79 ディストリオンコア

 啖呵を切ったものの、後先考えずに突っ込むような愚を誠は犯さなかった。ミリアが制止を求めた結果でもある。

 大丈夫、落ち着いていると意識を返す。

 

 ヴィクティムが推測した通り、今の誠とミリアの同調は過去最高だった。生み出されるエーテルの出力はヴィクティムの定格を超えている。オービットパッケージによる機体性能の底上げが無ければ自分のエーテルで自壊するかもしれない程の出力。

 だが敵手も尋常ではない。クイーンは通常型の2000倍と考えられてきた。だが今いるクイーンはそれを上回っている。それが如何なる理由による物か。怒り狂うよりも冷静さを残していたミリアはそれに気付くことが出来た。

 

 取り込んでいる。周囲のASIDからエーテルリアクターを取り込んでそれを己の物にしている。そして悪い事にまだ残骸となっているASIDは数多い。その全てを吸収すれば今のヴィクティムを上回れる。

 取り込んでいるのはASIDだけではない。アシッドフレームも何もかもを取り込んで更に巨大に姿を変えていく。

 

 その姿は最早醜い。貪欲に何をしてでも生き延びる。そんな生き方が滲み出ていた。

 

 熱烈な感情を向けているのは誠だけではない。クイーンも、ヴィクティムを強く意識していた。過去に自身を滅ぼしかけた怨敵。この地球上で唯一、ASIDではない意思を持つ機械。憎い。だが愛している。その二律背反。滅ぼしたい。手に入れたい。

 

 その狂気。三月兎の名に恥じぬ狂乱は槍衾の様な攻撃として発露する。無数の触手がヴィクティムへと延びる。

 白い機影が消える。爆発的な加速が一瞬で機体をクイーンの死角に機体を運んだのだ。すかさずヴィクターレイでの射撃、否砲撃。エーテルカノン一発に匹敵する火力が立て続けに叩き込まれる。戦場に響く金属の悲鳴。それはクイーンの苦悶の声。本体に初めて与えた有効打だ。

 それを嫌って再び触手を振るう。その先端は振動兵器。掠めればヴィクティムでも無傷では済まない。だがそれも当たればの話。翻ったヴィクターレイについた振動刃が触手を振動兵器の根元から刈り取っていた。再びの悲鳴。我武者羅に振るわれる触手を飛び退いて避ける。その間にもエーテルを打ちながら触手の数を減らすことを忘れない。

 

 圧倒的だった。過去に見ない程に冷徹に、ヴィクティムはクイーンを削っていく。誠の激情による攻撃性をミリアの冷静さが導いている。ここに来て二人はドライバーとして更なる飛躍を見せる。

 決して無理をせず、だが確実に。一か所ずつ磨り潰していく。誠の言葉。一欠けらたりとも残さないという滅殺の意思。尽くを滅ぼすというのは冗談でも何でもない。雫がいない世界でこんな化け物が存在している。それが許容できない。

 胴体から生えた触手を全て刈り尽くす。そこで誠は攻め手を緩めた。情けなど間違ってもあり得ない。ただ追い詰められたクイーンがどんな予想外な手を打ってくるのか。それに即応するための一歩引いた姿勢。

 

 予感は正しかった。近接武装であった触手では歯が立たない。ならば次は砲撃戦だ。ハリネズミの様に全身から砲塔を生やして一斉に砲撃する。だがそこには既にヴィクティムの姿はない。オービットパッケージによる加速は機体にも強いストレスを与えるが、刹那で音速にまで達する。この近距離で追いきれるものではない。

 

「どうした?」


 誠の声は比較的冷静だった。それは怒りが静まったのではなくその逆。ただ破裂寸前の風船のように崩壊を前提とした静寂だ。

 

「ドッペルはもっと強かったぞ? あのジェリーフィッシュでさえ、当てるための工夫をしてきた。なのにクイーンのお前は工夫も何もなくただ一気にぶっ放すだけか? 舐めるなよ」


