだろう、と内心では苦笑しながら、とりあえず同意した。

 本来ゲズゥのような接近戦に特化した人間は、魔物狩りに向かない。

 魔物と対峙する時の戦法は、まず中距離または遠距離から攻撃を繰り出し、対象を弱らせるか拘束してから、接近して止めを刺すのがセオリーだ。そして常に二人以上のチームを組んで連携するのが理想だ。

(でも魔物が怖くて護衛を頼んだんじゃないから……)

 そうだったならば普通の魔物狩り師を雇っていた。

 個人的な興味も混じっているとはいえ、わざわざゲズゥ・スディルこと「天下の大罪人」を探し出したのには違った理由がある。

 これまでの旅で誰もトリスティオと同じ指摘をしなかったのは、きっとミスリアがいずれ供を増やすだろうと想像していたからに違いない。

 ミスリアも、せめてあと一人は増やしたいと考えてはいる。

(残念ながら、そんなアテなんて無いけど)

 協調性に乏しいゲズゥが誰かと組むのを嫌がったりしないだろうか、とも思う。たとえゲズゥが平気だとしても、どちらかというと相手の方が嫌がるかもしれない。

 カイルはああいう温和で立ち入り過ぎない性格だからか、何の衝突もなく三人で旅ができた。果たして他の人間を仲間に迎えてそううまく行くかどうか。

「今までは彼一人だけでも十分でした。けれどもそれも運が味方しただけかもしれませんし、道中にいい人材に出会えたら勧誘しようと私も考えています」

 嘘は言っていないけれど、ミスリアにとっては実現性の低い話である。

「そうっすね。飛び道具を扱う魔物狩り師はやっぱり必須でしょう」

 その返答に納得したのか、トリスティオは深く頷いた。

「トリスの弓みたいなー?」

 ツェレネが首を傾げて無邪気に問う。

「おれの腕じゃまだ旅は無理だって。大体、皆を置いていけるかよ」

「うん、置いてかないでね」

「何だその言い方」

 えくぼを浮かべてツェレネが笑うと、トリスティオは頬をかすかに紅潮させた。

 ミスリアが手元のハーブティーの甘い香りを嗅ぎながら「仲が良くていいなー」、みたいな感想をぼんやりと思い浮かべていた、その時。

 蒸し暑いとも言えるような夜を、不似合いに冷たい微風が吹き抜けた。

 その風に乗って、鼻がひん曲がる程の悪臭が届く。

 それが何を意味するのかは疑いようも無かった。

 テーブルを囲う三人は一斉に立ち上がり、ゲズゥも刀身剥き出しの剣を構えて前へ進み出た。トリスティオがツェレネを自らの背後に押しやった。

 虫の声がいつの間にか止んでいて、奇妙な静寂が庭に満ちている。

 吐息すら無意識に潜めてしまう。

 前方の深い茂みを睨み、ただ待つしか出来ないその数秒が無限に続くように思えた、が。

 葉と葉の擦れ合う音がした。

 茂みの奥から、緋色の双眸が燃え盛る。

 原始的な――捕食者に睨まれた獲物の――恐怖を制御するため、ミスリアは奥歯を噛みしめた。

 前方の茂みから巨大な影が飛び出たのとほぼ同時に、トリスティオが弓に矢を番えた。

 現れ出た異形のモノの左の眼球を、彼の矢が的確に射抜く。

 魔物は、聴くに堪えない絶叫をしつつ仰け反った。

 蝋燭の炎に照らされるソレは山羊の頭に人間の男の胴体と続き、そして下半身は山羊の毛並みに覆われた、馬を思わせる体躯をしていた。

 両手にはそれぞれ指が三本しかなく、黒い爪が恐ろしく長い。

 魔物が体勢を立て直しては地面を蹴るが、右の掌と左肩に次々と矢が刺さる。半人前と自分では言っていても、トリスティオは十分に戦力になった。

 痛みに悶える魔物を一刀両断すべく、ゲズゥが迅速に接近している。

 彼が残る一歩を踏み込んで大剣を振るうだけで、この緊迫した場面も終わる。

 そんな風に後方の三人が安堵した、瞬間。

 ゲズゥが踏み留まった。

 素早く振り返った彼は大きく目を見開いている。

 斬るべき敵を目前にして一体どうしたというのか――

 ――ゴキッ。ギィッ。

 何かが噛み砕かれる音と、何かが抉じ開けられるような音が背後から連続して響いた。

 そのどれもがひどく鈍いものだった。

「え?」

 ツェレネの突拍子も無い疑問符に、ミスリアも振り返って、そして。

 総ての言葉を失った。

 全身から力が抜けて、地面に尻餅をつく。

 五感からの情報が巧く噛み合わなくて、場に対する飲み込みもまたちぐはぐな感じになる。

 今日までに、人間の頭蓋骨が開かれる図など見たことが無かった。

 赤毛の美少女だったはずの彼女は足が地面から浮いていた。

 美しい目や口や鼻から溢れ出るナニカ。

 彼女の脳天に長い牙を立て、両手の爪でそれを果実にするように開き、中身を啜る羊頭の異形。

 それはそれは大きな音を立てて、夢中で啜っている。

 ――生きた人間の脳髄を。

 理解した途端、胃の中の物が喉を逆流した。

 再び息ができるようになった頃、まだあの音は止んでいなかった。

 その上、額を割られた少女の映像が目に焼き付いている。

 ミスリアは何とか思考を巡らせようとした。しかしパニックで考えは何一つまとまらなかった。

(なんて――なんて理不尽)

(羊って上顎に歯が無いはずのに、あんな牙ありえないわ)

(ツェレネさんは若くて夢があったのに。出会ったばかりなのに)

 ――違う、そんなことを考えている場合じゃない――

 羊頭の魔物は、山羊頭の魔物と似た体の構造をしていながら、胴体は女性だった。ふっくらとした乳房に鮮血が滴っている。

(助けなきゃ。まだ間に合う?)

(キモチワルイ)

(理不尽だわ)

(山羊の方はどうなったの、ゲズゥは無事かしら)

 ――違う、違う、早く聖気を。

 魔物がふと、啜るのを止めた。

 緋色の双眸が宙をさ迷い、やがてミスリアの上に焦点を定めた。獣の顔に表情は無いが、何故か笑っているように見えた。

(こわい。死にたくない)

(体が動かない)

(死にたくない)

(助けなきゃ)

 アミュレットに触れさえすれば聖気は展開できる。幸い、羊の魔物が動きそうな気配は無い。

 なのに全身に全神経を集中させても、やはり動けないものは動けなかった。

 途方に暮れていたら、聴き慣れた声が耳を打った。

「やめておけ、アレは助からない」

 ゲズゥはミスリアの心を読んだかのような発言をした。

(そんな残酷なこと言わないで)

 助ける努力くらいするべきでしょう、と抗議しようにも声が出ない。泥沼に浸かっているみたいに体がだるい。

 絶望が、見えない錘となって降りてくる。

 もう間に合わない。

 とっくにそれを知っていた、それでも受け入れられなかった。

 否、現実感が無いのだ。吐き過ぎた疲れもあって、熱があるように頭がぼうっとする。目の前の惨状を、呆然と眺めるしかできない。

「今のた打ち回っても無駄だ。強くなりたいなら戦え」

 ゲズゥが珍しく声を荒げている。

 すぐ隣で誰かが咳き込む音に気付いて、今の言葉がトリスティオにかけられていたのだと知った。

 ミスリアは目だけを動かしてトリスティオの姿を探し、うずくまる少年を見つけた。肩で息をしながらしきりに呻いている。

「死にたくなければ、動け!」

 その言葉を聴いた途端、ミスリアは叩かれたみたいな衝撃を受けた。

 泥沼に浸かる錯覚が霧散した。

「何だ! 魔物が出たのか!?」

「ツェレネ!? いやあああああっ」

 今になって長老の次男夫婦が家の中から出て、現状にそれぞれ反応をした。気を失った妻を、顔面蒼白な夫が支える。

「どうした!」

 周りの家からも、人が出て来ている。ぽつぽつと松明の明かりが増えて、魔物の青白いゆらめきが目立たなくなった。

(このままでは犠牲者が増える)

 ゲズゥが山羊の魔物に何度も斬りかかるのを目の端で捉えながら、ミスリアは深呼吸した。脱力している場合では無い。

 自分がまず生き延びなければ、誰かを助けることなんてできやしないのだから。

 「聖女」ならば、一般人を守るのが当然の役目だ。

 ミスリアはその為の術と経験を持ち合わせている。他の誰が怖気づいたとしても、自分だけは最後まで立っていなければならない。

 既に失われた命に関しては、ひとまずはもう考えないようにした。

 今度は体のどれかひとつでも、動ける部位を探すことに集中した。

 そして発見した。

 震えがひどいが、何故か左手だけは動かせるようだ。

(お願い、動いて。動け!)

 左手の中指の先が、曲がった十字に似た形のアミュレットに触れた。


_______


 山羊男は、思ったよりなかなかにしぶとい。

 いくつかの傷口から体液をダダ漏れにしながらもまだまだ動き回る。あの血液だと思っていたモノは本当は奴らにとってさして重要でもないのだろうか、などとゲズゥは考えた。

 腕を一本切り落としてやったのだから少しは怯んで欲しいところである。

 羊女の方は赤毛の娘を食べている間は大人しくしているだろうと踏んで、ゲズゥは先に山羊男を相手にしている。

 今のところ二体ともまだミスリアに興味が行っていないのが救いだが、それも時間の問題だろう。

 山羊男は一度雄叫びのような声を出してから、突進し出した。その僅かな間にゲズゥは思案した。

 魔物の爪や角も問題だが、何よりもあの足に踏み付けられたらまずい。ゆえに奴の攻撃を避けつついかに隙を誘えるかが今一番の課題である。

 仁王立ちになって剣を構え直したゲズゥは、にわかにあることに気付いた。

 茂みの中から集落の民が何人か、鍬や鎌などを持ってこちらへ近づいている。

 勇敢で結構だが、動きを見る限りは皆まるっきりの素人のようだった。これでは、惚れた女の死を目の当たりにして使えなくなっているそこのガキよりも足手まといかもしれない。

 ――いや、逆に利用できるとすれば。

 何か名案に辿り着ける気がしたが、もう山羊の角がすぐそこまで迫ってきているのでやめた。

 ゲズゥは左下へ跳び、剣を薙いだ。そうして、魔物の前足を刃で捉え、切り離した。

 馬であれば、そのまま地面へ崩れたことだろう。だが期待外れなことに、そうはならなかった。

 山羊男はいつの間にか新たな、しかも前よりも明らかに倍は長い、腕を生やしていた。その腕を地面に立てて体勢が崩れるのを防いだ。緋色の目以外は何も考えていないような寝惚けた顔をしているのに、それくらいの知能はあるということか。

 ゲズゥは畳み掛けに攻撃をしようとまた構えた。ところが山羊男はものの数秒で無くなった足を再生し、振り下ろされる剣をかわした。

 まったく魔物と言うのはデタラメで面倒な存在だ、とゲズゥは舌打ちした。

 ゲズゥは魔物狩りの専門家でなくとも、勝つ為に何が必要かに関しては自分なりの考えを持っていた。

 たとえば慎重さと持久力。得体の知れない化け物相手に、性急に踏み込みすぎるのは危険だから、根気良く長期戦に持ち込まねばならない場合も多い。

 同時に、変化し続ける状況に瞬時に対応する反射神経と判断力も必須である。

 羊女が食事を娘の脳髄から手足の肉の方へと移していたのが視界に入った。全部食べ終われば、おそらくは次の獲物を探すだろう。そうなればゲズゥは二体とも相手にしなければならない。

 驚異的な再生力が羊女にも共通しているとしたら、益々厄介だ。

 見れば、山羊男は思い出したように次から次へと傷を治している。

 奴が一旦思い立ったからには、これからはマメに再生するだろうと仮定しなければならない。不公平なことに生きた人間のゲズゥにそんな再生能力は無い。怪我を負わなくても、長引けば体力の消耗は免れない。

 手数の多さで圧倒すればどうにかなるだろうか、と試しに大剣から短剣へと得物を替えた。魔物の背後に回り、黒い毛に覆われた体を幾度と無く斬り付けた。容易に振り返られない魔物は悲鳴を上げるが、結局傷は数秒で消える。この分では全体を両断したとしてもくっつきそうである。

