秋の章
前編
「
無造作に突き出された紙の束を受け取り、私は、はい、と短く返事をした。今日も残業確定か、というため息は、コピー機の前に立ってから盛大に吐き出すことにする。
たかがコピー、されどコピー。決して侮ることなかれ。建築図面一式のコピーは、判型が大きく不揃いなうえに、部数も多い。簡単ながら製本もしなくてはならないし、おそろしく手間と時間のかかる仕事なのだ。
これが最終図面ならコピー屋に依頼し、製本まで仕上げてもらうのだけれど、いま
私が勤めている設計事務所の主な顧客は大手のハウスメーカーだ。仕事に困ることはないけれど、無理な注文も少なくない。コンペに参加して大きな仕事を受ける機会もあるにはあるが、それは数年に一度のお祭りのようなものだと先輩たちは言っている。この事務所に雇われてから二年と半年。私にはまだ、お祭りの経験がない。
「オレ、ちょっと出てくるから。それ、七時までに上げとけよ」
パーテーションに囲まれたコピーコーナーにいた私にそう云いおいて、安斎さんは鞄も持たずに事務所を出ていってしまった。時刻は十七時半。きっと少し早い夕食にでも行ったのだろう。
「よいのかえ? 今夜はひさしぶりのでえとではなかったのかえ?」
「狐! あんた、どこから」
時間があまりない、こうなりゃ二台使いだ、と気合を入れた私のすぐ傍に、
「その呼び方はないの。
招かれざる狐は大きな三角の耳をぴこぴこ動かしながら、ふさふさとした尾を不機嫌に揺らしている。
「ここに来るの、やめてって云ってるのに、なんでわかんないの?」
私も彼に負けず劣らずの不機嫌をアピールすべく、精一杯に低い声を出して狐を威嚇する。苧環は切れ長の瞳を細め、ずいぶんと高いところから私を見下ろすような目つきをした。わかる。わかるぞ。こいつ、いま、ものすごく不機嫌だ。
「そなたのいるところが吾のいるべきところ。なにしろ、そなたと吾は」
「き、つ、ね!」
噛みしめた歯で音をひとつずつ磨り潰すようにして呼ばわっても、苧環は消えない。どころか、尾の先で私の太腿やふくらはぎを幾度も叩いて、コピー機の設定を急ぎたい私の邪魔をする。
「やめてって云ってるでしょ」
傍若無人にも仕事場にまで乗り込んでくる苧環のことが気に入らない。耳や尻尾の動きを見るだけで妖怪の機嫌のよしあしがわかるようになってしまった自分が気に入らない。つまらない残業のせいで、ひさしぶりの約束がふいになってしまったことも気に入らない。
気に入らない。気に入らない。なにもかもが気に入らない。
私は苧環を押し退け、コピー機に原稿をセットした。スタートボタンを押せば、賢いデジタル機器は妖怪に振り回される私になどお構いなしに、きちんと仕事を果たしてくれる。
「よいのか、でえとは?」
「いいわけないでしょ!」
いつのまにかコピー機の傍らに置いてあるシュレッダーの上に腰を下ろしていた苧環の問いかけに、私は半ギレで答える。
「いまからメッセするんだから、どっか行ってて。邪魔」
テレビドラマに出てくる正義の味方のような仕種でスマホを翳せば、苧環は薄い唇をわずかに歪めて苦い笑みを作った。そのくせ瞳には色を含んだやさしい光が宿っていて、私を混乱させる。
「なによ、その顔。あんたには関係ないでしょ」
われながらひどい云い草だとは思うが、この狐に対するときにはどうしても言葉がきつくなってしまう。これだけのことを言われているくせに、苧環がどこか飄々とした気配を変えないでいるせいで、ついつい甘えてしまっているのかもしれなかった。
妖狐の苧環はこの夏の拾い物だ。拾い物と云うとなにやら幸いのようにも聞こえるが、これは違う。断じて違う。ただの厄介者だ。