 誠たちが知る事は出来ないが、このクイーンはまだ生まれ立てと言ってもいい。生まれ落ちてからわずか二年。ただ自分たち以外への敵愾心だけで動いている獣に近い。――これまで誠が戦ってきた古参とも言えるジェネラルタイプとは圧倒的に経験が不足している。それでもASID特有の驚異的な学習と対応で進歩している。もしも戦いがもう三年後だったならば。ここまで誠も有利に戦いを進めることが出来なかっただろう。

 

 進退窮まったと言える。そんな中でクイーンの取った行動は――。

 

「む」

「逃げる気だ!」


 逃走、だった。まさかの選択に誠も一瞬動きが止まった。その隙に少しでも遠くへと逃げようとして。

 

『逃がさない』


 何時の間にか回り込んでいた玲愛のノマスカスが手にした刃を一閃させる。

 ノマスカス本体に匹敵する脚部の一本を奪い、その場で蹲った。

 

『全く……漸く動けるようになったと思ったのに逃げ出すなんて許せない』

『全く、はこっちのセリフですよ! 完全に攻撃した後はボクの援護にお任せ状態ですよねそれ!』


 エーテルを使い切って動けなくなっていたノマスカス。エーテルリアクターの供給によって動けるようになるとほぼ同時に再びの全力攻撃。そして一瞬で動けなくなるというコントの様な一幕を広げていた。その間襲ってくる残存ASIDやら触手やらはリサの狙撃にお任せだ。ノマスカスが全く動かないので何も気にすることなくリサは狙撃に集中できた。

 

 足を一本切り落とされてバランスを崩して転倒するクイーン。そこに追い打ちをかける様にヴィクティムが別の足を切り裂き、砲撃の追撃。一瞬で足が一本だけになったクイーンはもう起き上がることも出来ない。

 逃走手段さえ封じられたクイーンは叫ぶ。それは配下のASIDへの指令。広く展開して浮遊都市を狙おうとしていた個体がクイーンの元へと集まる。近場にいたジェネラルタイプがヴィクティムへと飛びかかる。

 

 誠は舌打ちしながらヴィクターレイを向ける。砲撃。一瞬でASIDを貫通して撃破するが、距離が近かった。数時間前に食らった地下での爆発程ではないが、エーテルリアクターの自爆はヴィクティムにもそれなりの影響を与える。視覚面が殆どではあるが機体も僅かに損傷した。

 

「自爆……?」

「これ、ネストの奴と同じ……距離を離して撃破しないと!」


 今のヴィクティムの速度を以てすれば距離を取るのは難しくない。だがそれはクイーンから離れることを意味する。それを狙っていたのかと歯噛みした。更には、ヴィクティムが撃破した個体の吸収。おまけとばかりにノマスカスとハーモニアスにも触手を伸ばしていた。そのフォローに走る事さえ計算されている気がした。

 そしてついには戦場からASIDが消える。クイーンの指令が絶対であることがよく分かる。自爆か餌か。そのどちらかしか待っていないというのに全てがクイーンへと殺到したのだ。個を持つ個体がクイーンだけであることで生じた現象とも言える。

 同族全てを食らったクイーンは新たな姿へと変貌する。失われた足を補うのは巨大な四対の翼。全く浮く姿がイメージできない怪物は空を飛ぶ。

 

「この短時間で進化したのか……?」


 計八枚の羽根が震える。それによって生じるスピードはヴィクティムとほぼ同等。遥かに上回る巨体で音速越えというのは何かの冗談のようだった。


「二人は下がってて!」


 ミリアが叫ぶ。空を、増してこれほどの高速で飛ばれてはノマスカスに出来る事は完全にない。良くも悪くも近接戦闘に活路を見出す機体だ。

 リサのハーモニアスならば砲撃での支援が出来るだろう。だがそれ以上に、クイーンの流れ弾で撃破される可能性がある以上、戦場に長居はさせられない。

 

