第11話 雇用形態で夫婦喧嘩
転職活動を始めて気づいたことがある。
それは、昨今では非正規雇用が圧倒的に多いということだ。新卒では原則正社員枠として就活をするわけだが、転職においては正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど雇用形態は多岐に渡る。
非正規雇用が多くなっているというのは度々ニュースでも取り上げられていたので知ってはいたが、いざ自分が転職サイトを見るようになると、それが本当だったと実感する。
そもそも、私が希望している職種である事務職はほとんど正社員募集がなかった。それこそ派遣がほとんどだ。試しにどこの転職サイドでもいいので、職種を「事務」にして検索をかけてみてほしい。そうするともうほとんど派遣会社がヒットする。派遣会社に登録→「派遣社員として夢の大手企業へ!」が圧倒的に多い。なるほど大手企業の事務職は派遣社員を雇用することが多いのかと知る。
私は、新卒と同じノリで正社員雇用ばかりを探していた。だが、そうするとやはり求人数はどんどん減っていく一方だった。
そこで私は、雇用形態については一旦置いて、事務職という点のみで絞ることにした。
雇用形態と職種だったら、職種の方が自分の中で優先順位が高かったからだ。
しかし、この雇用形態をめぐって夫と対立することになった。
「派遣?契約?ないない正社員で探してよちゃんとさ」
「ちゃんとってなに?今時正社員で事務ってなかなかないんだよ」
「それはわかるけど、派遣とか契約なんて打ち切られたら終わりだしそれに」
「それに?」
「ボーナスも給料も低いだろ?ないわー」
「は?」
「そんな不安定な雇用俺は認められない」
もういっぱいいっぱいだった私は一気に頭に血が上った。正社員以外は認めない、それ以外なんて価値がないといったような、馬鹿にしたような夫の顔を思い出すと今でも殴りたくなることがある。
夫のいうことも最もなこともある。
たしかに派遣切りや契約更新なしになればまた無職に逆戻りだ。
でも
「夫くんはわかってない!今、私は悠長に選ぶ側の人間じゃないの!わかる?わかんないよね、保活を丸投げましてきたあなたにはさぁ!どんな形態であろうとまずは就職しないとダメなの!6月までに就職しないと保育園やめなきゃいけなくなるの!今こうして保育園に入れることが決まっていても「子持ちは採用しません」なんて、言われることもあるんだよ!?それが「保育園決まってないけど入社したいです」になったら?それこそ正社員なんて夢のまた夢だよ!だったら今ちゃんと決めて精一杯やるしかないの!学年が上がれば待機児童もいなくなって就活で退園にはならないんだから!」
※地域によります
そう、夫は私の給与の心配と雇用が続くかしか頭にないのだ。てかもう、半分給与のことだった。
選り好みしまくって6月までに決まらなかった場合が一番最悪だということにまるで気づいていない。
もちろん、今後の子育てにおいてお金はあればあるだけ良いし、雇用が切れたらまた就職しなきゃいかないので、夫の言い分は間違えてはいない。
でも、理想論だけでは生活はできない。
しばらくはお互いに言い合いが続き、そもそも事務スキルしかないお前が悪い、うるさいな子持ちでも何も言われない男は楽だな、などと醜い言い争いが続いた。
「雇用形態にこだわって就活が続けばそれだけ世帯収入があなたの給与のみの状態が続くけどいいの?夫くんはお金が一番心配なのよね?失業手当だって一年しかもらえないし、それだって今までの給与と同額ではないけど?それでもいいならいつまでだってのんびり子ども育てながら就活するよ。ああ、保育園は当然退園になるだろうから繋ぎでバイトとかもできないけどね」
今考えたらとんでもない脅し文句を使っているなと反省すべきだが、あの頃の私は必死だった。
夫の金への執着を逆手に取って上記のようなことを言ったのだ。
結局、自分だけの給与で家計を支え続ける方が大変なことだと思い直した夫から、なんとか雇用形態にこだわらなくて良いという了承を得たのだ。
そしてこの言い争いも、後々良い効果を生み出してくれたのであった。
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