おばあちゃんの具合がよくないからとママに云われ、この夏、私は四年半ぶりに生まれ育った家へと帰った。膵臓癌を患っているというおばあちゃんは、想像していたよりもずっと元気で、そのことには安心した。いますぐどうこうなってしまうということはなさそうだと思えたからだ。
おばあちゃんのことはひとまずはよかったのだけれど――、よくなかったこともある。
それが、この苧環だ。
帰省した日、家の前でうろうろしていた妙ちきりんな狐男に声をかけてしまったのが運の尽き。これまで知らなかったおばあちゃんと彼女のお母さん、つまり私にとってのひいおばあちゃんとの確執や、彼女の哀しい過去を知り、苧環との因縁を知った。
苧環はその姿のとおり狐の妖怪で、本人の弁を信じるならば人の血も流れている。ただ、大妖であるという父親の力を濃く受け継いでいて、どちらかといえば――私に云わせればはっきりと――化物だ。
いまの彼の姿は人の目には見えない。声も聴こえない。ただひとり、私を除いては。
ひいおばあちゃんの血のせいか、はたまたほかに原因があるのかはよくわからないが、私だけは苧環の姿を見、声を聴き、手を触れることができる。
苧環はそのことが嬉しかったらしい。とても嬉しかったらしい。
彼は勝手に私を魂の伴侶と認め、――こうして私に憑いてきてしまった。
「っていうかさ、あんた、おばあちゃんのこと守ってくれてるんじゃなかったの?」
恋人にあてたメッセージをスマホに打ち込みながら、私は苧環の様子をちらりと窺った。シュレッダーの上に片膝を立てて座り、耳をぴこぴこ、尻尾をふさふさ動かしている彼はどこか可愛らしい。
「悪い妖怪に誑かされたり憑りつかれたりしないよう見張っててくれるって、そう云ってたくせに」
本人はそうとは知らないが、重い病に侵されているおばあちゃんは、とても弱っているそうだ。……霊的に。
苧環に会うまで、幽霊とか妖怪にまったく縁のなかった私にはよくわからないが、苧環の云うことを全面的に信じるならば、彼女はとても危険な状態にあるらしい。
ひいおばあちゃんと親しかった苧環は、ひいおばあちゃんの子であるおばあちゃんが最期の刻を安らかに迎えられるよう、悪いモノたちから守ってやりたいのだと、私が帰省したとき家の前に立っていたのはそれが理由だと云っていた。
の、だが。
「私についてきちゃ、意味ないじゃない」
苧環のほうを見もせずに文句だけを云う私に、彼は、ふふふ、とやけに婀娜っぽい含み笑いを返して寄越した。
「案ずることはない。
「……妖怪のくせに命って」
そもそも生きているのか死んでいるのかも、私には理解できない存在だ。命がけ、などと云われても、ありがたいのかそうでないのかよくわからない。
「妖の命も、人のそれとなんら変わらぬものであるよ。ただ、いささか長くはあるがの」
膝の上に顎を乗せたまま視線を流して寄越す苧環は、ぼさぼさの髪に古の衣装といったおよそ受け入れがたい姿であってもなお艶めかしい。
「吾の云うことが信じられぬか?」
「……そんなことは、ないけど」
自分で様子を見に行く時間を作りもせずに、苧環に文句ばかり云う私は卑怯だ。そんなことはわかっている。仕事が忙しいだとか、場所が離れているとか、そんなのはただの云い訳にすぎない。
「真優には真優の暮らしがあるのであろ。正月にでもまた顔を見せてやればよい」
妖怪狐のくせに、苧環は人間界の都合に詳しい。
「吾の眷属は働き者じゃ。比佐のことをよく守り、よく助け、いざというときには知らせも寄越す」
「いざというとき」
私は思わず拳を握った。そうだ、おばあちゃんの命はもう幾何も残されてはいないのだ。
「そんな顔をするでない、真優」
するりと伸ばされた苧環の手が私の頬に添えられる。白くすべらかでやさしい指先は、しかし、たしかに人のものではありえないほどにひややかだ。
