第2話 保育園のタイムリミット

電話を切って、まずは役所に電話をした。

子どもの保育園についてだ。


「はい、××役所です」

「すいません。保育園の件で質問があるのですが」

「どのような内容でしょうか?」

「今春より保育園入園予定だったのですが、会社の倒産により保育事由に変更が生じまして」

「はあ」

「元々4月復帰予定で保育園入園ということでしたがこの場合はどうなりますか」


そう、1話でも書いたが時は保育園争奪戦時代。

保育園入園が決まった時に頂いた書類にこういう記述があった。


『四月中に復帰されない場合、保育園利用は取り消しになる場合がございます』


保活をされている方は分かると思うが、保育園も幼稚園や学校と同じで四月に入園式がある。4月1日時点での年齢でクラスが決まるのだ。

育休制度からするとみんな復帰月に合わせて保育園に入れるものだと、私自身も出産前は思っていた。6月2日に出産したら6月1日に育休が終了し、それに合わせて六月から子どもも保育園に行くものだと。

待機児童問題なんてない地域ならそれが可能だが、都心や子どもが多い地域では問題が発生する。小学校中学校であれば転校という、いわゆる「途中参加」が出来る。その学区に住んでいれば無条件でその学校に通えるのだ。

夏だろうが冬だろうが「〇〇から引っ越してきました、田中です」というように受けれてくれるのだ。


しかし、保育園はそうもいかない。保育園には定員があるからだ。

そしてその定員は四月で一旦リセットされる。0歳児であれば下に誰もいないので定員人数分すべて枠が空くし、1歳児以上であれば定員人数から前年からの持ち上がりの子たちの人数を引いた分の枠が出来る。

そして4月入園時点でこれがすべて埋まってしまうと、今度はキャンセル待ち状態になるのだが滅多にそんなことは起きないと思った方がいい。

だからこそ世のお母さんたちは必死に保活に励み、4月入園を目指すのだ。


「そうですね。規則では求職中に変更となると3か月が期限ですから少なくとも6月までに決めいただかないと」

「6月……ですか」

「はい」


役所との電話を切り、私はふうっとため息を吐いた。

この時点でもう2月。あと4ヶ月で職を決めないといけない。

決まるのか? 新卒の時、ちょうど就職氷河期を経験して卒業ギリギリまで決まらなかったことを思い出し、私は絶望的な気持ちになった。

でも、やるしかない。

4ヶ月で決めないといけない。


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