 ヴィクティム自身も空に飛びあがる。塵で蓋をされた僅か高度600メートルの狭い空。その中を競い合うように二機が飛ぶ。

 力強い加速で後ろからクイーンに追いつく。余裕のつもりなのか。クイーンの巨大な本体部から生える通常サイズの人型は腕組みをしていた。ヴィクティムに視線を向け、ニヤリと笑みを作る。更なる爆発的な加速。

 ヴィクティムも負けてはいない。更に速度を上げて追いつく。

 

《現在スラスター出力最大。機動格闘戦を行うには危険な速度です》

「ああ。だけど相手はそれをお望みみたいだ」


 巨体から伸びてくる触手。その全ての戦端がハーモニックレイザーに近い振動兵器の刃だと誠も気付いていた。それだけではない。触手の隙間を埋める様に伸びてきたのは砲塔。先ほどまでの焼き直しとばかりにクイーンは攻撃を開始する。これだけの速度の中で回避機動を行う。それは少しでも操作を誤ればヴィクティムの機体を自壊させかねない程危険な行為だ。

 リスクを承知した上で誠はそれを行う。

 急降下からの機体の引き上げ。一瞬の急制動、加速。モニタに映る景色が一瞬たりとも同じ場所を移すことはない。自身の位置を見失う程に複雑な機動。

 洗濯機の中に放り込まれた洗濯物の様な気分になりながら、ミリアは機体の腕を動かす。それによって重心バランスが変わりヴィクティムの機動にも影響が出る。ミリアの意思を汲みとって誠が微調整。

 ヴィクターレイ。その砲口が火を噴いた。触手を無視して翼狙い。原理は分からないが、翼が無ければ飛べないことくらいは予想がついた。クイーンは翼を失う事を厭うように触手を盾にした。狙い目はここかと決断する。

 

「誠さん。接近してください」


 並走状態での打ち合いから更に機体を寄せる。それは文字通りの格闘戦を行うという決意表明に他ならない。

 

「翼を毟ればクイーンは落ちます」


 断言するかのような言葉に誠は笑みを浮かべる。危険を承知で殴りかかるスタイルと言うのは嫌いではない。更に言うのならば、悪い賭けではない。相手に密着してしまえば砲撃は止む。

 

 誠はヴィクティムを変形させる。最大加速形態。全推進器を一方向に集中させ、最速状態に持っていく。今まで以上の速度で一瞬のうちにクイーンの視界から消え去る。塵の膜ギリギリまでの上昇から人型に戻りながらの急降下。狙うはマーチヘアと呼んでいたASIDの上半身。

 ミリアも誠の機動に応える。ヴィクターレイを近接モードに。銃剣状の武装。その刃が鈍く煌めく。クイーンが気が付いた。目を剥いたように見えたのは目の錯覚か。猛禽類の様に舞い降りたヴィクティムはその勢いのままヴィクターレイを振り下ろす。翼に纏ったクイーンのエーテルコーティングが振動波を流そうとする。だがそれよりも早くヴィクティムのエーテルがエーテルコーティングを切り裂く。防ぐ物が何も無くなった翼はヴィクターレイの一刀で一枚が切り裂かれる。金属質の悲鳴が響き渡った。

 

「だからいつも言っているだろう……耳障りなんだよ、お前らの声は!」


 急降下の勢いのままクイーンを通り過ぎる。巨体を目隠しに、急上昇。続けざまに反対側に伸びる翼の一つを切り上げて地面に落とす。一瞬のうちに二枚の翼を失ったクイーンは苦悶の声を上げている。目に見えて速度が落ちている。そうなればヴィクティムにも余裕が出来る。砲撃で、斬撃で。更に二枚の翼を奪う。半数を失ったクイーンは安定した飛行もおぼつかない様だった。徐々に高度を下げている。

 焦ったようにマーチヘアだった上半身が周囲を見渡す。その仕草に誠はいら立ちの籠った声を投げつける。

 