 ゲズゥは一歩下がった。

 これっぽっちも打開策が浮かばない。

 こうなったらミスリアだけ拾って全速力で逃げるか、と真面目に検討し始めたら、転機は思わぬところから降って沸いた。

「うおおおおお!」

 魔物がゲズゥに向き直ったちょうどその時、死角から集落の人間が一人飛び出てきた。振り下ろされた鎌が、魔物の尻にザックリと突き刺さる。直後、その男は魔物の後ろ足に蹴られて吹き飛んでいたが、そんなことよりも。

 ――なるほど、凶器が体内に突き刺さったままの状態なら再生は遅れるらしい。

 とはいえ、刺すより斬るのが主な攻撃手段であるゲズゥにはあまり意味の無い発見だった。

 素人どもが勢いづいて一斉に山羊男に襲い掛かっている隙に、ゲズゥは羊女の方へ目をやった。もはや赤い髪の毛以外は原型を留めていない娘の、内臓を引きずり出して喰っている。もうあまり猶予は残っていない。

 山羊男の方はあっという間に周囲を一掃していた。三、四本の鍬や鎌が突き刺さっているためか動きが鈍いが、素人どもを爪で裂いたり蹴飛ばすには十分な体力が残っているようだ。引き千切った誰かの腕を、音を立てて骨ごと咀嚼している。

 大剣を構え、ゲズゥは宙を跳んだ。

 空中で一回転して勢いをつけてから、山羊男の胴体と下半身の付け根めがけて剣を振り下ろした。

 すんでのところで魔物は飛び退いた。

 着地をしたゲズゥはまた舌打ちをして――異変に気付き、目を細めた。

 手応えが無かったので空を切ったとばかり思っていた。それなのに、魔物の胴体と下半身の付け根はまるで斬られたかのようにぱっかり開いている。紫黒色の血液は流れておらず、代わりに銀色の素粒子が零れていた。

 胴体の素肌では、人面がざわついている。

 銀色の粒子、といえば。

 思わずゲズゥは剣の先に目をやった。するとそこには付け足されたように金色の光があった。

 どうやっているのかはわからないが、ミスリアが聖気で剣の切っ先を有りのままのそれよりも少し長くしていると察しが付く。

 ――聖気によって浄化された部分ならば、再生できない。

 すぐにピンと来て、ゲズゥは剣を構え直した。

 しかも魔物はうっとりと銀色の光を眺めるだけで、周りへの注意も疎かだ。これならば倒せる。

 念のためにまた魔物の後ろに回り、剣を振り下ろした。

 左右に均等に分かたれた山羊男は、それでもくずおれることは無かったが。くっつきなおすことも無く、切り口からどんどん銀色の素粒子を放っている。そうして質量が見る見るうちに減っていく。

