千刀楽

(これ、我ながら失策だったのでは?やってしまったのでは?)

数十匹いた初級共を狩った後に俺、葛根樹は思った。

誰がやったか知らないが、これチャンスじゃね⁈と思い。

どうせなら一番強そうなのを実琴に回せば確実に血刀出るんじゃね⁈と思い。

あ、邪魔にならないように、階段側まで雑魚を移動させれば完璧なのでは?

…即実行した結果がこれだよ!

「実琴生きてるー⁈生きてるよなー⁈」

嗅ぎ慣れた鉄のようなにおい。嫌な予感がする。

「待ってろ、すぐにボス殺して治すから…っ⁈」

悪寒。あと数歩の距離なのに思わず後ずさる。

ああ。

思わずニヤリと笑う。

「さっすが実琴…!」



馬乗りになっていた初級を蹴飛ばして立ち上がる。

意識の高揚。先ほどまで朦朧としていたとは思えない。

何故だろうか。

動きも遅く感じる。なんでこんなのに押されていたんだ?

周りに出来た自分の血溜まりから、赤黒い抜き身の刀を掴む。

あのよくわからない空間で掴んだものと同じだろうか。どうでもいい。

一閃。右腕を切る。一刀目。

一閃。次は左腕。二刀目。

一閃。そのまま左足。三刀目。

一閃。流れで右足。四刀目。

一閃。さらに首。五刀目。

終いに心臓を一刺し。六刀目。

哀れな人魚のなりそこないは、泡のように消えた。初めからいなかったかのように。



「さっすが実琴!やればできるじゃんか〜!」

「……内心『ヤバいミスった』とか思ってたろ」

「ウッ…ソンナコトナイヨー」

いつの間にか実琴の全身の傷はなくなっていた。双神家については詳しくはないからなんともいえないが、確かに傷とか怪我の治りは早かったような…?

……まぁ、これで俺の知ってる双神家のそれになった訳だ。瞳も真っ赤だし。

「じゃ、また刺客が来る前に用事を済ませますかね」

「用事?」

「そ。なんのために俺コンピュータ室の前にいたと思ってるの」

「偶然」

「酷い!…いやそう思われるのも仕方ないけど!」

「はいはいナンノタメデスカ」

「棒読み⁈うぅ…とにかく行くぞ!コンピュータ室!」



「さっちゃんに会いに!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る