波乱の会議②
残された者たちの空気は何とも言い難いものとなった。
「……委員会の人たちは、本当にこのまま抜けてしまうんでしょうか?」
恐る恐ると言った感じに、1人の少年が声を発した。
「さぁ……。でも、今回の件については、完全に手は出さないって感じだったな」
「抜ける理由があれど、結局のところ、私みたいなたかが子どもがあれこれ口出すの、嫌だったんじゃないの? 一応年上が多いからってまとめてたのあちらさんだし」
「望愛……」
「でもさ、ハヤブサの件もちょっと気になるよな」
他の人たちもその言葉にはぽつぽつとうなずいている。いまいち話についていけていない渚は、隣にいる直人に小声で尋ねる。
「ねぇ……ハヤブサって?」
「あぁ、話してなかったけ? ある程度聞いてて分かったかもしんないけど、政府のほうに組する能力者集団のこと。つまり俺らの邪魔をする可能性が高い奴らなんだ」
直人はそう短く説明すると、全体の話し合いのほうに意識を戻した。渚は疑問に思ったことを尋ねたかったけれど、それは後に回すことにした。
「で、結局どうしましょ。委員会の人たちはいないし……てかそもそも中止とか言ってたし。今回の計画を実行に移します? どうしましょ」
渚たちの左側に座る少年が、全体を見回して投げかける。各々が考え込む中「やるわ」と望愛は言った。
「ここまで来てやめるなんていやよ。やめる明確な理由がないわ。委員会の人たちがいないからと言って、計画が破綻するわけじゃないもの。多少の誤差はあれど、計画は進められるはずよ」
望愛の言葉に、他の人たちには多少の迷いが感じられる。
「……委員会が担ってた、お偉いさんたちへの根回しは? 資金繰りは? 高校生相手に請け負ってくれる?」
「学生中心のとこが多いけど、組織の中に社会人だって少数だけどいますよね? そこら辺は彼らに担ってもらえばいいと思いますよ」
「実行場所の候補、もう完全に絞ったほうがいいかな」
「そうね。そろそろ決めてしまったほうがいいかもしれない」
「ビラやその他の物資集め、引き続きこちらでやるから」
「わかったわ」
先ほどまで迷っていた人たちも、話し合うにつれ、次第に迷いは消えていったようだった。そして、望愛や翔悟を中心にどんどんと話が進んでいく。
約2時間の議論の後、近日また集まるということになり、それまで今決めた役割を全うするということに決まった。
これで解散か、という空気が出てきたが、「ちょっといい?」と渚たちの左側に座ってた少年が待ったをかける。
「委員会が今回の件から抜けるにあたって、代わりの責任者……今回の計画のリーダーを決めたほういいんじゃないっすか? 今後どこが、誰が中心となって進めていくか、決めた方がこれから先やりやすいと思うっす」
他の人たちも周りを伺いながらも、その意見には賛成のようだった。しかしすぐには名前は出てこず、他の人たちの顔色をうかがっているようだ。
「……嵐の人たちがいいと思う」
誰かがそう言った。すると先ほどまで様子をうかがっていた人たちも、口々に同意の声を上げる。
「……結構賛成の声が多いっすけど?」
「私も翔悟がまとめてくれるなら、いいと思うわ」
「俺もそう思う」
望愛も直人も翔悟を見てそう言った。名前を挙げられた本人は、少し悩んでいたようだが、少しして「努力する」と引き受けた。
「じゃあ、これからまた計画に向けて頑張りましょうっす!」
その言葉が合図になったかのように、この集まりは解散という流れになった。
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