「どこへ行こうとしている?」


 ヴィクティムが翼の一枚に手をかけた。握りしめ、足はクイーンの胴体を蹴る。全身のスラスターを使って一気に機体を錐もみさせながら上昇する。当然、その動きに翼も巻き込まれた。捻じりきられたのは他の攻撃による喪失よりもひときわ強い苦痛だったのか。長い悲鳴が響く。

 遂にクイーンが飛行できなくなった。地面に不時着し、転がり、あちこちを欠落させて漸く止まる。ボロボロの状態でクイーンは一目散に逃げ出そうとして、ヴィクティムに回り込まれた。

 

「今度は絶対に逃がさない」


 退路も無いと悟ったクイーンの行動は更なる己の強化。亀の様な甲羅を生み出し全身を覆う。最早それは球体と言ってもいい。殻に閉じこもった姿はこの星の支配者だった矜持など欠片も見えない。ただ死にたくないという単純な渇望による形態だった。

 

 こんな奴のせいで自分たちは奪われ続けてきたのかと誠の内にこれまで以上の怒りが生まれる。こんな情けない姿を晒している奴のせいで自分たちは滅ぼされかけたのかと。人類の大半を死滅させたクイーンとこのクイーンは別の個体だ。だが誠たちにはそんなことは知る由も無い。

 

 ヴィクターレイを無造作に撃つ。見た目通りに強固な外殻はその砲撃をはじいて耐えた。頑強さだけは相応にあるらしいと誠は鼻を鳴らす。これを削りきるのは骨が折れそうだと思った所でヴィクティムから警告が入る。

 

《クイーンのリアクター出力上昇を確認。どうやらこれは繭の様です》

「繭だと?」


 己の躯体を劇的に変化させるための工場とでも言うべきか。クイーンは更なる進化を己に促そうとしているらしい。だがそれを待つ義理は誠にはない。そうなる前に繭諸共消し飛ばせばいいのだから。


 ヴィクターレイで砲撃を加える。その結果を見て誠は舌打ちした。複層構造の外殻。以前にヴィクティムがトータスカタパルトを討つ時に使用したへヴィアーマーと同様の原理だ。エーテルコーティングの積層によって防御力を飛躍的に高める。更に一度開けた穴も徐々に修復されていく。幾ら動かないカカシ同然の的とは言ってもこれを突き破るのは容易ではない。

 穿った穴にヴィクターレイを突っ込む。刀身の高速振動が穴を削り取り、更に奥まで貫通させるように立て続けの砲撃。ある程度の所でヴィクターレイを抜く。エーテルコーティングを侵食して、武装を乗っ取ろうとしている気配を感じたからだ。今の一連の攻撃で突き進めたのは僅か。予想以上の防御能力だった。

 

 これを突き破る手段はそう多くはない。エーテルハイメガカノンがあればよかったのだが、あれは残念なことにオービットパッケージ装備時には対応していない。メルティングインパクターも同様だ。前者でも再生速度を上回っての突破は難しいだろうし、後者も別の層のコーティングに熱を止められてしまっただろう。

 

 切れる手札は二つ。トーチャーペネトゥレイト。だがこれの使用は躊躇われる。使用後の影響が未だに不明瞭であることに加え、そもそも使用自体に忌避感がある。安全だと言われてもあの様な出来事が再びあったらと思えば最後の最後まで手を出したいとは思えない。ならば残るは一つ。その解に誠とミリア同時に辿り着く。

 

《ドライバー二名の承認を確認。ディストリオンコア。発射準備。AEM開封》


 亜空間から長大な砲身を持つ武装が姿を現す。左腕を包むように装着される。

 実際の所、この武装自体はそう珍しい物では無い。言ってしまえばレールガンだ。速度効率が段違いで音速の三十倍というぶっ飛んだ初速だがそれだけである。もっと言うと、オプション有で地球の重力を振り切れるオービットパッケージの最高速度よりも遅い。故に特別なのはその撃ちだす弾丸の方だ。

 

 エキゾチックマテリアル。負のエネルギーと質量を持つ理論上でしか存在しないとされていた物体。だがヴィクティムをはじめとするエーテルリアクター搭載機にはより重大な意味を持つ性質がある。