「吾がずっとそばにおるゆえな。悲しいときは泣けばよい。淋しいときは呼べばよい。苦しいときには叫べばよい」
全部聴いておるゆえな、と苧環は云い、そのまま私に――。
「ふざけんな、このエロ狐!」
唇に触れそうになった唇を掌でぐいと押し返せば、苧環は大きな耳をぐっと前へ倒し、えろとはなんじゃ、と抗議してきた。
「伴侶にくちづけてなにが悪い?」
「ここ職場! いまは仕事中!」
そういう問題だろうか、と冷静に突っ込みを入れるもうひとりの自分をまるっと無視して、私は苧環の顎をぐいぐいと両手で押しやった。
「つれないのう、真優は。めっせなどしてサボタージュしておるくせに」
懲りない苧環は首を仰け反らせながらなお腕を伸ばし、私の頬を撫でる。尻尾はさわさわとお腹や脚を撫でているし、反省の色は欠片もない。
「お、返事が来たようじゃ。あやつはなんと云うておる?」
苧環がそう云い終えると同時に、私のスマホがぶるぶると震えてメッセージの着信を知らせた。妖怪というのは電波にも敏感なのだろうか。苧環はたまにこうやって着信の前にそれを知らせることがある。
液晶画面を覗き込んでこようとするのをどうにか防ぎながら、私は恋人からのメッセージを確認した。仕事なら仕方ないよね。残念だけど、またの機会にね。
またの機会なんてほんとにあるんだろうか、と私はぼんやり考えた。
私が恋人と過ごすことのできる時間はとても限られている。
週末が休みの私と、平日が休みの彼。まだアシスタントの私は不定期に残業をしなければならないし、美容師の彼は夜まで店に立ったあとさらに練習や研修をこなさなくてはならない。
私が彼の休みに合わせて休暇を取ったり、仕事が終わったあと彼の部屋に行ったりして、どうにかこうにか関係を繋いできた。いままでは。
コピー機が止まり、私は慌ててスマホをポケットにしまう。次の原稿をセットして、急いで設定をする。ピ、ピ、と指先が触れるたびに上がる音が、思考の波間に浮かぶ
いまは仕事。仕事に集中しなくっちゃ。
「よいのかえ、真優」
苧環の問いかけが鬱陶しかった。いいはずがない。
「そなたの代わりはどの娘であろうな? 長い髪の痩せた娘か、茶色い髪の若い娘か。ああ、それとも」
「いいかげんにして。私、仕事なの。忙しいの。邪魔なの。帰って。もう来ないで」
「吾にそなたの代わりはおらぬぞ。そなただけじゃ」
甘い言葉も鬱陶しい。苛立ちに任せ、私は手元にあった硬いものをぐっと掴み寄せた。
「あのような男のことはさっさと忘れて、はよう吾と契りを」
「……うるさい!」
投げつけたステイプラーはパーテーションにぶつかって鈍い音を立て、床に転がってかしゃんと開く。はずみでカーペットの上に転がり出た芯を見つめているうちに、あまりの情けなさに涙が滲んだ。
「時任、どうかした?」
しゃがみ込んでステイプラーを拾おうとしていた私の頭上に、先輩が声をかけてくれる。安斎さんとペアを組むことの多い営業担当だ。
「大丈夫?」
大丈夫です、と私は俯いたまま答えた。涙こそこぼしていないものの、紅く染まっているだろう目許を彼女に見られたくなかった。
「具合悪いとかじゃないよね?」
もういっそ具合の悪いことにして、残業を切り上げてしまおうかと、一瞬だけそんなことを思った。やっぱり会える、会いたいから来ちゃったと恋人の前に姿を見せたら、彼は笑ってくれるだろうか。あるいは困った顔を見せてくれるだろうか。
――ちゃんと、困ってくれるだろうか。
「すみません。手が滑って、これ落としちゃって」
ステイプラーを見せながら立ち上がり、照れの混じった苦笑いを向ける。まさか、妖怪狐に痛いところを突かれて癇癪を起しただけです、などと云えるはずがない。
