月光
第32話
ここへ来て、何日がたったんだろう。とにかく、僕らはまだリリィで暮らしていた。別に不自由することなんかなかった。ヒマになれば(というかヒマしかないけど)ゲームコーナーで好きなだけ遊べるし、マンガだって床に寝っ転がって読み放題だ。プールも気が向いたらいつでも泳げる。自転車やローラーブレードで(昼間なら)好きなところに行ける。まあ、どこに行っても崩れた建物ばかりだけれど。
あるときはフードコートの店の設備を勝手に使ってたこ焼きパーティをした。カッコの作ったたこ焼きはヒドかった。やっぱりサオリは女の子だけあって、上手に焼いた。またあるときはラーメン屋ではいろんな味のスープを混ぜてみた。その結果、やっぱりミソラーメンが一番おいしい、ということになった。特製ハンバーガーを作った。英ちゃんはケチャップを目茶苦茶にかけまくって、残した。だいぶ汚したまま店をほうっておいたけれど、次の日にはなぜかすべてがきれいになっていた。僕らは動物園のオリの中で暮らす動物のように、ただ毎日を過ごし続けた。
サオリは時々姿を消した。でも、僕はサオリがどこへ行くのか大体分かっていた。というのは、何度か屋上へつながるあの二階の通路に入っていくのを見たことがあったから。行き先はその先にある、あの神社に違いない。なんでそんなにあの神社にこだわるんだろ。でも、それをサオリに聞いてもきっと理由は教えてくれないだろう。サオリは、なにか僕らに秘密がある気がする。もちろん、僕らに対して悪意はないみたいだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます