第7話 素直になれないようで

教室に着いたのは、昼休みが終わる寸前といった所で、間もなく授業の始まりを告げる鐘が鳴った。午後の授業も、当然といえば当然であるが魔法に関わるものばかりだ。


基本的に魔法を一般人が使うことは認められておらず、できるだけそれに関わる情報は伏せてある。それ故に魔法について学ぶことができるのは国内ではここだけとなっており、他の学問を学ぶ必要は無いのだ。


だからといって全くやらなくていいという訳ではなく、一応週に数回程度は英語、国語に地理、歴史、公民の社会科がある。


「ところでだけど、夜縫君はこの後神咲先生に用があるのよね?」


後ろから三崎さんが声をかけてくる。俺はそういった素振りなど一度も見せた覚えはないが、既に確信しているようだ。


「確かに、放課後少し訪ねてみようとは思っていたけど……三崎さんもそのつもりで?」


「まさか、確認を取っただけよ。特に意味なんて無いわ」


何だか含みのある言い方ではあるが、姉妹間でのことにはあまり触れないでおこう。姉も妹も取っ付き難い性格してるからな。


「……」


三崎さんが俺のことをじっと睨んでいる。何かも見透かしているような冷たい目をしていたが、やがて、やれやれといった顔で笑う。


「本当に聞いてみただけよ。ただ……あの人には礼を言わなきゃと思ってね」


「はあ、そうか」


憂うように窓から外を眺めて言う三崎さんに、適当な相槌を打って席を立つ。メッセージ性の強い口調で、何かを訴えてくるようではあるが、それも伝わらなければ意味が無い。


「じゃあ俺はそろそろ行くけど、三崎さんはこれからどうする?」


「それを私に聞くのかしら? 夜縫君は頭が良い割には気が利かないのね」


あれ? 俺の知っている三崎さんはこんな嫌味っぽいこと言わない筈だが……どうやら彼女は、思っていたよりも拗らせているようだ。ここまで面倒臭いと、素直に従いたくなくなるのは必然だろう。


「お姉ちゃんに会いたいけど、1人じゃ恥ずかしいなんてことは……」


「有り得ないわ」


「あっそう」


当人は平然とした顔でいるが、食い気味に来た時点で確定事項だ。重度のシスコンである三崎さんは、姉と話すきっかけに俺を利用しようと考えいている。用もないのに話すのは、相手に悟られてしまうとでも思っているのだろうか。


などとあれこれ考えて真意を探っていたが、これ以上無駄に時間を費やす訳にはいかないという結論に至った。


「まあ、神咲先生は何考えてるのか理解できないから、出来れば三崎さんにも来て欲しいなあ」


「言質は取ったわ。さあ早く行きましょう」


驚く程に切り替えが早い三崎さんは、もうさっさと教室の扉を開けて出ていってしまった。子供かと思うくらいのはしゃぎようだ。


後を追うように少し小走りになるが、案の定、三崎さんは教室を出てすぐのところで待っていた。今までの笑顔とは違う、無邪気さが垣間見える屈託のない笑顔だった。


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1350ccの魔導書さえあれば何とかなりそうです @morsu

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