ノクターナル・アニマルズ

レイトショーで見るのにぴったりの映画だった。


冒頭はグロい映像で、あっけにとられたが、美術作品らしい。実際の全裸の人を使った美術作品があるとは。俗悪の極みのような作品である。


内容的には、スーザンの日常と過去、そして元夫・トニーからの小説の映像が交互に語られる。小説はすべて映像で語られる。実際のテキストも多少は含めてもらいたかったところ。


【以下ネタバレあり】

スーザンのトニーとの過去が明らかになるに連れて、小説の陰惨な内容とのつながりが見えてくる。つまり、小説は、悲痛な別れの産物だったのである。別れは、結局、スーザンがブルジョワの娘で、ブルジョワの暮らしを求めずにはいられなかったためだった。スーザンは当初、頑なにブルジョワおよびその権化である母親と一線を画そうとしたが、「あなたは将来ブルジョワに同一化する」という母親の予言が的中した形になったと言えるだろう。冒頭のグロテスクな映像は、ブルジョワ的なグロテスクさを示しているようにも思える。


小説が復讐なのか、といえばそうとも言えないように思う。小説がスーザンとの出会いと別れの産物だとしたら、それはただ書かれただけで、そこに復讐の意図はなかっただろうから。スーザンに送付したのも、それがスーザンを通して産まれたものだとすれば、突飛な行為ではないだろう。


小説は、スーザンに大いに衝撃を与えたので、成功しているように思う(「スーザンに捧ぐ」小説だった)。ただし、それが万人に受けるかどうかはわからない。

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