 振り返り、ゲズゥはミスリアの姿を確認した。目をきつく瞑り、左手で首飾りを握っている。

 実質、今最も役に立つのが十四歳の小娘とは皮肉なものだ。やはり聖女であるだけにこういう時は肝が据わるのだろうか、と僅かばかり感心をしていたら――

 横から何かが衝突してきた。

 そのままとんでもない重量によって地面にうつ伏せに押し付けられた。

 ゲズゥは、己の肋骨が折れる音を聴いた。内臓もおそらくいくつか潰れている。激痛に何度か失神しかけるが、何とか意識を保った。

 文字通り、息ができない。口の中で草と土と鉄の味が混じり合う。

 羊の鳴き声に目を開けば、血に塗れた雌羊の頭がすぐ近くにあった。緋色のつぶらな瞳に覗き込まれ、ゲズゥはなんともいえない気分になる。

 というより、臭い。至近距離でのあまりの腐臭に、流石のゲズゥも吐きそうになる。

 羊女の両手の爪に頭を掴まれ、これは今度こそ死ぬだろうなと予感がした。

 唐突に、羊頭が離れた。魔物は怒りに悲鳴を上げている。次いでゲズゥは、重りから解放された。

 的を捉えられなかった矢が地面に舞い落ちるのを見て、何が起きたのか把握した。どうせなら当たっていれば尚良かったが。

 ゲズゥは這って起き上がった。ミスリアが離れた場所から治癒をしてくれているため、痛みがいくらか和らいでいる。

 羊女は次の標的を決められないのか、叫びながらぐるぐると同じ場所を飛び回っている。山羊男よりは頭が悪そうで何よりだ。

 魔物が立ち止まる一瞬を狙い、ゲズゥは跳躍した。

 まるで馬の背に跳び乗るような形で羊女の首に片腕を回し、後ろから絞めた。馬と違って柔らかい羊毛の座り心地が、若干気味悪い。

 ゲズゥの腕を引き剥がそうとして女の黒い爪が食い込む。唇を噛み締め、耐えた。

 羊女はひたすら暴れ回った。振り落とされまいと、ゲズゥは脚に力を込める。こうも動かれては短剣を抜くことが出来ない。

 揺れる視界の中から、黒い巻き毛のガキが弓矢を構えているのがチラッと見えた。  ひどい顔だが、戦う気がある限りは使えるかもしれない。残る力を振り絞り、ゲズゥは女の首をギリギリと締め上げた。そうして、ガキの次の行動を待つ。

 放たれた矢は二本ほど外れた。

 乗り物酔いのような気持ち悪さが襲ってきているため、ゲズゥはそう長くは待ってやれない。もうダメかと腕の力が抜けかける。

 ドッ、という音と共に横から衝撃があった。

 羊の横腹に該当する部分に、淡い金色に光る矢が刺さっている。

 魔物は瞬時に大人しくなった。

 念のためにゲズゥは短剣を抜き、羊女の首を掻っ切った。血飛沫のようなモノが吹き出ても、魔物はそれでも暴れない。

 矢に射抜かれた箇所を中心に粒子化が進んでいるのを認めて、ゲズゥは魔物の背から飛び降りた。完治からは程遠い身体が軋む。

 そこから先ずは地面に両手を付いている少女の元へ行った。

「近付いて浄化しなくていいのか」

 ミスリアの傍らに立ち、訊ねかけた。山羊男も羊女も不動のまま質量が減って小さくなっているが、まだ油断はできない。

「……たぶん、大丈夫……だと、思います」

 普段は澄んでいる少女の声も今は掠れている。

「……そうか」

 ゲズゥ以上に魔物という存在を理解しているはずのミスリアがそう言うなら、信じて良いのだろう。

 原理は良くわからないが、彼女が相当な無理をして援護してくれたのもなんとなく感じ取れる。

「ぐ……うっ…………レネ……!」

 弓矢のガキは覚束ない足取りで無残な亡骸の傍へ駆け寄った。

 一連の流れに呆気に取られていた集落の人間も負傷者の手当てをし始め、犠牲者の死を嘆き出す。最初の赤毛の娘以外に、何人かが山羊男にやられたらしい。それ自体は、ゲズゥにとってはどうでもいいことだった。

 魔物が二体とも完全に消えるのを見届け、次にミスリアを見下ろした。

 悲しみに濡れた茶色の瞳が瞬き、涙が白い頬を伝っている。

 他に魔物の気配を感じないか訊くべきだという考えが、ゲズゥの脳裏を過ぎった。だがその問いは無意味だと判断する。他に魔物が居ようが居まいが、もう知った事ではない。

 ――もう少し休ませてやりたい気持ちも無くは無いが。

 ゲズゥは大剣を背負い直すと、ミスリアの首根っこを掴んだ。

「な!? 何ですか」

 少女の驚いた顔が見上げてくる。

「引き上げる」

 荷物が半分ほど部屋に置きっぱなしなのが惜しいが、この際諦めるしかないだろう。

「でも怪我をされた方の治癒をしないと……!」

「無駄だ。こうなった以上、俺らに居場所は無い」

 逃れようと抵抗するミスリアを、彼は両手で抱え上げた。

 庭は集まってきた大勢の人間の声でざわついている。

「どうしてこんなことになったんだ!」

「何週間も魔物なんて出なかったのに……」

「余所者を迎え入れたからだ。他に理由なんて考えられないだろう!?」

「そうね、そうに違いない。聖女さまだからって気を抜いたわ」

「あの二人の所為でこんなことに!」

 予想通りの非難の声と睨み付ける視線。実際に二人の所為だとしてもそうでなくとも、魔物を倒した功績も、もはや関係無い。

 困惑するミスリアを無視して、ゲズゥは山へ向かって走り出した。


_______


 道が途切れて既に三十分以上は経っている。

 こんな暗闇の林の中をこうも速く走れる人間はきっと他に居ないだろう。それもほとんどが斜面だ。自分を抱えて走る長身の青年を一瞥して、ミスリアは場違いな感心を覚えた。

(何だか逃げてばかり……)

