第69話 【恐竜人類『アルケオ』】
<概要>
恐竜人類『アルケオ』は少なくとも数万年前から冒涜大陸に生息していた生物である。
※『アルケオ』は恐竜人類が自種族を指す呼称。
外見は後述の通り鳥類に似るが、鳥類から派生した生物ではなく、猿と鳥の中間種からの派生生物と考えられている。
※この「猿と鳥の中間種」はアルケオ内で『
<人類の発生との関係性>
霧の外に暮らす『人類』もアルケオからの派生種であると考察されている。
翼を持たず、鱗を持たず、爪を持たず、ただ猿のような毛だけを持ったアルケオの派生種『
人類の『祖』にあたる生物は何らかの事故で霧の外へ逃走し、現在のエーデルホルン王国、ザムジャハル帝国の民の祖になった可能性が高い。
※後に葦原および唐の『祖』にあたる人物が大陸外より合流。その後、ブアンプラーナ人が生まれたと推測される。
<外見および身体>
人類とほぼ同じ外見を持つが、手首から先と膝から下は緑色の鱗に覆われ、鳥に似た五本の
手、脚共に人類の「手」相当の動きを実現できる。
※幼少時は手の平に鱗が生えない。
腕部全体と背にかけて一連なりの翼が生えており、ごく短い距離であれば滑空することもできる。
翼の色は緑色で、既存の鳥類に比べ大きく強靭な羽を持つ。
頭蓋骨および脳容量は人類とほぼ同じ。
顔立ちはエーデルホルン・ザムジャハル寄り(白い肌、彫りの深い顔)であり、背丈や手足の長さそのものは人類と同等。
髪色は黒系、茶系、金色などが確認されている。
瞳の色は鮮やかな
五感はおしなべて人類より発達しており、中でも聴覚が非常に鋭い。
※遠方の音を捉える能力が高いわけではなく、音を細かく聞き分ける能力が高い。
膂力、頑健性、反射速度、俊敏性のすべてにおいて人類を大きく上回る。
戦闘となった場合、弓兵がかろうじて視認可能な速度で行動する。また、一定以上の経験を積んだ戦士でなければ防御および回避といった対応は難しい。
※後述する非戦闘員「安」もほぼ同様。
攻撃には爪を用いるが、蹴り、噛みつき、道具による殴打や斬撃も確認されている。
成長速度は人類よりやや早く、雌は生後十二年ほど、雄は生後八年ほどで生殖適齢期を迎える。
※社会から「成人」として認められるのは適齢期より三年から五年後。それまで性交渉は許可されない。
寿命は平均六十年ほど。
体重は人類よりやや重い。骨格、骨格筋も非常に発達しており、脂肪は薄め。
訓練することで恐竜の声を再現することができる。これによってある種の恐竜に指示命令を行うことが可能。
金切り声による威嚇も可能で、至近距離で聞いた場合、一時的に行動不能に陥ることが予想される。
※人類より長い気道を持つ可能性がある。
高山での活動も可能なことから、肺に
肺を除く内臓の造りは検証中。
心臓の存在は確認されている。
授乳器官としての乳房が存在し、
※用途については後述。
肛門と尿道は別に存在しており、膣も存在する。
鳥類のような排出口は持っていない。
<社会について>
社会の頂点に君臨するのは後述する大始祖の加護を受けた女王である。
※女王の血脈は建国以来、一度も途絶えたことはない。
求められているのは王ではなく女王であり、一族に生まれた男児は例外なく殺害される。
女王の座は代々長姉に引き継がれるが、長姉が傷病、出産等で動けない場合、あるいは気分によって別の姉妹が王座を継ぐことがある。
移譲された王座は長姉に戻されることもある。
※長姉が四十歳を迎えた段階で姉妹への譲渡は不能となり、長姉の子に王座が継承される。
※こうした規則も女王の一存で変更される。
現在の生存個体数は1,200人程度。
雌900、雄300。
社会は緩やかな階級制であり、女王の下には以下の役職が連なる。
・政治を司る『
・学問に携わる『
・軍務に就く『
・それ以外の雑事に携わる『
・安に管理され、より雑多な務めを果たす雄が300名程度。
※階位上、爪と安は同列に扱われる。
※雄の下に人間を含む家畜が組み込まれている。
成人になった際、女性は適性に応じていずれかの役職に振り分けられる。
役職間の移動は可能だが、座に就くことができるのは幼少時より特別な才能を示した者のみ。
上記役職とは別に、女王直属の『
選定条件は「アルケオの繁栄に欠かせない、様々な知識や技芸を持つ十人」であること。
※軍人とは限らない。現女王の方針で、美食家や建築家なども選定されている。
※女王直属の『十哲』は既存の階級によらず、独自の裁量で行動可能。
※女王の代替わりによって再選定される。
十哲とは別に、「偏食者」と呼ばれる個体が存在する。
一般的なアルケオと異なる色の鱗を持ち、非常に強力な身体能力を持つ個体であると推察される。
人肉を食さない可能性がある(詳細は不明)。
貨幣は流通しておらず、物々交換で経済が成り立っている。
※かつては流通していた。
<食性>
肉食寄りの雑食性であり、野菜や果物、魚や貝類、昆虫に至るまで様々なものを食する。
主たる食料は肉食恐竜や哺乳類である。
※人類も例外ではなく、基本的には『食糧』とみなされている。
※人肉を食するのは主として軍務に携わる『爪』である。
ただし羽を持つ鳥類、後述する
前者は種としての近縁性が高いためであり、後者は危険な生物であるため。
農耕文化もあるが、ごく単純な作物しか栽培できない。
※恐竜によって土地を荒らされやすいため。
収穫した作物の多くはアルケオ内部で消費されるが、一部は家畜(人間含む)の飼料として利用される。
農業に従事するのは雄と一部の雌である。
<恐竜との関係について>
恐竜は『
爬虫類の派生種として考えられており、特別な生物であるとの認識は無い。
※恐竜は数十万年前より冒涜大陸に生息していたと考えられている。
アルケオにおいて恐竜は以下の三種に大別される。
・
・
・
肉食恐竜とは捕食者・被捕食者の関係にあり、食肉あるいは物資運搬の家畜としても利用される。
野生種も含め、肉食恐竜はアルケオに対して極めて従順であるため鞍や首輪、鎖は使用せず騎乗・飼育する。
※稀に、傷ついた個体や子供が襲われることもある。
※アルケオ内部では『
前述の通り食用にするのは獣脚類のみで、鳥盤類や竜脚類を捕食・家畜化することはない。
なお、稀に発生する『夜光種』については家畜ではなく共存関係を築く。
※夜光種とは光鱗を持つ特殊な外見の恐竜であり、非常に高い知性を持つことで知られる。
<雌雄について>
雌の方が強靭な肉体を持っており、好戦的。
社会全体においても雌が主導権を握っており、軍および政治の中枢に位置するのもすべて雌。
※これに対し、特に雄側から不満の声は上がっていない模様。
雌は成体になると共に以下のような名前を与えられる。
『●●(自然名詞)の、●●い(色彩の形容詞)、●●い(形容詞)、●●い(形容詞)、●●(自然物)』
例)百合の黄色い清い熱い蜜、夜の青い暗い鋭い星、秋の赤い甘い懐かしい風など
雄は概して虚弱で、消極的。身体強度は人類側の成人男性とほぼ同程度。
主として農耕や手芸、家畜の世話や道具の手入れ、激しい運動を伴わない食料調達や成人までの子育て等に従事する。
名前は「お●▲」の形式。●には色彩の名詞一文字、▲には自然物の名詞一文字が入る。
例)お
<生殖について>
人類と同じく生殖器を用いた生殖活動を行う。
種族固有の求愛行動等は存在せず、人類と同様、一年を通して繁殖活動が可能である。
※行為は基本的に雌が主導する。
雄を生む場合は卵生で、雌を生む場合は胎生である。
雄は基本的に三体から四体が生まれ、生後間もなく野外の巣に放置される。
雌は人類と同じく一体ないし二体が臍の緒で母体と繋がり、臨月を迎えると産婆の手で取り上げられる。
※かつては雄を抱卵して育てる習慣もあったが、奇形の発生率が高く、また抱卵に人手が必要なことから現在では行われていない。
生後、雄は虫や草木、雨水を自力で獲得することで成長し、一定年齢になったところで同種に拾われる。
※この間、弱い個体は飢餓や衰弱、肉食恐竜に襲われることで死亡する。生き残った個体のみがアルケオに迎えられる。
雌は授乳と経口給餌によって養育される。
一体一体に母親とは別の『安』がつくため、傷病による死亡は滅多にない。
※奇形児や黒い羽を持って生まれた子は男女に関わらず野に棄てられる。
なお、人類と生殖行為を行った場合も子供を産むことができる。
※生まれる子はすべてアルケオとなる。
誕生した子に対する蔑視や社会的差別は存在せず、アルケオ間で生まれた子と同等の扱いを受ける。
<人類との関りについて>
アルケオは人類より高い身体能力を持つ一方、霧の中の人類は言語を始めとする文化を持たない。
そのため、冒涜大陸において人類はアルケオの家畜として扱われる。
※繁殖用および食肉用に飼育される。
人類には繁殖用および食肉用として健康な肉体を維持することが求められるため、安や雄が給餌と運動を管理している。
男女共に15歳~40歳程度が飼育対象であり、適齢期を終えた人間は食肉用に処分される。
※しばしば若年者が珍味として食肉処理されることもある。
家畜人間の体毛はほぼ伸ばすに任せられているが、夏季は刈り上げることもある。
爪は各個人が削るため手入れを行わず、垢のみ定期的に湯浴みで落としている。
多くは言語機能を持たないため、アルケオは唸り声や仕草で家畜人間の意図を解する。
妊娠した場合は雄と隔離し、子育てに専念させる。
雄はしばしば軍に接収され、生殖あるいは愛玩用の奴隷として扱われる。
※奴隷は持ち主同士で品評し合うことがある。
※このことから、人類とアルケオの容貌に対する美意識は近いものと推察される。
奴隷の一部に対して主が言語を教え、知恵を授けることもある。
こうした個体はしばしばアルケオを脱走し、霧付近で暮らすことがある。
※脱走個体は狩猟対象として扱われるため、アルケオからの追撃が行われることはない。
<文化・道具について>
アルケオは多くの場合、道具を用いない。
※爪が道具の代替物として有用であるため。
武器として用いられるのも手足の爪であるが、一部の個体は武器を使用することが明らかになっている。
衣装についても人類同様の文化が存在する。
ただし翼や爪の使用を妨げないよう、筋肉による防備の弱い胸元と下腹部を布で覆うのみ。
※戦闘が予想される場合は骨の防具を使用することもある。
人類ほどの依存度はないものの、火は生活の一部となっている。
薪のみならず、獣脂や蝋燭、
上流階級に対する貢物として装飾品や調度品を製造することがある。
これは手先の器用な雄や一部の雌が担当する。
嗜好品として宝石や特殊な形状の石を珍重する文化はあるものの、鑑定や研磨に携わる者はごく僅か。
香料を使用することもあるが、高度な化合技術は持っていない。
話し言葉は霧の外の人類と共通である。
しかし書き言葉を持っておらず、意思疎通はもっぱら口頭による。
※人類より先に言語を開発した可能性が高い。
歴史や文化の継承は科学者間での口伝によるところが大きく、信頼性は高くない。
<暮らしについて>
アルケオの本拠地は冒涜大陸中央の『大山脈』に存在する。
一部は女王のみ立ち入りを許される禁域であるが、それ以外は居住区や牧場として使用される。
※禁域の一部には木が存在するとされる。
住居は主として天然の洞穴や、山の地表をくり抜いた穴の中に造られる。
※崩落の危険を避けるため、一定以上の階級層は高所に住居を設ける。
住居には子作り用の部屋や倉庫、食堂、便所、それに談話室などが存在する。
寝所や毛布の文化もあるが、アルケオは屋外の休息でも心身の疲労を癒すことができるため数は多くない。
その他施設として以下のものが挙げられる。
・水源。牧場。農場。
・集会所。墓所。しばしば始祖が訪れる大庭園。
女王および座は個人間の紛争解決や、種族としての繁栄を維持する方策について日々討論を行う。
※行政・司法・立法を兼ねる。
※文書を保管する文化がないため、複雑な法制度は持たない。
探は野草や地理、生物や歴史などを調査研究して、アルケオ全体にその知見をもたらす。
前述の通り保管文化が無いため、多くの知見は数世代で途絶えることが多い。
爪は狩猟採集に従事する。
また、家畜である肉食恐竜の給餌や捕獲も行う。
※狩猟の範囲は不定期に変更される。
爪に組織はなく、一定数の集団において最も強い個体が自動的に指揮を執る。
爪は恐竜に対して突撃、転回、退却といった簡単な指示を出すことができる。直々に率いることができるのは大型の種で十頭程度。
※複雑な指示を出すことができるのは科学者のみ。
安は雄や、彼らの仕事の管理を行う。
家畜の世話や農耕、子育てや繕い物、および爪の身の周りの世話も行っている。
日中は各役職の務めを果たし、日没後は生殖や休息の時間とされる。
<道徳観について>
自分たちに外見が類似した『始祖様』と呼ばれる恐竜を格別に敬愛している。
※アルケオの起源であると考えられている。
容姿は青竹色の翼を持つ、やや小柄な鳥類。
※恐竜と鳥類の中間種の可能性が高い。
食性や生態は不明だが、始祖が目前を通り過ぎた場合、アルケオは頭を下げ、爪を下ろす。
また、傷ついたり病気の個体が発見された場合、速やかに保護する。
※女王の命により、傷つけることは禁じられている模様。
始祖の中で最も大きく、アルケオ建国時に存在した種を『大始祖様』と呼称する。
※アルケオの歴史が正しい場合、数千年または数万年前に存在していた生物。
歴代の女王は大始祖の加護を受けているとされる。
大始祖は既に死んでいるものの、アルケオでは『死者が別世界から自分たちを見守っている』という考えがあり、大始祖の存在が女王の統治および道徳観念の醸成を助けている可能性がある。
女王が「アルケオの繁栄に寄与した」と判断した個体は、死後、大始祖の世界へ行けると信じられている。
※科学的な証明はなされていない。
今後も種族繁栄(≒人類の狩猟・捕食・隷従による個体増加)を目的とした侵攻が続く可能性が高い。
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