第2話 コンビ結成

今日からは高校生活が始まる。

こんな僕にもドキドキするんだなと思った。

卒業式で言われた言葉が一向に頭から離れない。丁重にお断りはした。まず、根底に言うタイミングが悪すぎる。なぜ別れの卒業式に新たなる出会いを求めにいったのか皆目検討もつかん。断った後、琉斗は「えーマジか!!断られたんやったらしゃーれへんわ」と案外軽い感じで言ってきたのだった。

初対面であったせいか、何故僕を誘ってきたのかも聞けずに帰ってしまった。

まぁ、忘れよう。

誘ってくれたのは嬉しかったし、あんなにも心の揺るいだ事はないが、お笑い業界は甘くないのは知っている。


校舎に繋がる通学路の道に一面の桜の橋が架かっているようだった。ここ、北高に通う事になる。また三年間面白くないと思わなければならないのかと、少し気分が落ちた。

校舎に入り自分の下駄箱の扉あけると、紙が入っていた。

なんだと思い見てみると「佐藤隆一さんへ。」と書いてある。

初日からラブレター!!!あり得ん。中身を恐る恐る開けると、「おんなじ、学校やったな!俺たちコンビ組まへん?」

静かに紙を閉じ破り捨てた。

嘘だ。同じ学校だったなんて。気付かなかった。「辛い三年間の幕開けだ。」心の中でぽっと呟いた


こうなれば本人に直接言ってやるしかない。人の夢をとやかくは言いたくないがいち、お笑いファンとして言ってやりたかった。入学式が終わり1-3組の教室に向かった。

「お?来たなーまっとたでー」とにやけた顔で言い出した。

とりあえず、学校が終われば指定した喫茶店に来いと言いその場を離れた。


学校が終わり喫茶店「マキ」に行った。ここの店長の牧野さんには小さい頃から近所という事もありお世話になっている。

待つこと15分、琉斗が来た。

「すまん!少し待った?」別にいいといって座らせた。

「おっちゃん!俺ミクスジュース水割りで!!」

ミックスされたものに水で割るってどういう事なのかと思ったが本題に入ることにした。

「悪がもう、俺を誘うのをやめてくれないか?」

「なんでや?」

「断るのが面倒だから」

「でも、俺お前センスあると思うて誘っとんやで。」僕は一瞬止まってしまったが、首を振り話に集中した。

「なんで僕がセンスあると思ったの?」

「お前、ネットの大喜利サイトに投稿しとったやろ」

「それ読んでたらおもろすぎて、おもろすぎて。友達にこいつなんて奴やて聞いたら佐藤隆一て言われたわけや。」

「なんで、俺とわかった?」

大喜利サイトの名前は実名ではなかったのだが。

「電車乗っとる時にこそっと見えたねん」

「昭和ぽい言葉の必殺技を叫んでください。てのでな!!お前、かたーーーぱっとぅ!!!て投稿してたやろ。」

にやけながら言ってきた。

「なかなか、ええセンスしとるな思ってな!お前しかおらんと思たんや。」

楽しそうに話している琉斗に対し

「そうやって言ってもらえるのは嬉しいけど、正直それで食っていけると思ってる?」

「いける。」

なんの変化もない返答が来たため少し驚いた。

「芸人のほとんどがバイト暮らしでテレビに出てる人はほんまに一部だからな。」

「そんなんわかってるよー。」

「じゃなんで?」

「俺もともと大阪出身やねん。転校繰り返してて、友達できんまま学校変わったりもした。そんな時、漫才見んねん。漫才て絶対相方がおらな成立せいへんやろ。おれが考えるに二人おらなできれへんのて漫才だけやろ。俺もそんな相方が欲しい思ったのがきっかけやな。」今までにないくらいに真剣な口調で話していた。

「こんな俺を支えてくれたのがお笑いやねん。クラスの人気者になる方法がそこにはあった。それの恩返しみたいなところあるなぁ。」


「大体わかった。だが俺は無理だ。」

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