初まり、始まり

間。

数分に感じる(おそらく数秒なのだろうが)沈黙。

先に口を開いたのは、樹の方だった。

「とりあえず、座ろっか」

「あ、あぁ」

廊下に座る。少し錆くさい、鉄のようなにおいがする。

「さて、何から話したらいいか…」

「…あのゾンビみたいなのについても知ってるのか」

「あー…あれかー…。まぁ、それから説明するのがいい、かな?」


そこからの樹の説明は突飛なものだった。

…あれはね、人魚なんだよ。正確には、人魚のなりそこない。人魚に喰われた人間の一つのカタチ。末路…と言ってもいいかもしれない。

見た目ゾンビみたいだけど、腐ってないし、鱗あるしね。

あ、大丈夫。実琴はどう足掻いてもアレにはならないから。俺も同じ、ならないし、なれない。

通称、初級。自我も意識もない。

もちろん、初級っていうんだから当然中級や上級もある、共通点は『人間からなった』ということ。

あ、中級からは、人間だったころの自我も意識もあるよ。

だから、中級と上級の区別は少し難しいかもだ。

ちなみに上級になると、初級を思うまま、問答無用で操れるようになる。テレビのリモコンだって取ってもらえる。ちょーべんり‼︎

あぁ、ちなみに『人間から』ってわざわざ付け足すのは、当然『初めから』人魚な奴もいるわけだ。そいつらは上級クラス以上しかいないんだけど


「ちょっと待て」

「何が?…ってもう分かりきってるけど」

「どうして、お前はそんなに詳しい?」

「それこそ簡単な話だ」


「俺もまた、人魚だからさ」

生まれた時から、ね!

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