不思議な二人

 少し歩くと小さな家が見えた。どうやらあれが仁の家らしい。

「気にせず入れよ」

 そういうとドアを開けて入った。可愛い兔の人形が置いてある。大きさの違う靴が置いてるということは誰か家にいるのか?というより鍵をかけないとは不用心だ。

「今不用心だな。って思ったろ?」

 毎度こいつは心を読んでいるようだ。僕が単純すぎるのも問題だろうが。

 そうして近くの部屋に入った。映画とかで良く見る和風の部屋だ。

「別に大丈夫さ。ここの村には俺以外住んでない。俺も人間を見たのは久しぶりだからな」

 なるほど。つまるところ。

「人間以外の生物がいるってことだね。しかも話せる」

 すると仁はしかめっ面をして答えた。

「お前は単純だが、変な所で頭が回るよな…。そうだよ、この村には魔法の力にあてられた化け物が住んでいる」

 仁がそんな話をしていると偶然かわからないが一匹の動物が部屋に入ってきた。

「化け物とは失礼だね。この村を出ていかないお前の方がよっぽど化け物だよ」

 そういうと僕と仁の間に座った。この動物はどこかで見たことがあるが…なんだったか。

「すみません、あなたはなんの動物なんですか?」

 すると彼?は呆れたように言った。表情は上手く分からないが呆れたように感じられた。

「全く・・・あんたもか…。私はハツカネズミの鶴。鶴でいいわよ。」

「鶴さん、よろしくお願いします。僕の名前は零です」

 そういえば苗字を決めていなかった。後で仁にお願いしておこう。

「零か…あんたもしや・・・魔女かい?」

 すると仁は嬉しそうに答えた。

「ちげぇぜ鶴!こいつは魔女が死んだ時に生まれる人間!魔法使いだ!」

「へぇ、あんたそろそろまともな嘘つきなよ?エープリルフールじゃないんだし」

 すると仁はため息をつき、森で起きた出来事を説明した。


「なるほどね…普通なら嘘だ、侵入者を隠しているだけだ。って思うけど」

「お前は魔女が死んだ時の魔力にあてられた魔動物だ。それならお前にも魔力はあるはずだしお前もある程度は感知できる。違うか?」

 すると鶴は嬉しそうに言った。

「全く、オタクもここまでくると面白いわね。確かにこの子には魔力が流れているわ。しかもかなり濃密な。このレベルは魔女以外ないといってもいいレベルよ」

 それを聞いて仁は指を鳴らし、こういった。

「やったぜ!つまるところこいつは魔女が魔法使いのどっちかってことまでは確定だ!」

「いやあくまで魔女レベルの魔力ってだけでしょ…」

「といっても。魔女レベルの魔力を持つものなんて魔女の一生をかけて作る魔具ぐらいしかないわよ」

 僕の突込みに鶴さんが答えた。

「んじゃあこいつはそのもあるわけだな」

 確かに僕はちょっと変わってるしその可能性もあるかもしれない。

「ただ、人間のような知能を持った魔具なんて田舎といっても聞いたことないわ…というよりそもそも魔具自体が片手の指の数で足りるレベルしかないよ」

「といってもここであーだこーだ話していも意味がありませんね。鶴さんはどう思いますか?」

「私は仁のいうことを信じられないけど、その魔法使いって可能性が一番だと思ってるね」

 すると仁は笑顔で言った。

「そうだろ!そうだろ!俺はこれを東京に行ってから有名にしようと思う!」

 待ってそれ初耳だ。

「そして俺は歴史に名を残す!」

 お前は何を目指しているんだ。

「仕方ないわね…旅の準備とかは私達に任せなさい」

 いや待て、僕は何1つ了承していない。

「んじゃ行くぜ零!東京に!」

「まあいいよ、僕も一度東京に行ってみたかった…ん?」

「どうした?」「どうしたの?」

 なんだこの違和感は…。まるで僕は…

「いや気のせいだ」

「そうか、心配させんなよ」

「まあいいわ。体調を壊さないように今日は寝なさいよ。明日の朝出発だから」

 そうか、それなら布団を敷かないとだな。

「仁、布団はどこにしまってるんだ?」

 すると仁は襖に向かって指をさしながら言った。

「あー。それならそこの布団だ」

「了解、とめてもらうんだしそのくらいはするよ」

 しかしその時、僕に1つの疑問ができた。

「ごめん、質問いいかな?」

「何だ何だ。いいぞ別に」

 布団を敷きながら僕は聞く。

「君の両親。そしてお姉さんは?」


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