 それも今回はシャスヴォルから逃げ出た時とは事情が違う。一体自分たちは今は何から逃げているというのだろうか。

 世間から追い出されたような疎外感を感じ――「天下の大罪人」と呼ばれるゲズゥは何時もこんな気持ちなのかと想像する。否、彼の孤独はこんなものではないはずだ――

「きゃっ」 

 急に取り落とされたように下ろされ、ミスリアは慌てて地に立った。

 振り返るとゲズゥは樹の根元を背に座り込んでいた。ひどく咳き込んでいる。見た目以上に重傷を負っているのかもしれない。

(治さなきゃ)

 ミスリアは歩み寄り、手をかざした。気力を使い果たして億劫だが、かろうじて聖気を展開できた。いつもよりは弱々しい光で傷だらけのゲズゥを包む。

 どれ程の間、そうしていたかはわからない。途中で何度も集中が途切れそうになるのを必死に堪え続けた。これくらいの労力は守ってもらう上での当然の対価である。

 やがて、ゲズゥが「もういい」と手を振って示した。それを待っていたかのように体中から勝手に力が抜け、ミスリアは地面にへたり込んだ。

(なんて一日……)

 今朝がものすごく遠い昔のように感じられる。

 今日の出来事を思い出しただけで疲れが増した。

(……たすけ、られなかった……)

 そしてツェレネの最期が生々しく脳裏に蘇った。ミスリアは反射的に口を覆う。

「私の、所為」

 涙が零れたのも、唇から言葉が漏れたのも、無意識からだった。

 しばらく平和だった場所に魔物が急に現れたのは偶然かもしれないし、必然だったかもしれない。

 魔物は性質上、聖気に惹かれて寄ってくる。自分が事の元凶だった可能性はどうしても否めない。

 考え出すとそうとしか思えなくなり、両手で頭を抱え、髪の毛をかき乱した。

「……彼女の未来が絶たれるくらいなら、私が代わりに死ねば良かった!」

 半ば自暴自棄、半ば本心からの言葉を吐き捨てた。

 将来の夢を持たない自分と、夢を持って輝いていた少女とでは、早世して可哀相なのは後者だ。自らの聖女としての使命と意義は、棚にあげるとして。

 無意識の独り言に、返事があった。

「馬鹿馬鹿しい」

 頭上から降ってきた苛立ちを含んだ声色に、ミスリアは少なからず驚いた。

「もしお前が代わりにやられていたとしてあの娘が死なずに済んだのか? 助かったかもしれないが、結局死んだかもしれない。正解の無い仮定を立てても時間の無駄だ」

「それはそうですけど」

 ミスリアは顔を上げた。距離は近いのに、暗過ぎてゲズゥがどんな表情をしているのかは見えない。

「単にお前が生き延びてあいつが死んだという事実があるだけだ」

 彼のあまりに冷淡な物言いに、ミスリアは身震いした。

「……恐ろしいほど正しくて、理にかなったことを言うんですね。私はそんな風には割り切れません。私とさえ出会っていなければって、どうしても思うんです!」

 つい身を乗り出し、ゲズゥに食って掛かった。普段なら考えられないことだが、今のミスリアは相当気が滅入っている。

「ならこれからはずっと野宿して行けばいい。何処の村や町とも誰とも関わらずにな」

 ミスリアに釣られているのか、ゲズゥもいつになく大きな声を出している。

「最悪、そうします。私は今まで甘かったんです」

 唇をきつく引き結んで答えた。

「お前のその責任感が、馬鹿馬鹿しいと言っている。聖女が与える恩恵はそれ以上に価値の無い物か? 世界とやらを救いたければ、犠牲にいちいち反応するな。所詮その程度の覚悟か。それこそ甘い」

