74 人類の切り札

 一本の槍が獲物を見据える。蜂型のASID。その胴体目掛けてその四分の一程度の大きさしかない槍の穂先が突き進む。蜂型の針とランス。その二つのサイズはよく似ており、機能面でも然程差は無いと言える。むしろ、蜂型ASID自体がエーテルリアクター内蔵型のランスと言っても差支えの無い存在だ。

 だが、致命的な違いはそのサイズ。針だけでランスと同等の蜂型はどうしても動きがランスよりも遅い。

 制動。吶喊。直角ターン。垂直上昇降下。ランスは縦横無尽に空を駆け巡る。その動きは肉眼で追い切れない程に早い。

 従来の二機でも十分な脅威だった。それが百を数えたらどうなるか。最早消しゴムで削るように蜂型が次々と打ち落とされていく。その制御の全てをミリアが一人で行っている。厳密には、ヴィクティムと同調しているミリアが行っている。

 

 流石に人間一人で百を超える飛翔体のリアルタイムコントロールは手に余る。だが、高度なAIであるヴィクティム。その演算装置を介すことが出来れば話は別だ。

 視界の端を一瞬たりとも止まることなく駆け巡っていくランスを尻目に、誠は再びエーテルハイメガカノンを構える。

 

「第三射。行くぞ!」

《了解》


 シリンダーを交換する。残り十七発。高速で突き進むネイルの上からの狙撃。悪条件が重なっている。リサならば苦も無く当てるのだろうと考えると誠の口元に笑みが浮かんだ。あの狙撃の名手は本当に並はずれている。

 何しろ一度レクチャーを受けたが完全に感覚派だったのだ、リサは。当たると思ったら当たりますし、当たらないと思ったら当たりませんと言われた時は開いた口が塞がらなかった。

 そんな楽しい思い出を思い出して少しだけ肩の力を抜いて第三射。含有するエーテル量が違いすぎる。最早可愛そうになるレベルでヴィクティムはトータスカタパルトを打ち抜いて行く。

 

《トータスカタパルト残数六。高圧縮エーテルシリンダー残り十》

《前方に高出力エーテルリアクター反応を確認。これは……》


 ネイルのマナから送られてきた通信よりも先に誠も気付いていた。見逃すはずもない。ジェリーフィッシュと呼称した飛行型ASID。そしてそのサイズにも劣らない巨大な人型。

 

《アルテミスシステムにギガンテスギア……旧時代の切り札。やはり、奪われていましたか》


 どこか、苦々しさを感じさせるマナの声。そこにあるのは諦観めいた悲しみ。そうではないかと思っていた。そうであって欲しくないと願っていた。そんな想いが滲み出ている。

 

《既に交戦した経験があると思いますが、ジェリーフィッシュと呼称されている個体の元は旧時代に人類が衛星軌道に配置した十二の迎撃用プラットフォーム。宙間戦闘用アシッドフレームと自身も高出力のエーテルコーティングとエーテルカノンで武装した人類の切り札でした》


 そして、と人型のデータが送られてくる。外見は多少変わっているが各所に共通点が見られた。

 

《ギガンテスギア。大型化することでヴィクティムの機能を再現しようとした機体です。気を付けてください。あの二機には連携を前提とした機能が――》

「ああ、分かってる。見えているよ!」


 その言葉を最後まで聞く必要はなかった。ジェリーフィッシュが変形していく姿が見える。初見で傘に例えた様に、それが折り畳まれる光景を幻視した。巨人の手持ち火器として丁度いいサイズになったジェリーフィッシュを構えるギガンテスギア。こうしてみると巨大な飛行型ASIDがまるで手持ちサイズの様に思えてくるから不思議だ。その先端に光が集っていく。二機のエーテルリアクターを直結した出力は、平時のヴィクティムにも劣らない。

 あれだけの出力。ネイルであっても耐えきれないだろう。

 

「やら、せるかああ!」


 先手を打つ。シリンダー内のエーテルを一瞬で解放。元々チャージが済んでいる分、ヴィクティムの方が発射が早い。

 これまでにトータスカタパルトを一撃の元に下してきた砲撃。一度閉じたジェリーフィッシュがゆっくりと開いていく。その内部に展開されたのは嘗て苦しめられたエーテルを拡散させるフィールド。傘の表面を水滴が流れる様にエーテルハイメガカノンの攻撃が受け流されていく。

 予想外の防御に誠は顔を顰める。この一撃で倒せるとは思っていなかったが相応のダメージは見込めると思っていた。大きな計算違いだった。現状使用できる武装の中で最大の火力を持つエーテルハイメガカノンが無力化されたとなると、砲撃戦では勝ち目は薄い。何故ならば。

 

《敵砲撃来ます》

《垂直降下!》


 ネイルが地面に突き刺さると錯覚するほどの角度で急降下する。こちらには、あれだけの砲撃を受け流す盾は無い。決死のダイビングは辛うじて相手のエーテルカノンの射線上から逃れた。それだけの機動を取って尚ギリギリの回避。余り何度も繰り返したいとは思えなかった。

 地表の塵を巻き上げながらネイルが再び上昇する。地表近くでは地上のASIDの攻撃を受ける可能性もあるし、回避をする為には位置エネルギーを運動エネルギーに変えないとネイルの巨体では必要な速度を得られない。

 ミリアは未だにファランクス――無数のランスで周囲のASIDを殲滅している。気を抜けば蜂型の攻撃でこちらの武装が破壊される恐れがあった。その為ミリアにはそこに専念してもらうしかない。

 

 一瞬の逡巡の後、決断した。脚部の固定を解除し、エーテルハイメガカノンを機体に固定させる。シリンダーは三発。両足と右肩にある機体のハードポイントに装着した。

 

《砲撃戦の中止を?》

「勝ち目が無いだろ。どう考えても」


 余りに分の悪い賭けだった。それならば活路は別に見出すしかない。

 

「何はともあれあの長物を手放してもらわない事には話にならん」


 ジェリーフィッシュではなくアンブレラで良かっただろうと小さく悪態をつきながら誠は狙いを定めた。

 

「あれだけの巨体だ。潜り込まれればやりにくいはずだ」


 懐に入り込んでの近接格闘戦。巨体故に死角は多いだろうが、それ以上に圧倒的な質量差が立ち塞がる。エーテルの出力がほぼ互角である以上、それはそのまま攻撃力差へと変わる。

 更にはそこに到達するまでの間、持ちこたえるという最大の難関が待ち構えていた。

 

「ヴィクティムが囮になる。突っ込むぞ」


 前半をマナに。後半をヴィクティムに伝えてエーテルレビテータを稼働させる。音も無くヴィクティムの脚がネイルから離れる。エーテルハイメガカノンと言う錘のせいで常よりも動きが鈍いが、何とかなる範囲だった。

 最大速度でヴィクティムはギガンテスギアへと突撃する。その背後で回頭し、戦域から離れて行こうとするネイル。

 

 サイズと、遮るものの無い空中。その二つを考えれば無防備な姿を晒しているネイルを隠す事など出来ない。その隙を付く様に再びジェリーフィッシュを構える。そこからエーテルが放たれる前にヴィクティムがエーテルハイメガカノンを発射した。再び先ほどまでと同様に傘の様にフィールドを展開してそれを拡散させる。

 

「お前の相手はこっちだ!」


 その啖呵が聞こえたわけではないだろうが、ギガンテスギアの頭部がヴィクティムを捉えた。不気味さすら感じられる単眼のカメラアイがこちらを観察する。全身から放たれる無数のミサイルの様な物体。通常のミサイルならばエーテルコーティングで殆ど無力化できるが、その弾頭が何時ぞや使われたエーテル爆雷と同質の物となれば話は別だ。

 更には蜂型も文字通り全方位から迫ってきた。

 

 エーテルミサイルの第一波をヴィクティムは急降下して振り切ろうとする。その途中使い切ったシリンダーを排出して少しでも機体を軽くした。それでもしっかりと後ろをついてきている事に舌打ちする。エーテルハイメガカノンを片手で支えながらもう片手のエーテルバルカンで打ち落とす。速度が緩んだタイミングで蜂型が針で突き刺そうと迫ってくる。それをランスが貫いた。

 

 一瞬機体が止まった。そこを逃さないとばかりに降り注ぐトータスカタパルトのクラスター弾頭。地面に激突する寸前まで機体を降下。土煙を上げながら地表を滑るように動く。少しでも地上の構造物、ASIDを盾に出来る様に移動。そして一瞬の砲火の隙を伺う。

 

 機体を急上昇。砲撃体勢に移行する。右肩にあったシリンダーを再装填。残りは両足に取りつけた二発。無駄にすることはできないとばかりに複数標的をターゲットに収める。第二波のミサイル、多数の蜂型。それらを巻き込むポジション。おまけとばかりにそれを防ぐためにはギガンテスギアはジェリーフィッシュの向きを大きく動かさないといけない。こちらにミサイルを撃った後はネイルを追撃しようとしていた目論みを崩すべく躊躇うことなく二発目を発射した。

 

 間一髪でジェリーフィッシュのフィールドがヴィクティムのエーテルハイメガカノンを防いだ。だがタイミングが良くなかった。拡散していくエーテルの流れが巨体を掠めた。小規模な爆発。頭部をそちらに向けて意識が逸れた。

 

 シリンダー排出。流れるような動きで再装填。その間にもヴィクティムの速度は増していく。たった今撃った一撃で生じた空隙。妨害が一切ないその空間を突っ切る。ランスによって背後からの追撃は叩き潰す。エーテルを肩口から吹き出しながら蜂型を振り切ってギガンテスギアに肉薄する。

 

 その巨体が視界いっぱいに広がる距離にまで迫ったところで、再びギガンテスギアが手にした砲塔型のジェリーフィッシュを向けてくる。ただしその状態はこれまでの畳んだ状態ではなく、広げた状態。その体勢から行える攻撃。それに気付いた時誠の背筋が冷えた。

 

 だが気付いた時にはもう遅い。敵はなすすべ無くこの距離まで追い込まれたのではない。確実に仕留めるために、ここまで誘い込んだのだ。

 

 広げられた傘の全域から放たれる無数の光線。その一発一発がエーテルの破壊力を秘めた攻撃。数百メートル規模の面攻撃。そんな物をこの距離で躱すことは出来ない。一本一本の隙間を掻い潜る。そんな芸当が許されない程にその密は高い。

 

 回避は現実的ではない。即座に諦め迎撃を選択する。装填済みのエーテルハイメガカノンを碌に狙いもつけずに発射。目的は攻撃ではない。眼前に迫る光線を叩き落とし、安全地帯を作る為だけの行為。着弾しその付近の砲台が吹き飛ぶ。目論み通りに僅かな安全地帯が完成する。一瞬の安堵。それすら許さないというように次の攻撃が迫る。

 

 一斉射撃とタイミングをずらしてのエーテルミサイルの一斉射。百を超える弾頭が四方八方から迫る。特に安全地帯だと思っていた正面が酷い。僅かな隙間を押し合うように次々とミサイルが迫ってくる。

 

 回避スペースがない。向こうは器用な事にミサイルの通り道だけ一瞬砲撃を止めているらしい。ミサイルか砲撃か。周囲の空間には必ずどちらかがある。

 打ち落とせない。数が多過ぎる。多方向から来すぎる。その全てを打ち落とすにはヴィクティムの全身から砲塔を生やす必要がある。

 耐えきれない。例え砲撃の中に突っ込もうと、ミサイルを受け止めようと、同格相手の攻撃をそれだけ受け続ける事は出来ない。

 

 この状況を打開する手を誠には思いつけなかった。だが、この場にはまだもう一人のドライバーが存在する。

 

「正面に、突っ込んでください!」


 その声に誠は即座に反応した。どうするのか、等と問う事はしない。ただミリアの言葉を信じて正面から迫るミサイルの群れに突っ込む。そのヴィクティムの脇をすり抜ける様にして、多量のランスが先陣を切っていく。百を超えていたランスはここに至るまでにその半数が撃墜されていた。だが逆を言えばその半数がこの場に揃っていた。

 

 ランスがエーテルミサイルに突き刺さる。瞬間爆発。ランスが一つ潰される。だがその爆発はヴィクティムに有効打を与える前に宙に拡散していく。一つ二つ三つ。次々とミサイルにランスが突き刺さる。それは言うまでも無く使い捨てにする行為だ。その犠牲を盾に、ヴィクティムは更に前に進む。

 背後からもミサイルが追いついてきた。ランスは全て正面に回されている。ならばとヴィクティムからエーテルハイメガカノンを切り離した。元よりこの距離まで近づいたらあの大砲は早々使用できる物ではない。推力を失い、背後の空間に置き去りにされたエーテルハイメガカノンにミサイルが次々と突き刺さる。大型である事が幸いして一瞬ミサイルの流れを堰き止めるには十分な障害となった。

 

 正面のミサイル密度がランスによって弱まる。脚部のハードポイントに装着していた最後の一発のシリンダー。それを手のひらに装着する。エーテルダガー発信機を逆流するように大量のエーテルが供給される。一瞬だけヴィクティムの全身が銀色に輝いた。

 

《エーテルコーティング出力最大。残エーテルを全て推力系に》


 ヴィクティムが一瞬消えたと見紛うほどの速度で加速した。慣性制御装置でも打ち消せない程の加速度に誠とミリアは全身の血液が背中側に寄ってそのまま突き抜けていきそうな感覚を覚える。

 

 密度が薄まったとはいえまだ数発のミサイルがある空間。そこをシリンダーによるドーピングで強引に突き破って遂に誠はジェリーフィッシュが手に届く位置に辿り着いた。

 

《両ドライバーの承認を確認。メルティングインパクターのセーフティを解除します》


 口に出さずとも、その意思を汲んだヴィクティムが残っている武装を使用可能状態にする。右腕全体を覆うように漆黒の装甲が取り付けられる。

 

 メルティングインパクター。近接格闘武装の名に恥じぬ、文字通りの格闘戦――つまりは拳を叩きつける武器だった。その真価は対単体の破壊力にある。ヴィクティムの右拳を包むように装甲が装着され、ボルトで固定される。

 

《エーテルコーティングの出力、最大を継続》

「打ち破れ! メルティングインパクター!」


 拳が叩きつけられた。無論それだけでは何の痛痒も与えない。だがその打突の一瞬。そこに、太陽コロナの温度に匹敵する熱量が叩き込まれたらどうなるか。

 瞬時に蒸発した装甲。膨大な熱量によって拳が触れた部分は跡形も無く消失した。そのままジェリーフィッシュの中心を延びるエーテルカノン。そこを逆流するように殴り進む。半ばまで削ったところで先にヴィクティムの限界が来た。

 当然ながら、メルティングインパクター自体も太陽の中心温度に耐えられるような素材でできてはいない。ハーモニックレイザーと同じように強引にエーテルで構造を補強して使用していたのだ。故に使用時間に制限がある。

 

《熱耐久限界》

「全開放!」


 メルティングインパクターの限界時間。そのタイミングで蓄積していた全熱量を解放する。数千度に達する熱が吹き荒れる。急上昇した気温に周囲の物体が膨張して爆発が発生する。その爆風の中からヴィクティムが飛び出す。更に容赦なくエーテルガトリングの雨を浴びせてられてジェリーフィッシュは完全に沈黙する。

 

 周囲が白煙に包まれて視界が遮られる。白い帳の向こうから巨大な右腕が伸ばされた。爆発に巻き込まれたからか、多少傷ついてはいるがそのサイズからすると軽微な損傷を負ったギガンテスギアの手。それは容易くヴィクティムを掴み取る。

 今しがた機体が溜め込んだエーテルを使い切る勢いで消費したヴィクティムにそれを擦り抜ける余裕も、力比べで押し勝つ余力も無かった。RERは全力でエーテルを生み出し続けているが、その大半は握りつぶされないように機体を強化する事で手一杯だった。

 

 業を煮やしたのか片手で握りつぶすことは諦め、ギガンテスギアが左腕も伸ばす。単純に倍とはならないが、ギリギリの均衡を崩すには十分だろう。

 その脅威を前に、誠は。

 

「待っていたぞ。お前が手を伸ばすのを」


 コツンと、余りに場違いな軽い音を立ててギガンテスギアの胸部装甲にランスが当たった。単独ではこの分厚い装甲を貫くことも叶わず、ただ細やかな嫌がらせにしかならない一撃。

 大きく迂回してきたからか、白煙の向こうからの一撃はギガンテスギアも認識できなかったらしい。無防備にそれを受け止め。その貧弱さに重く響くような金属音の笑い声をあげて。

 

 その後に続く様に飛び込んで来たネイルの突撃をまともに受けることになった。

 

「疲れました……」


 ヴィクティムがネイルから離れて十分弱。その間ミリアはヴィクティムの周囲の敵をランスで相当しつつ、的確なタイミングで予備兵力――即ち離脱したように見せかけたネイルを戦場に戻らせるタイミングを伺っていた。その先導に一基のランスを付けて。

 それを疲れましたの一言で済ませているのは最早異常の域だ。常識離れした並列思考。誠には絶対に真似できない所業だった。

 

 自分に匹敵する大質量の突撃。それを受けても転倒しなかったのは流石と言うべきだろう。どころか胸部装甲に食い込もうとしているネイルの先端を掴んで押し返そうとさえしている。突撃で打倒せなかった以上、ネイルにここから離脱する術はない。

 

《己が使命を忘れた木偶人形に教えて差し上げましょう》


 それでもマナは余裕さえ見せる声でそう告げる。

 

《当艦ネイルは強襲突入艦。例え眼前に壁があったとしても、それを強引に撃ち穿つ為に存在する》


 瞬間、滑らかな船体各所から姿を見せる砲門。一瞬にして一本の釘からハリネズミの様にネイルは姿を変える。

 

《エーテルカノン斉射!》


 至近距離からの砲撃。立て続けに撃ち込まれるエーテルカノンの、その威力。ジェリーフィッシュを失いエーテル出力を大きく減らしたギガンテスギアは耐えきる事が出来なかった。

 まともに受けた胸部装甲が砕ける。余波でネイルを掴んでいた腕が破砕される。そして軛から解き放たれたネイルは抑え込まれていた推進力を武器にもろくなった胸部を貫いて打ち砕いた。

 

 巨人がバラバラになって崩れていく。エーテルを失い、自重を支える事も出来ずに打ち崩れていった。その降り注ぐ残骸の中をヴィクティムは器用によけながら地面へと降りていく。そこを狙ってきたASIDがいたが、上空からのネイルによる対地砲火で近づくことも許されず消し飛ばされる。

 

《エーテルハウザーを投下》


 ハウザー、即ち榴弾砲。エーテル弾頭を曲射で飛ばすエーテル兵器の中でもやや異色の武装だ。基本的に直線しか描けないエーテルカノンとは違い、地平線の向こうを撃てるため地上から撃つ時はこちらの方が使い勝手が良い。

 物理法則を無視するエーテルが何で曲がるのかと言う疑問を誠は考えるのを止めた。というか考えるだけ無駄だと悟った。優美香に聞いてみてもエーテルだからと言う答えが来る時点で何でもありだと理解させられたのだ。

 

「トータスカタパルトは残り六!」

《全個体の位置情報を更新。ネイルとのリアルタイム更新確立》

「照準、問題ありません」


 そこからヴィクティムがネスト周辺のASIDを殲滅するまでに一時間とかからなかった。

 周囲にASIDの骸を積み上げて、遂にASIDの巣へと足を踏み入れる。

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