最近、剣聖さんが贈られてきました

@kapucup

第1話



カタッカタカタカタカタ、ピコンピコン。


「よしっ!あと少しで、エンディングだ!」


カタカタカタカタ、


「うわっ、マジでか運悪っ、普通なら通常色のラスボスが出るはずなのに、まさか100万分の1の確率で出る色違いのボスだなんて、せっかくここまでやってきたのに…」


「とりあえず、1回中断してネットの意見や説明書を読んでおいとこ」


そういって僕は立ち上がり棚に置いておいた、説明書を手に取りパソコンの画面の前へと座った。


「まあ、とりあえず一応ネットで検索かけとくか、えーとmystic expeditionと」


「あーやっぱりか、このゲーム最高難易度だからクリアした人は少ないな、さらに色違いのボスが出ました〜なんて記事も載ってないし、仕方ない最後説明書だけ見ていくか」


「ええと、色違いのボスは100万回に1回出ますと、まあそうだよね、何っステータスが1.5倍upだと?今の俺のパーティだとギリギリだな、剣聖のシャロンがどこまでダメージを与えられるかが勝負だな」


「ん?色違いボスを倒した方はそのクリア画面をカメラで撮りその写真を運営宛に送ると素敵なプレゼントがもらえます?」


「おおー、なんだろ、まあキャラクターのフィギュアとかかな?」


「まあ、いいやとりあえずやるだけやってみよう」


そう言って僕は説明書を閉じて机の中に閉まった。


「さあ、勝負だ!」


カタカタカタカタ、カタカタカタカタ、ピコンピコン、カタカタカタカタ


勝負は一進一退、互角の勝負だった。こちらの体力も残りわずか、相手の体力も残りわずか。


「シャロンの必殺技ライトニングディバイドも残り1回しか使えない、ここは補助魔法で1度溜めてから行くか」


「しまった、魔法使える奴がやられちゃった、まずい、まずい、まずい」


僕は1度深呼吸して、落ち着きを取り戻し、もう1度画面の方に向かった。


「まあ、いいかどうせ色違いボス、倒したところでフィギュアが貰えるかどうかくらいだろ、やられてもまたやり直せばいいか」


「よし、いけっシャロン、ライトニングディバイド!!!!」


ドカーン、ドドドカーン


「うぉぉぉあぁぁぁぁ、く、クリティカルがでたぁぁぉぁぁ!!」


テレッテレッテレー


「やった…クリアだぁぉぁぁ」


「夢じゃないだろうか」


僕は1人部屋の中で泣いていた。人生17年目泣く程嬉しいことがあっただろうか…怪我をして泣いた事はあったけど。


「ああ、そうだ写真写真」


僕はポケットからスマホを取り出し写真を撮った。


カシャ


「よしとりあえず、写真はパソコンに移してプリンタから…」


「あ、インク切れてたんだ、父さんまだ使ってないプリンタのインクある?」


「あるぞ、ほら」


「ありがとう、父さん」


父さんは寛大な人だ、休日の昼間から僕がゲームをやっていても特に怒ったりはしない。そういう父さんはゲーム会社の役員だからでもあるからだ。


「あれ、もしかして春輝そのゲームクリアしたのか?」


「そうなんだよ、父さん!色違いボスが出てきてやばかったんだけど、最後剣聖シャロンの必殺技でクリティカルが出たんだよ!」


「おお、お前は運がいいなぁ、父さんそのゲーム何回やってもクリア出来ないよ」


「まあ、ゲームは実力の他にも強い運が必要だからな!」


「とりあえず、良かったな、それはそうとゲームもほどほどにな、目の休憩はした方がいいぞ」


「分かってるって、インクありがとな」


そうして父は自分の部屋に戻り僕はプリンタにインクをセットしてクリア画面の写真を印刷していた。


「えーと切手切手、切手はどこにしまったかな、あった」


封筒に写真を入れ切手を貼り僕はポストへ出しに行った。


「何がもらえるんだろう、やっぱ剣聖シャロンのフィギュアがいいな、あれは見てても飽きないからな」


そう言って僕の休日は終わった…


「父さん、行ってきます!」


「気をつけてな」


おそらく、昨日出したから今日くらいには向こうの会社についてるはずだ、そう考えながら僕はスキップしながら学校へ向かって行った。


「おはよう、坂本くん」


振り向くとそこにはクラス一の天才で運動神経も抜群、美貌も素晴らしいいわゆる才色兼備の女の子が立っていた。


「やあ、おはよう西条さん」


うわー昨日色違いボス倒して、今日は才色兼備の西条さんに会うとか運良すぎだろ!


「どうしたの?坂本くん」


「い、いや何でもないよ、ちょっと寒いなーってな感じで」


「そうだねーもう春なのにまだ寒いよね」


僕はもうそこからの記憶が定かではない、幸せ過ぎてテンパってしまって顔が赤くなってしまったからだ。


そんな、幸せな時間も終わり授業が始まった。3時間目の辺りだろうか急に担任の先生が血相変えた顔で授業中に僕を呼びに来た。


「坂本、お父さんからお電話で至急家に帰ってこいとのことだ」


「えっ」


「もう今日は早退していいぞ」


「分かりました、すぐ帰ります。」


僕は帰る支度をして急いで家へと向かった。なんだ、何が起こったんだ?もしかして、火事?まさか、寝るところ無くなるじゃないか。10分ほど走り僕は家に着いた。


「なんだ、何も起こってないじゃないか」


「まさか、海外にいる母さんに何かあったのか?」


そう考えた時にはもう僕は家のドアを開けていた。


「父さん、まさか母さんに何かあった…の…か」


扉を開けた先には身長が僕とほとんど同じくらい、金髪であからさまに外国人風の女の子が立っていた。


「だれ?」


僕はそう呟くとその金髪女子はこちらを向いた。


ああ、間違いないこの美しい顔立ち、サイズでいうとDいやEくらいある豊満な胸、僕は確信した。間違いないこいつは剣聖シャロンだと。


「って、何でぇぇぇぇぇぇぇ!」


「何でとは何だ、このテンパクソ地味ゴミ箱野郎!こっちが聞きたいくらいだわ」


ひとつ、分かった事があるゲームの中では絶対的強さを持ち何もかも完璧な美少女キャラを誇っていたこの剣聖はとんでもなく口が悪いと。


愚かながら僕は今気づいた、まさかクリア達成記念のプレゼントとして送られてきたことを。


「こんな剣聖いらなぁぁいいいいー」


こうして、僕の家に剣聖さんが送られてきた。正直いらない。


僕はまだ知る由もなかった、剣聖が来たことで僕の人生が大きく変わることを…。




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