最終話 それから
あれからもう5年の月日が経つ。
現在、私はあの時内定をくれた会社では働いていない。正確には、私が働き始めて少し経った後に親会社を含めグループ全体での組織改変があって会社は他のグループ会社に吸収され、一部事業はこれまた別のグループ会社に移管されることになった。
そして私は今、一部事業を移管された方の会社で働いている。
あの会社で働き始めた当初、本当によく休んだ。
半年くらいはやはり保育園で病気の洗礼を受けた。親に来てもらったり病児保育探したりで何とか休む回数は抑えたつもりだったが、熱がなかなか下がらない時などは連日で休むしかないと言う時もあった。そんな時でも、「大丈夫?」「そばにいてあげてね」と会社の人はとても優しかった。
面接してくれた時に安心する言葉をかけてくれた人上司は、保育園から呼び出されて、申し訳ない気持ちで早退したい旨を伝えた時も「それは早く行ってあげないと!寂しがってるよ!」と言ってくれた。
会社が消滅することを知った日は、まだ日が浅いくせに泣きそうになる程、本当にいい会社で、とても優しい方々ばかりだった。
そして今の会社も、とてもいい人たちばかりだ。
契約社員として入社し、移籍先でもそのまま契約社員として働いた。いつか切られるかもしれないと思うと怖かったが、何としても切られるわけにはいかないと、逆にそれがパワーになった。
そして前の会社と合わせて数年の期間を経て、私は今の会社で正社員に昇格した。
新しい直属の上司が正社員に推薦してくれたのだ。契約打ち切りの恐怖から脱出した。
ここまで本当に長かった。
夫が当初主張していた「正社員になれ」ということを、時間はかかってしまったが実現できた。
正社員になると福利厚生もさらに充実するし、何より給与もあがる。
もちろん、正社員になった以上は契約社員の時以上に結果を出さねばならない。さらに気合が入る。
そして今年。
我が家にはもう一人、家族が増えた。
あの時の0歳だった息子に、顔がよく似ている。
娘を見るたび、あの時の就活を思い出す。
会社が倒産したこと、子持ちということがハンデになることを思い知らされた就活、猶予期間が短くなった時の焦り、そんな中、子持ちであっても内定をくれた会社。
全てが今の笑顔溢れる生活につながっていると考えたら、この就活も悪くなかったなと思う。
最後に言いたいのは、子連れだからと就職を諦めることは決してないということだ。
子どもがいるからと偏見を持たれたり、面接で嫌なことを言われることはどうしても避けられないかもしれない。それでも根気強く就活していけば、自分自身を評価してくれる、理解してくれる会社に出会えると信じてる。
子持ち就活! 紅葉 @uzukisphinx1205
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