第9話 女だけ言われること?
なんとか面接を受けられることになった2社目は、ハローワークで見つけてきた求人だった。
前もって0歳児がいることは伝えていたし、その上でとりあえず面接してみましょうと言ってくれたので、私も安心し切っていた。
が、ここで私は面接官に衝撃的なことを言われることになってしまった。
面接は午前中。場所も家から1駅と近い。
前回の失敗を活かして何とか心を落ち着かせ、ハキハキ話せるようにと意気込む。
「よろしくお願いします」
「はいよろしくねー」
今回受けたのは、税理士事務所だった。
私が簿記の勉強を機に興味を持った業界である。まだ3級だったけれど、これからもっと勉強していこうと思っていた。いや、今も思っている。
面接は前に比べるとスムーズにいった。
面接官は男性二人。
なぜここを志望したのか、子どもがいるが仕事する上でサポートしてくれる人はいるかなど。
全てに対して全力で答えたし、最後の方には面接官の一人にも「うちに来てくれたらめちゃくちゃ頑張ってくれそうですね!」とも言ってもらえて、行けるのでは?と思った。
が、甘かった。もう人の面接官の言葉で、受からないことを悟ってしまったのだ。
「まだ子ども小さいのに無理して働かなくてもいいと思うよ。小さいのだから家にいてあげてもいいのでは」
「はい。じゃあね、これからもポンポンたくさん子供産んでね」
面接が終わり帰る時に言われた言葉。
未だに思い出しては悲しく……いや、もう流石に思い出すことなんてないが。
きっと悪気があったわけではないのは分かってる。偏見になるが、この言葉を発した面接官の方はおそらく50代以上。まだこの方が子どもだった頃は女は専業主婦が普通だったのだろう。そして子どもがたくさんいる家庭が多かったのだろうと思う。だからこそ0歳児を保育園に預けてまで働くのが可哀想に見えたのかもしれない。
実際私は今30代だけど、そんな私の子ども時代ですらまだお母さん=専業主婦がほとんどだった。働いていても正社員ではなくパートに出て、子どもが幼稚園や学校から帰ってくる頃には家にいるという家庭がほとんどだった。
共働きが増えてきても、きっとこういったことを言われるのは女だけなんだろうなと思う。
たくさん産んでね、なんてまさにそうだ。
女だけで妊娠はできないが、産むのは女しかできないのだから。
こう言う言葉をかけられたら、どう返すのが一番良いのか、私は未だにわからない。
もちろんこの面接も落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます