第七話 真実
消毒液のような臭いと、柔らかい布の感触を背中に感じて目を開ける。
「起きたか──」
傍らにはレインズロットが座っていた。その頬には傷を隠すように塗られた薬の跡が見えた。
「レインズ……さん? ここは……?」
「医務室ですよタクマ──」
それに答えたのは別の声だった。白い仕切り布の向こう側からリエラが入ってくる。
「レインズさんの部下の方に呼ばれて来てみれば……本当に驚きました」
そう言いながら微笑み、寝台の横に備えてあった椅子に腰掛ける。
「あの俺、どのくらい眠ってましたか?──」
「半刻も過ぎていない。それよりも、身体は大事無いか?」
その言葉に答えるように身体を動かしてみる。まだ所々軋みはするが、問題は無いだろう。
それに、今は自分の身体よりも優先しなければならない問題がある。分からないことだらけだ。自分の及ばない所で自分に関係のある話が進んでいる。
全てを知っておかなければならない。その必要が、責任が、権利が、俺にはある。ロランと同じ剣技を使うあの騎士のことを。俺は知らなければならない。なぜなら俺も、
「レインズロットさん──」
俺は彼の名を呼んだ。ロランの旧友で、事の真相のすべてを知っているはずの男の名を──
「教えて下さい。知ってる事、全部」
「……」
レインズロットは瞳を閉じて深く深呼吸をした。そして目を開け俺を見る。その紫の瞳からは、何かを悲しむような哀愁と、その奥から覚悟にも似た力強さを感じた。
「少し、長くなるぞ──」
そしてレインズロットは静かに、そしてゆっくりと、思い出を振り返るかのように語り始めた──
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