魔女が死んだ村

「魔女が死んだ村だって?」

 事実なら聞かなければならないことがある。

「あーそろそろ暗くなるな、村に戻りながら話すぞ」

 そういうと仁は歩き出した。僕はそれについて行き、ふと思った質問をぶつけた。

「君・・・魔女が死んだ時の仮説、かなり面白かったんだけど。もしかして魔女を・・・」

 笑いながら仁は答えた。

「違う違う。この村にはには殺せるほど力ある者はいねぇし、殺す意味がねえ。メリットよりデメリットの方がでけえよ」

「そうか、となると寿命で?」

 そう聞くと彼は、少し嬉しそうに答えた

「そうなんだ!羽場って言う魔女が死んでよ!それでこの村と森の名前が変わったんだ!」

 確かに魔女の影響力はすさまじいものだった…しかしそれだけで変わるとなると・・・。

「あー分かる分かる。その村には何もなかったのか…みたいに思ってんだろ?」

「うん、その通り」

 すると彼は苦笑しつつこういった。

「俺も俺だが、お前もたいがいな人間だな」

「人間かすら怪しいけどね」

 皮肉な話だ。

「確かにそうだな、俺の考えだろお前の体は9割魔力。魔力ってのは魔女の力の元みたいなものだ」

「ふむふむ」

「全く適当な相槌だな。そんで魔女は普通の人間らしいんだが。お前はどうだ?」

「その根拠は?」

「まずお前を俺は見たことない。ここはど田舎だ。顔を知らない人間がいれば伝わるがここ数日そんな話はなかった。」

「そこは田舎の利点だね」

「つまるところ2つの可能性がある。1つは尾前が生成されたか。もう1つは別の場所から連れてこられて魔法を使えるようにされたって感じだな。」

 それ以外の可能性はなくもないがそれが有力だな。

「現在発見されている魔法は物を動かしたり炎を出したりと、魔法らしい魔法だ」

 魔法らしい魔法とはこれいかに。

「なにより羽場の村、森は魔女が死んだだけに警備がまあまあ硬い。それを気絶した人間1人を連れて侵入する?無茶な話だ」

 それには2つ間違いがある。

「2つ間違いがあるって思ってるだろ?」

 仁は変わらない笑顔でこう答えた。

「1つは新しい魔法が発見された。もう1つは君自身がし、偶然魔法使いとなった」

「・・・僕を疑わないのかい?」

「そんなしょうもないことを気にする時間がもったいない」

「君も最低なやつだね」

「そんなことより、見えたぞ」

 僕の皮肉めいた言葉には気が付かなかったのか、それとも無視したのか分からないが聞かないでおこう。何よりこの景色を目に収めておきたい

「ここが羽場の村。魔女の遺体により生きている村だ」

 まるで・・・まるで夢のようだった…。

「きれいだ・・・こんな光景始めてみた…」

「お前にそんな感情があるとは思わなかったよ」

 村が燃えている。しかし恐ろしさなどを全く感じさせない綺麗な炎だ。

「ここで死んだ魔女は炎の魔女。その遺体から流れる魔力によって村全体と森の周りが燃えている。残っているのは外れにある小規模の集落だけだ。俺の家もそこにある」

「村にはどうやって入るのか?村と言っていいものか分からないが」

「1つだけ、幅4mほど道がここから続いている。不思議だよな」

「魔女がいる時点で僕は不思議には思えないけどね」

「まあ俺もだ、教科書にも載っていない。けれど昔からある・・・不思議な存在だ」

 けれど僕はその謎を解かなければならない。

「じゃあ俺の家に行くか、歓迎はできないけどな!」

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