第31話同級生


未来は、タレントではなく女優になると決めた。


マスコミには、神聖な天使下界に舞い降りると書かれた。



台本の何冊も頭の中に自然に入ってくる。


CMも三本、ドラマが二本、映画が五本とハイペースで撮影された。


大学と仕事は大学側の宣伝という事で免除された。


教授とも啓介とも自然消滅だった。




七海とはしょっちゅう会っていた。



七海もモデルを始めた。










そんな時に中学校の同級生からメールが届いた。


「それって又聞きじゃん!失礼な奴ね」 


と七海は言ったが未来には当時気になっていたけれど話しかけられない男だった。



【久しぶり、同じ大学なんだね。会えると良いな。】



未来は、時間を作って彼ー黒沢純のマンションを訊ねた。





扉をあけた純は中学生の時とは違い背が高く堀の深い顔立ちになっていた。



「久しぶり。」


「久しぶり。」



「テレビで見てるよ。スゴい人気だね。」


「うーん、実感は無いけどね。」



「そっか、そんなものなんだね。」



と言って純は、笑った。



不思議な感覚が二人の間に突き抜けた。


「マスコミとか大丈夫?」


「うん、うちの事務所は同業者以外とは恋愛OKなんだ?」



「恋愛?」


言った後に未来は恥ずかしくなった。



ただ同級生と会ってるだけなのに…。




「そうなんだ。狭いけど上がってよ。」



「良いの?」


「うん。ごめんね、連絡先、又聞きしたみたいで。」


「良いよ、気にしてないから。」 

 

「良かった…。」



「夕飯まだ?って食事とか普通に食べて良いのかな?」


「大丈夫、わたし太らない体質だから。」


「そっか、じゃあカレーにしようかな。」




「黒沢君はさ何学部?」


「一応、医学部。」


「一応?」


「自信が無いんだ。」


純は、玉ねぎを切りながら言った。


「そうなんだ…。大変な仕事だもんね。」


「だから、将来はうちの寺を継ごうと思ってね。」


「黒沢君って実家お寺なんだ。」


「そう…。」


「今だから言っちゃうけど…。」


カレーを食べながら純は未来を見つめた。



「やっぱりやめとこう。」 

 

「何で、言いなよ。」  


「中学の時気になってた。でも、話す機会がなかったし。」

  


わたしも…と言いかけたがやめといた。



「そうなんだ。嬉しいな。」


いつから計算するようになったんだろう?


わたしもって言ったら軽いと思われる。


でも、嬉しいなという言葉は相手に気を持たす事になる。



「今度さゲームセンターでも行かない?」



純は、皿を洗いながら聞いてきた。



「いーよ!」


「本当?」 


「うん、女優のオーラ消して行く。」


「それは大切だね。」


と二人で笑った。


何だろう?この焦れったい気持ちは…。



今まで感じた事がないような気持ち…。



鏡を見て冷静なれ!わたしとエールを贈る理性と野性的な感情…。


二つ感情が心の中でせめぎあっている。



ドキドキした?


した。


彼の印象は?


中学生で時間が止まっている感じ。


それは嬉しいの?


うん、スゴく嬉しくて暖かい。





純のマンションからの帰り道バスの中で酔っぱらいに絡まれても頭にこない。


ずっと純の事だけ考えていた。


中学生に戻った無邪気な


 

二人…。



次の約束はしたけれどすぐに会いたくてスマホを何回も見てしまう。



純から、メールが来た。


【今日は忙しいのに来てくれてありがとう今度は映画かゲームセンター行こうね。】



すぐにメールを返信してはダメだ…。


30分は返信しない。


最近、買った本に書いてあった。


【上手いメールの仕方。】

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