「なんでもないならいいけど。それ終わったら、時任もごはん行ってきな。安斎には云っておいてあげるから」
ごはんなんかいいから一分でも早く帰りたい、とは云えなかった。先輩がこういうふうに云うってことは、きっと図面に直しが入ったのだ。猫の手代わりの私にもできる作業があるということなのだろう。
はい、と私は返事をして、ふたたびコピー機と向かい合った。原稿をセットし、設定を直し、作業台に戻って製本の下準備をする。
苧環の姿はいつのまにか消えていた。
恋人の浮気は、もう性分のようなものだ。私のほかにもうひとりかふたり、あるいは三人か四人の女の子が彼の恋人を自認している。
自分を唯一だと信じている子もいれば、私のようにほかの女の子の存在を知っている子もいる。
立派な多重交際。
でも、彼が誰にも本気にならない、という云い方は正しくない。彼は誰に対しても本気なのだ。自分を飾るアイテムとして、彼は恋人たちをとても大切にしている。
そう、彼はそのときどきに応じて女の子を使い分けているのだ。
こどもっぽく、母性本能をくすぐる男になって誰かに甘えたいときには、しっかり者の保育士を。
独占欲の強い男になって嗜虐性を満足させたいときには、被虐趣味のあるキャリアウーマンを。
仕事熱心な真面目な男を演じたいときには、素直だけが取り柄の田舎娘を。
よくない遊びもいっぱい知っている危険な男でいたいときには、警戒心をどこかに置き忘れてきたような女子大生を。
似合う服がひとつではないように、気に入った時計がひとつではないように、彼にとっての恋人は、その日の気分によってころころと変わる。途中で気が変わって、別の子を呼びたくなっても問題はない。仕事柄、云い訳には事欠かないからだ。――急にお得意さんが来ちゃってさ。仕事だから断れないんだよ。お詫びに今度、美味しいもの奢るから許してよ。
私が恋人の正体に気づいたのは、つきあいはじめてすぐのことだ。
素直な田舎娘の役を割り振られた私は、素直なだけでなく、愚かなまでに彼に骨抜きにされることまでを求められた。ほかに誰と付き合っていても、私のことも見てくれるならそれでいいの。
そんな阿呆な女がどこにいるか、と思う。
けれど、気がつけば私は、彼の思うとおりの女になっていた。
自分のほかにも恋人がいることを知っていて、彼が自分で云うほど真面目ではないことを知っていて、それでも別れようと云わないのはわたしのことを好きだからだと心のどこかで信じていて、――決して、自分からは別れを切り出さない臆病な女。
それが、私。
こんな男に引っかかった自分を莫迦だと思う。心底、莫迦だと思う。でも、それでも、私は自分から彼を切り捨てることはできなかった。
四年半前、私はおばあちゃんと暮らしていた家を出て、専門学校に進んだ。はじめての独り暮らし。はじめての都会。解放感よりも気楽さよりも先に訪れたのは、淋しさだった。
思えば私は、あまり家族の縁に恵まれていない。父親の顔は知らないし、母親にも捨てられたようなものだ。おばあちゃんは親代わりになってくれたけれど、どうがんばっても母と娘にはなれなかった。
だから、淋しさには慣れているつもりでいた。都会のワンルームマンションにひとりでいるのも、田舎の広い家におばあちゃんとふたりでいるのもおんなじだ、たいした違いはないと思っていた。
全然違った。大違いだった。
うっかり莫迦なことをしてしまっても、叱ってくれるおばあちゃんはいない。なにかいいことがあって浮かれていても、聞いてくれる友だちもいない。むしゃくしゃすることがあって八つ当たりしたくても、はいはいと聞き流してくれるママもいない。
淋しくて、淋しくて、――いっそ、こわいほどだった。
部屋にひとりでいるときに私が死んじゃっても、誰にも気づかれないんじゃないかとさえ思った。
