2-3

 残された者たちの空気は何とも言い難いものとなった。

「……委員会の人たちは、本当にこのまま抜けてしまうんでしょうか?」

 恐る恐ると言った感じに、1人の少年が声を発した。

「さぁ……。でも、今回の件については、完全に手は出さないって感じだったな」

「抜けるに妥当な理由あれど、結局のところ、私みたいなたかが子どもがあれこれ口出すの、嫌だったんじゃないの? 一応年上が多いからってまとめてたのあちらさんだし」

「望愛……」

「でもさ、ハヤブサの件もちょっと気になるよな」

 他の人たちもその言葉にはぽつぽつとうなずいている。いまいち話についていけていない渚は、隣にいる直人に小声で尋ねる。

「ねぇ……ハヤブサって?」

「あぁ、話してなかったけ? ある程度聞いてて分かったかもしんないけど、政府のほうに組する能力者集団のこと。つまり俺らの邪魔をする可能性が高い奴らなんだ」

 直人はそう短く説明すると、全体の話し合いのほうに意識を戻した。渚は疑問に思ったことを尋ねたかったけれど、それは後に回すことにした。

「で、結局どうしましょ。委員会の人たちはいないし……注視とか言ってたし。今回の計画を実行に移します? どうしましょ」

 渚たちの左側に座る少年が、全体を見回して投げかける。各々が考え込む中、「やるわ」と望愛は言った。

「ここまできてやめるなんて嫌よ。やめる明確な理由がない。委員会の人たちがいないからと言って、計画が破たんするわけじゃないもの。多少の誤差はあれど、計画通り進められるはずよ」

 望愛の言葉に、他の人たちには多少の迷いが感じられる。

「……委員会が担ってた、お偉いさんたちへの根回しは? 資金繰りは? 高校生相手に請け負ってくれる?」

「学生以外、社会人だって少数だけどいますよね? そこら辺は彼らに担ってもらえばいいと思いますよ」

「実行場所の候補、もう完全に絞ったほうがいいかな」

「そうね。そろそろ決めてしまったほうがいいかもしれない」

「ビラやその他の物資集め、引き続きこちらでやるから」

「わかったわ」

 先ほどまで迷っていた人たちも、話し合うにつれ、次第に迷いは消えていったようだった。そして、望愛や翔悟を中心に、どんどんと話が進んでいく。約2時間の議論の後、近日また集まるということで、それまで今決めた役割を全うするということに決まった。

 これで解散か、という空気が出てきたが、「ちょっといい?」と渚たちの左側に座ってた少年が待ったをかける。

「委員会が今回の件から抜けるにあたって、責任者……今回の計画のリーダーの変更を決めたほういいんじゃないっすか? 今後どこが、誰が中心となって進めていくか。決めた方が、これから先やりやすいと思うっす」

 他の人たちも周りを伺いながらも、その意見には賛成のようだった。しかし、すぐには名前は出てこず、他の人たちの顔色をうかがっているようだ。

「……嵐の人たちがいいと思う」

 誰かがそう言った。すると先ほどまで様子をうかがっていた人たちも、口々に同意の声を上げる。

「……結構賛成の声が多いっすけど?」

「私も翔悟がまとめてくれるなら、いいと思うわ」

「俺もそう思う」

 望愛も直人も翔悟を見てそう言った。名前を挙げられた本人は、少し悩んでいたようだが、少しして「努力する」と引き受けた。

「じゃあ、これからまた計画に向けて頑張りましょうっす!」

 その言葉が合図になったかのように、この集まりは解散という流れになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る