第28話

 ヒューン、ヒューン

 パンパンパン!

 ヒューン、ヒューンヒューン

 景気のいい音を立ててロケット花火がリリィの屋上から暗やみに向かって飛んでいく。なんと30連発だ。僕は木材売り場からいくつかの木を持ってきて、ロケット花火の発射台を作ったんだ。そこに花火を並べて順番にチャッカマンで火をつけていく。まるでミサイル発射をしているみたいで僕らは大興奮した。

 「ウォー、スゲーカッケーじゃん!」

 英ちゃんもカッコも大喜びだ。

 駐車場には相変わらず沢山の“さまよい”がひしめいている。最初見たときは不気味だったけれど、今ではもうなんとも思わなくなってしまった。それにいくらロケット花火を打ち込んだところで、“さまよい”は驚いたりはしない。いつもと同じようにウロウロとさまよっている。

 「ロケット花火って大きな音がするのね!わたしこんなの初めて見た。孝くんて、いろんなこと思いつくよね」

 サオリがニコニコしながら言った。僕はちょっと得意になった。

 「そうかな。なーんか頭にいろいろとアイディアが浮かぶときがあるんだよね。それを絵に描いたり、ピアノで弾いたりもするんだ」

 「ピアノ?なにそれ」

 「ピアノ知らないの?」

 「う、うん・・・」

 僕はこの世にピアノを知らない小学生がいるなんて信じられなかった。でも、あるいはサオリなら仕方がないかもしれない。知らなくても、ぜんぜん不思議な感じがしないんだよな。

 「ピアノは楽器なんだ。十本の指で弾くんだ。とてもいい音がするんだよ。そういえばここには楽器売り場があるから、今度弾いてみせるよ。僕、コンクールがあるから練習中の曲があってさ」

 もう今更コンクールの練習の必要もないんだけどね。

 「わあ、楽しみ。どんな音なんだろう・・・」

 僕はサオリがどうやら本気で言っているらしいことがわかった。それなら、逆に僕のピアノでびっくりさせてやろう。

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