妖怪の養子縁組!

ちびまるフォイ

河童「今日から家族です」

「ということで、うちに妖怪が来ることになったから」


「はああ!?」


実家に帰るなり両親が爆弾発言をしたものだからスプーンを落とした。


「だってほら、うちって人が誰もいないじゃない?

 身寄りのない妖怪を引き取るくらいいいじゃない」


「そりゃあんまり実家には帰んないけどさ」


「もう結んじゃったし」

「早いな!!」


数日後、とんとん拍子で河童がやってきた。


いくら実の息子が実家に帰らないからといって

寂しさの勢いで妖怪と養子縁組を結ぶなんて信じられない。


「はじめまして、河童です。息子だと思ってください」


「息子は俺だよ!!」


河童は礼儀ただしく、素直で親切。

およそ憎める部分がなかった。


「ええ、実はぼく昔から人間には石を投げられたり……。

 そんな扱いばかりだったので優しくなれたんです」


「つらい過去があるのね、よよよ……」


「河童あるあるなエピソードだけどな」


「うるさいわね。あんた、池に沈めるわよ」


「実の息子を!?」


素直で優等生の河童に両親はだんだんと入れ込むようになり、

養子縁組を結んだことを心から喜んでいた。


……のはいいが、俺の居場所はどんどん追いやられていた。


「この部屋、あの子の部屋だけど河童ちゃんが使っていいわ。

 あと、あの子の全財産もあなたにあげるわ」


「ありがとうございます」


「ええええ! ちょっ……待ってよ!」


「いいじゃない。どうせ実家にはさして戻らないわけだし」


「そういう問題じゃない!」


きっとそんなつもりはないんだろうが、俺には河童が侵略者に見えてしょうがない。

気が付けば立場が逆転して俺の家なのに、他人の家のような違和感がただよった。


この家では俺がいることの方が「おかしいこと」になってしまった。


「ダメだ……別の場所へ行こう」


これ以上は耐えられなくなった。

思いついたのは「養子縁組」だった。


「俺も河童みたいに別の生物と養子縁組を結べば

 きっと溶け込んで新しい家族をつくることができるはずだ!」


今度は、人間の家庭に妖怪が入るのではなく妖怪の家庭に人間が入る。

そうなれば河童と同じように……。


「ふふふふ、今度は俺が侵略者になるのだ」


希望が来ていたので養子縁組を結び、新しい家族のもとにむかった。


「はじめまして、養子縁組を結んだ者です」


「ああ、待っていたよ」


妖怪たちは俺を喜んで迎え入れた。


「それじゃ床掃除からはじめてもらおうかな。

 それが終わったらトイレ掃除、そのあとは……」


「ちょ、ちょっと待ってください! なんですかその待遇!?

 ほら、俺人間ですよ!? 異文化でしょ!?

 もっとこう……お客様的に扱ってもいいじゃないですか!?」


それを聞いた家族はおおいに笑った。



「ははは、君は私たちと同じぬらりひょんじゃないか。

 同じ妖怪同士、立場は同じだよ」



俺はそこで初めて自分の本当の種族を知った。

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