第一章 ─幕開け─
建国王
【エーデル・グリーン】
七人の神が創り出したこの大地を、敬意を込め皆そう呼ぶ。
北と東は連なる山脈に囲まれ、西は何人をも拒絶する森に覆われ、南は雄大な大海に包まれた、自然と生命に溢れる大地。
女神により生み出された四種の種族が、それぞれの場所で思い思いに、その生命を育んでいた。だがその大地に刻まれた歴史は、血に塗れたものだった。
暦が読まれるよりも遥か昔、北の山を越えた先より、魂を闇に飲まれた者達"魔族"が姿を現した。
魔族はその力をもってありとあらゆる生命を奪い瞬く間に、大地を赤く染めていった。
全てが終わると誰もが思い始めたその時、一人の"丘の民"が立ち上がった。
その男の名はルシウス。
ルシウスはその才覚を持って、バラバラであった四種族をまとめ魔族に立ち向かった。その争いは長く険しいものだったが、激闘の末に魔族の長を打ち倒し、魔族を北の山脈の向こうまで押し込めることに成功した。
後にそれは【人魔戦争】として、ルシウス伝説の一部として今日まで語られている。
人魔戦争集結からほどなくして、彼は国をつくった。大地を愛し、全ての民が分け隔てなく暮らせるように
ルシウスは人魔戦争を終わらせた英雄として、そして国をつくった建国の王として、その名は後世にまで語り継がれているが、彼が自ら建てた国の玉座に腰掛けることは叶わなかった。
──ルクス王国建国史 第一章 悲劇の建国王──
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