魔王さまがラジオをはじめる。いわゆるお仕事系ファンタジーの系譜ですが、配下の魔物や勇者たちから悩みを聞いたり、癖のある魔物をラジオのスタッフにしたり……と、期待通りのエピソードが一話完結で進んでいきます。本作の魅力はなんといってもほのぼのとして優しい空気感でしょう。なんだかんだで面倒見のいい魔王さま、優秀なスタッフ(魔物)、敵というよりはお客さんという雰囲気の勇者パーティー。
魔王さまが配信しているラジオを軸に、キャラクター同士の輪が広がっていく感じがなんとも楽しい。毎日ちょっとずつ読み進めていきたい、まさにラジオ番組のような作品です。
魔王がDJをするというだけの内容ながら、読んでみると所々に重要な情報が鏤められて中々に目が離せない。ラジオに嵌る人間の心理に似た、一種の中毒性がこの小説に詰まっております。
ラジオの先で聞いているのは部下や父だけでなく、何とライバル関係である勇者までもがリスナーになっていて!?
普通ならば偉いこっちゃと大騒ぎする筈なんですが、この魔王はそういった事実も含めてラジオを盛り上げる為の道具にする。今までにないタイプの有能魔王ですぜ、こいつは……!
魔王という本職でありながら、大体がDJ業に勤しむという異世界コメディ小説。魔王と勇者の殺伐としたものは飽きたという方は、是非一度御読み下さいませ!