笑う門には福来る
アーネスト 坂本
第1話 卒業式
俺は一度も笑ったことはない。
嘘だと思う奴も多いだろうが正確に言えば人前で笑った事はない。笑顔は作るもの、それは円滑に生活するための手段に過ぎなかった。
友達と心の底から笑い合ったことはない。
ただ、面白くないのだ。小学校の頃の休み時間でみられるドッチボールで最後にボールを触ったヤツが教室に持ってかえるといって、ボールを当て合うドッチボール第二ラウンド始まりだしケタケタ笑いだすが何が面白いのか全くわからなかった。
中学生になると男子たちにある下ネタトークに入っていたが全くといって心の底から笑えなかった。
「オナニーてさ1日10回までして、意識なくしてパンツおろしたまま倒れてて、親に起こされた。」とか、クラスの可愛いくてスタイルがいい子を見て「おい、マジであの子毎日おかずとしてお世話になってるわ~てか、皆のおかずだろ、唐揚げだろあれ皆好きだろ。」と笑いながら言う奴にも何にも笑えなかった。
こんな僕にもお笑いは好きだ。漫才、コント、ものまね、バラエティーのトーク番組は子供の頃から心から笑えたのだ。
芸人の凄い所は番組やテレビなどでは地位的には俳優や芸能人に比べれば低いのだが、誰も真似の出来ない物を世に届けるその技術はとてつもない。漫才などは特にそうだ。センターマイク一本で全ての情景を写し出す。相手にその空間に引きずり込む喋りはまさに唯一無二といっていいほどの「芸」である。
しかし、自分はこの業界に飛び込もうとは思わない。皆がその「芸」で生活ができているわけではないのはわかっているからだ。心の底から笑えない自分が相手に何を言えば笑ってもらえるなんてわからないのだ。だから自分はやらないのである。
中学校生活も今日で最後。
面白くないこいつらとはおさらばである。
式典が終わり廊下で皆が騒いでる間、自分は教室に戻り帰る支度をしようとすると、「おい!お前?佐藤隆一やろ」
後ろをむくと見たことあるような、ないような男が、「初めまして。斎藤琉斗です。」
「卒業式で初めまして。てなんやねん。」
「俺はお前をずっと探していたんだぞ」
「ずっとのわりにわ三年あったけど!?」
「お前に言いたい事あんねん」そいつは関西弁訛りが少し強い。
「なに?」
「俺とトンビうまへん?」
「新種のバイオテクノロジーだすな。」
「俺とコンビニ営めへん?」
「店長二人おったら潰れるわ。ていうかチェーンがほとんどやないか。」
「俺とゾンビに噛まれへん?」
「人生お前と最後過ごすのだけはごめん。てか、何が言いたいん!?」
「やっぱりや。思うた通りやで。」琉斗は言った。「俺とコンビ組まへん?」
これが、斎藤琉斗との出会いだった。
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