始まり

「何それ」

「おいおい?そんなことも知らねえのかよ!」

 仁はとても嬉しそうに話す。

「お前魔女は知ってるよな?不思議な力を持った人間を指す言葉だ!魔女の寿命は100歳、100歳ピッタシで死ぬ運命だ。た!だ!し!強力な力を持ってしても死ぬ場合がある!」

 1つ間違っていたことがあるが指摘はやめておこう。嬉しそうな仁を遮るのは悪い。

「そしたらどうなる?実際今まで外国で生まれた魔女は皆100歳で死んだ。しかし、イレギュラーなことはいつ発生するか分からない!もしかしたら魔女が死ぬかもしれない!」

 没頭できることがあることは羨ましいな。

「もし死んだらどうなる?普通に考えたらそれでお終いだろう。しかし俺はこう考えている。新しい魔女が生まれるんじゃないかって!」

 おいおい、こいつオタクかよ。

「魔女ではない、しかし魔女の力、魔法を使うもの!だからその存在を俺は魔法使いって呼んでる!」

 いや会ったことないんだろ。

「ってことでお前!魔法使いか?」

「分からない」

「おう!じゃあちょっとそこの木を破壊してみろ!木を削り取るイメージだぜ!」

 さっきとはもはや別人である。

「はっやく!はっやく!」

 全く、木を削り取るイメージだな。やらないと収まりそうにない。

 さっきとは別人のように仁が静かになった。

「ッハ!」

 僕が叫んだ瞬間、小さいが響く音がした。アニメとかで瞬間移動のSEみたいだ。

 まるで時間が止まったようだ。隣の仁が嬉しそうだ。

「マジかよ…予想外だ…嬉しすぎてちびりそうだ・・・」

 僕も予想外だ。本当に消えるなんて…まさか僕が

「おいおい!お前本当に魔法使いだったのかよ!」

「ああ…木を消すなんてなんて自然破壊なんだ…」

「そんなみみっちいこと気にするな!えっと・・・お前名前なかったんだよな!」

「そうさ…適当に迷い人とでも呼んでくれ」

「おいおい?天下の魔法使い様がそんな変な名前だと困るだろ?」

 誰が天下の魔法使いだ。

「俺が名前をつけてやる!そうだな…お前はれいだ!漢字数字の方な!」

 ぜろ・・・零か悪くないな。

「最初に生まれたといわれる魔女はゼロって名前らしいんだ。それにアレンジを加えてみたんだ。どうだ?センスあるだろ?」

「いや、単純すぎてつまらないかな」

「零!俺とお前は伝説となり、名を残す!」

 初めて会った人と良くそんなこと言えるな。

「んじゃ帰るか、俺んちに泊まっていけよ。相棒だしよ」

 相棒か…ちょっと嬉しいかもしれないな。待てよ?

「そうだ聞いてなかったな、ここはどこなんだ?」

「あー、答え忘れてたわ。ここは羽場の森。そして俺が住んでいる村は羽場の村」

 そういって笑顔で彼は言った。

「そして村だ」

 カァーカァーと鳴く鴉の声が不気味だ。

 これは僕の初めての友との物語。

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