第16話 異色の面接

区役所からの電話のことを少し引きずりながら受けた面接だったが、この会社は今まで受けてきた会社とは違っていた。


まず、就職面接なのにお茶が出た。こんなこと、新卒の時の面接も含めて初めてだった。

そして、聞かれていた「お子さんが熱を出したらどうしますか?」を聞かれなかった。

聞かれないのが不思議で、逆に怖くて自分から話題に出して話してしまったほどだ。

あくまで、英語力や今までの経歴などの「私」について聞いてくれた。

「子持ちの母親の面接」ではなく「一人の社会人」としての面接だなと思った。

また、終わりには「あと君の他に四人ほど面接予定なんだよね。なので合否結果は2週間くらいください」と、自分以外に何人受けてるかこっそり教えてくれたのも異色だったと思う。


実際に、面接官の一人は

「うちは子どもがいるからダメですとか、そういう採用の仕方はしない。あくまでその人自身を見ます。赤ちゃんに手がかかるのは仕方ないことだから。その代わり、自分のできる範囲でしっかり働いてくれたらそれでいいから」と言ってくれた。


もちろん、今までの面接だって私を見てくれてはいたのだろうけど、やはりどこかで育児について引っ掛かっていた気がした。それは当然のことだとは思う。だからこそ、あらためて自分自身のことを見てくれていることが無性に嬉しく感じた。


あくまで子どものことを気にしないというのはこの会社の方針なだけかもしれないが、今考えると大手の子会社ということで、人材は豊富であり、たった今人員不足で採用というよりも、余裕があるから今のうちに人を増やして事業拡大を目指そうという求人だったのがあるかもしれないと分析している。

人員がカツカツだから採用しようとなるとどうしてもフルパワーで働ける人を求める。でも今回のように、今は人は足りてるけどもう一人くらいいた方が良いかなというスタンスの採用であればフルパワーでなくても分担してやっていけるということになるので、子持ちだろうがスキルと経歴がある人に入ってもらえればという結果につながったのだと思う。


そして約束通り2週間後。

私は、見事に採用通知を手にした。

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