1-7 魔物
突然、乗っていた馬車が止まった。また、いつの間にか寝ていたので前のめりになり床に思いっきり顔をぶつけて目を覚ました。
「いっつ...あれ? ああ、馬車か」
ここで、俺は今更自分が寝ていたことに気づく。
「まあ、当たり前か。ここまで何にもすることがないと...」
その時、左側から響くような低い声で声を掛けられた。
「おい、お前はここで待っていろ。魔物が襲ってきたからな。くそッ、これだから夜は」
「あの、魔物って...」
「うるさいッ。とにかく変な気は起こすんじゃないぞ」
そういって、剣を引き抜いてこちらに向けてきた。自分に剣がいきなり向けられるだなんて思わなくそれが剣だと理解するのに少し時間がかかった。
「は..い」
余りの恐怖に声が掠れる。ヤバい。ファンタジ―というのを少し甘く見ていたかもしれない...
すると直ぐに剣をしまわずに持ちながら馬車から降りていった。その後、金属が触れ合う音が絶えず鳴り響く。一体何と闘っているのだろうか? 同じく剣を持っている相手と闘っているのか? でも、それじゃあまるで...
人同士で争っているみたいじゃないか。
そんなことを思っている間にも、何かの声だとか、剣で何かを刺す音が聞こえてくる。こんなの気にならないはずがない。
馬車に垂れ下がっている布のカーテンっぽいの慎重にめくって外の様子を見た。そこには、多数の人影が恐らく3人の冒険者といっていた奴が戦っている姿が有ったが暗いためよく見ることは出来ない。また、さっきのカーテンが防音の役割を果たしていたのかより大きく戦いの音が聞こえていた。
直ぐにカーテンを閉める。あれは、一体何だったんだ? 暫くすると、戦いの音が止みシーンと静まり返った中で歩いてくる足音が聞こえたとたんに馬車に男達が帰ってきた。しかし、その男は前の方で何かを女たちに話している声が聞こえた。でも、遮断されているためか良く聞こえてこない。そして、前からさっきの青い髪の男が入ってきた。
「何か変なことはしなかったな? 例えば、後ろの積み荷を盗んだりとかしてないだろうな」
「してない...じゃなくてしていません..」
「していないならいい。それと、夕飯だ。昨日は食材が有ったから良かったが今日は無かった。だから、これで我慢しろ。絶対に返してもらうからな。お代を」
「え、あ、はい」
そういって、その男は干した肉っぽいのを渡してきた。
「これでも贅沢なんだぞ。ちゃんと食えよ」
「ありがとうございます」
俺は、食べ物を見つめて食ってみる。そんなに美味しくなかった。昨日のは空腹でおかしくなっていたのかは分からないがこれだけは食レポできる。味付けが無い。しょうがない事なのだろうが。いや、日本と比べたらいけないいけない。いつまでも日本と比べていたら、この世界の食べ物が食えなくなってしまうかもしれないし。
俺はさっき質問しようとしていたことを思い出して勇気を出して聞いた。根は優しそうだしきっと殺されはしないはず...
「さっき、何と闘っていたんですか?」
「ん? ゴブリンだよ。いや、あれはボブゴブリンやゴブリンソルジャーが多分に混じっていたがな」
「ゴブリン...」
「ゴブリンなんて珍しくもなんともない。もっと恐ろしい奴なんて種類でいえば山のようにいるからな...」
そう言って、気が遠くなるような顔をした。まあ、それほど凄いのだろう。さっきの影の動きは普通に見ることが出来たやつと目で追いつくことのがやっとのような奴もいた。今の自分では勝てない。
しかし、それよりも強い奴は何種類もいる...ね。多分、今の俺を瞬殺するような奴だっているだろう。やっぱり、俺のステータスは平均的なのか? いや、俺のlv.は、まだ3だ。この3人の冒険者の動きも見れないわけでは無かった。
ならば、まだあきらめるのは早い。それに、俺にはSPと、くじ引きが有る。
昨日引いた時は、きっと何かの間違いだったんだ。バグ。そう。バグのはず...。
そして、その人が立ち退こうとしたとき、俺はいつまでこの状況なのだろうと思い、止めた。
「あの、町というのはあとどの位で着くんですか?」
「言ってなかったな。明日の昼には何事もなければ着く。着いたらこの馬車の持ち主の所にこれからどうするか聞くんだな。まあ、分けた食料に関しては払ってもらうんでさっき、ちょっと話し合ったんだ。じゃあな」
そう言って、出て行ってしまった。しかし、情報は得られた。これならばきっと大丈夫...だろ。町ね...変なことにならなければ良いけど、カルチャーショックを起こしてしまうかもしれない。既に、それっぽいのは有るしな...。そう思いながら、周りを見渡してみる。もうこれだけでどの程度の文明なのかなんて容易く想像できる。
そうだ。冒険者があるんだ。冒険者に取り敢えずなって様子を見るのが一番最善の選択だろう。実際にやってみたいしな。ただ、どうなるかは分からない。
ただ、文明レベルは分かるがここに魔法技術が加わることによりどうなるかは未知の領域だ。前世のここから想像できる文明と言えば中世が妥当だろう。しかし、所処魔法が使われることによって技術が格段に上昇しているように見える。
例えば、周りの木は全くと言っていいほどに傷んでなどいなかった。また、男たちがつけていた鎧や剣などもかなり精巧に作られているように見えた。こうなってくると、一部日本の技術…ではなく科学ではありえない事だって無数にあるだろう。果たして、どのようになるのだろうか?
あれ、今俺は何をしているんだろう? 友達が目の前にいる。でも、皆笑っていない。まるで大切な何かを失ったかのような目をしていた。
家族が一緒に食べている。でも、その食べているものは粗末だ。誰も、一言もしゃべっていない。何で誰も何も話さないんだ?
教室では、皆呆然としたかのような表情を浮かべていた。そして、先生が悲しそうな表情であるものに視線を向けていた。
それは自分。そうだ、今自分の座っている席には花瓶があった。俺は一気に理解をし理性を飛ばしそうになる。しかし、それを止めるかのように...
ギャアァァァァァァス!
咆哮が轟いた。その瞬間、俺の目に現実の白い光が差した。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
俺は驚きの余り大声を出す。そして、周りを見てみると変わらず馬車の中だった。
「どうした!?」
すると、男が突如入って来て火魔法なのか手から明かりを灯した。それに、続くように眠たそうな目をこすりながら水色の髪の女の子が入ってきた。
「どうしたんですか~?」
「何が有った! 答えろ」
「え、えーと、ごめんなさい。悪夢を見ていたようです。驚かせてすみません」
「悪夢か。驚かすなよ」
そう言って出ていった。その後、ゆっくりとした動きで女の子の方も出て行ったのだった。
「凄すぎるだろ...。想像以上に良かったな! よし」
ガッツポーズを思わずとってしまった。俺の目の前に広がっていたのはコンクリートが使われている幾つもの白い建物と、メインストリートなのかとても横幅の広い石畳の道。
そして、周りの人はその瞬間、驚いたかのようにこちらに視線を向けてきた。その人々の特徴は、日本人と比べると大半の人は痩せていて服は何枚もの布を括り付けただけのような服装。しかし、直ぐに興味が失せたのか再び歩き出していく...
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