 漆黒の前髪が揺れて、ゲズゥの呪いの左眼が顕になっている。光源は無いのに金色の斑点だけが光沢を放っているように見えたのは、錯覚かもしれない。

「私はっ……! 世界を救いたくて旅に出たんじゃありません!」

 視線を逸らさず、言い放った。

「じゃあ何の為だ!」

「言わなければいけませんか!?」

 夜を裂いてしまいそうな叫び声をあげて、ミスリアははっとなった。

 どこからか、小動物が逃げる音がする。

 後には奇妙な静寂が残った。

 やはり暗くてわからないけれど、ゲズゥが驚いた顔をしているみたいに感じた。

(どうしよう)

 ミスリアは俯き、袖で涙を拭った。

 思えば――言い方はひどいけれど、ゲズゥはウジウジと自責の念に囚われていた自分を諭してくれていただけである。

(私の方からこんな旅に巻き込んだんだもの)

 真意ぐらい話すべきだろう。でも、心の準備がまだ出来ていない。話せばまた、馬鹿馬鹿しいと一蹴されそうでもある。

 逡巡していたら、長いため息が聴こえた。

 ミスリアは反射的に顔を上げた。どうしたんですか、と訊いていいものか迷う。

「……十九年生きて、こんなに喋ったのは初めてな気がする」

 いつもは無機質な印象を与えがちな低い声が、この時は明らかな呆れを帯びていた。

「わ、私もこんなに怒鳴ったのは生まれて初めてです……」

 似たような告白を、ミスリアも返した。何故か恥ずかしくなって目を逸らした。

「別に、理由なんて言わなくていい。俺とお前は、互いを生かすという利害が一致する関係だ。それ以上の思惑を共有する必要は無い」

 もう一度ため息をついてから、ゲズゥは立ち上がった。

「………………はい」

 ミスリアは頷きながらも、少しだけ、寂しさが胸を突くのを感じた。

「それより、もう寝る」

 再びゲズゥはミスリアの首根っこを掴んだ。

「え」

「ここに居たら狼に襲われる」

 それだけ言うとゲズゥは傍の樹を登った。ミスリアを一本の枝に置いていき、彼自身は逆側の太い枝の上で横になった。

(狼って……)

 此処からは危険なユリャン山脈に入らねばならないのだと、今更ながらに思い出した。

 今だって、朝日が昇るまでにまた魔物に襲われるかもしれない。ちゃんと休めるか不安になる。

「あの、狭い範囲でなら、数時間ほど結界を張れると思います」

「……」

「カイルに水晶は預けてしまいましたけど、聖人と聖女のアミュレットには小さな水晶がついてますから」

 十字の形に似たアミュレットの左右の棒がちょうど下に曲がったところに、それぞれ紫色の水晶が付いている。滅多なことが無い限り、なるべく使わない決まりである。また、水晶は貴重なので、これは聖人聖女以外の他の聖職者のアミュレットには無い。

「狭いって、どのくらいだ」

「えーと、今の私に残る力だと、人一人囲めるくらいでしょうか……」

 そこまで言って、言いだしっぺのミスリアは肩を落とした。一人しか囲めないのなら結界を張る意味が無いに等しい。

「なるほど」

 その一声の後、本日三度目にミスリアは首根っこを掴まれた。

(私は猫じゃないのに――)

 抗議の一つも出来ない内に、今度は何か暖かい所に落とされた。

(ええぇえええ)

 そこはゲズゥのお腹の上だった。ミスリアはぎょっと驚いて身じろぎしたが、落ちないようにか、いつの間にか腰回りをきつく抱かれている。

(これなら一人分の広さでも二人囲めるけど!)

 慌てるミスリアに対して、ゲズゥは今にも眠りそうな様子でくつろいでいた。片腕で枕を作って、多分目を閉じている。

 こうなってはやむをえない。

 これは生きる為に必要なこと、意識してはダメ、と自分に言い聞かせながら。

 ミスリアは水晶に祈りを捧げ、結界を組み立てた。

 それが終わると同時に自分の意思とは無関係に、ゲズゥに重なるように前に倒れ込む。

 この体勢はマズイ。何とかどかなきゃ、みたいな考えが頭を過ぎるけれど、疲れと眠気で動けない。

 一定のリズムをもって上下する温もりと心音の心地よさに、ミスリアは身を委ねた。

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