冷静になって考えてみれば、専門学校で新しく知り合った友だちだっていたし、おばあちゃんはしょっちゅう電話してくる。そんなことはありえないというのに、とても淋しかった。
二年間の専門学校生活を終え、無事に就職したころには、それでも寂しさは少しずつ薄らいでいた。仲のいい友だちもできたし、おばあちゃんからの電話は相変わらずだったし、たまにはママとごはんを食べることだってあった。ママは都会が好きだからか、田舎にいたころよりは顔を合わせる機会も増えていたのだ。
もう大丈夫だと思った。
彼に口説かれたのは、ちょうどそのころのことだ。
知り合ったのは、それよりも少し前だった。通っていた美容院でずっとお願いしていた美容師が退職し、代わりにと現れたのが彼だったのだ。
お客さんのこと、ずっと見てたんですよ、ぼく。
それが最初の挨拶だった。可愛い子だなって。髪、いじってみたいなって。ずっと気になってた。辞めたやつには悪いけど、ぼく、いまちょっとラッキーって思って浮かれてる。
口説かれているとは気づかなかった。でも、彼の話を聴いているうちにじわじわと頬が熱くなっていくのがわかった。シャンプーやカットの折、なにかの拍子で彼の指先が肌に触れたりするたびに、その熱はどんどんと高まっていくようだった。
また、指名してくださいね。ぼくの名前、
私は全然大丈夫じゃなかった。慣れたつもりの淋しさは、私の心を確実に蝕んでいて、よくない男に引っかかったのだと気づいたあとも、離れることはできなかった。
――だって、彼の傍を離れたら、またひとりになっちゃう。
彼が私に求めることは単純だ。
野暮ったいなりに精一杯のおしゃれをして会いに来ること。たとえそれが上司や先輩の愚痴であっても、彼の前でほかの男の話をしないこと。彼がする話には、いつでも大袈裟なほどに頷いて、どんな意見にでも賛成すること。
キスもセックスも、はじめては全部彼にあげた。彼はそのことにもとても満足していて、だから、私はまだ彼のお気に入りのひとりでいられるのかもしれない。
わかっている。
彼が求めているのは恋人なんかではなく、ひたすら彼のことだけを肯定するお人形だということは。
彼が私をただのアクセサリーだとしか思っていなくても、それでも彼は私にやさしい。会いたいと云えば会いたいと返してくれるし、たまの逢瀬にはちゃんと抱きしめてくれる。仕事を理由に約束を反故にしても怒らないし、彼が選んだ映画の途中で寝ちゃっても文句も言わない。
私は彼におばあちゃんの話をしたことがない。ママの話をしたことがない。自分が育った町の話をしたことがない。
彼はきっとそんな話に興味はない。彼が聞きたくないことは話さないようにしている。
なんてからっぽな私たちの関係。
それでも私は彼の手を離せない。離したくない。
もう、ひとりにはなりたくない。
――だから、吾がおるではないか。
ふと、苧環の声が聞こえたような気がした。
製本テープをカットする手を止めて辺りを見回す。誰もいない。あたりまえだ。
――吾はいつでも真優の傍におる。
つめたい手でうなじを撫でられたような気がした。
びくりと肩を竦め、慌てて首を横に振る。製本の終わった図面を抱えて、コピーコーナーを出た。
――真優を決してひとりにはせぬ。
脇腹にふさふさとした尾の感触を覚えてぞくりとした。瞬時に身体が熱くなるのがわかる。
安斎さんのデスクの上に図面の山を築き、財布だけを掴んでオフィスを飛び出した。
頬と耳とが熱くてたまらない。
こんな顔を誰にも見られたくなかった。心細さに負けて狐の姿を探してしまう情けない顔を、誰にも見られたくなかった。
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