 この物体は、一切のエーテルになじまない。どれだけ密度が高く、純度の高いエーテルであろうと触れれば消し飛ばす。無論、体積に応じてその限度はあるが――この人の拳よりも小さいサイズでさえ、ヴィクティムのエーテルに触れれば経路をたどってRERを再稼働不能にまで追い込む。究極の対エーテル兵器と言える。故にAEM、AntiEtherMaterial。

 

 もしもASID侵攻前の地球に向けて撃てば、一瞬で今彼らがいるような枯れた大地へと変貌させることが出来るだろう。人がエーテルを持つように、星も持っている。その全てを奪えば星は死んだも同然だ。戦略的に考えると致命的な程の欠点である。

 

 ヴィクティムの亜空間。その最大の存在理由はこのエキゾチックマテリアルを封印するためにあるのではないかとさえ誠には思える。六百年前に使えなかったのも道理であった。クイーンを倒した結果がこの地球では敗北に等しい。

 だが今使う。もう既にこれ以上悪くなりようはないというどうしようもない理由もあった。

 

 トリガーをミリアが握る。どこを狙っても関係が無い。相手のエーテルにさえ接触してしまえば相手のエーテルリアクターを破壊して終わる。本来ならば、と言う但し書きが付くが。

 大量のASIDの残骸を吸収したクイーンは恐らく体内に複数のリアクターを持っている。その中でもメインの一つを打ち抜かなければこの戦いは終わらないだろう。

 

 ディストリオンコアのもう一つの欠点。これが実弾兵器と言う点。

 残弾があるのだ。残り五発。これを抜かせば四発で弾切れとなる。外すわけには行かない。

 

《データ通信……完了。浮遊都市の優美香嬢より敵構造推測図が転送されてきました。同時にリサ嬢より狙撃ポイントの指示が》

「ここから通信が届くのか……?」


 大分浮遊都市からは離れたはずだった。地平線の向こうに消えたアークと通信する手段は無いはずだ。中継器が無ければ。

 

《本艦が中継しました。最後の最後で一つ仕事が出来て幸いです》


 置き去りにしてきたネイルが浮遊都市との通信を中継できる位置まで接近していたらしい。一人と一艦からの援護に誠は感謝する。

 

 メインのリアクターを貫く位置は中心から右に2度、下に5度銃口をずらした地点!

 

「いけっミリア!」

「んっ!」


 小さな頷きと同時、ディストリオンコアの銃口から一発の弾丸が放たれる。全身のスラスターが一瞬輝き、衝撃を吸収する。

 弾丸は螺旋を描き。周囲のエーテルを消滅させて、クイーンの甲殻に突き刺さった。装甲は自身の運動エネルギーで。エーテルは自身の特性で。それぞれ無力化する。弾丸は物理的な干渉を受けて真っ直ぐは進まない。にも拘らず、弾丸はエーテルリアクターに真っ直ぐ進んでいく。障害物越しの狙撃のコツを教えたのはリサだ。雑談の中で交わした言葉をミリアはしっかりと覚えていた。それがリサの指示したポイントを的確になぞっていく。

 エーテルリアクターにAEMが突き刺さる。関連するすべてのエーテル機関に不可視の衝撃が走った。急速にクイーンの機体から輝きが失われていく。

 

 ――そんな中でも動く存在があった。

 

 マーチヘアだ。自前のエーテルリアクターだけを切り離しギリギリのところで脱出したらしい。一番最初に遭遇した時の様な姿になり、方々の体で逃げ出そうとする。その背中に、投擲したヴィクターレイが突き刺さる。腹部から伸びた刀身に信じられないという様な視線を向けて、首を百八十度回す。投擲した姿勢のままのヴィクティムと視線が合った。

 そのまま、エーテルリアクターが爆散する。

 

 マーチヘアは、クイーンは。最後には笑みを浮かべる事は無く、この地球上から消え去った。

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