牧悟郎の正体(裏ネタバレ)

『牧悟郎』とは『何者』だったのでしょうか。

 もちろん分かりません(爆死)


 これがふつーの映画ならば、手紙などが残されていたり、彼の子供が出てきて過去の様子を語ったりするのですが、そういう演出はまったくありません。


 作中では断片的な情報が語られるだけで、その情報もどれだけ正確なのか分かりません。『アメリカ』も全ての情報を開示しているとは限りませんし、誰かが『嘘』を言っている可能性も考えられるわけです。


 本人が一度も登場しない以上、作中で語られる『牧悟郎』という人物は『本体の影』に過ぎません。アメリカ大統領(シン・ゴジラ版)と同じです。視聴者から見れば、二人とも大きな決断を下した『顔の無い怪物』なのです。


 つまり、作中の情報だけを頼りにしていては、『牧悟郎』という人物の『本体』に辿り着くことが出来ません。


 ので、メタファー論を使用しましょう。象徴論とも言います。

 イコール(=)で繋がる『牧悟郎』という人物の役割を考えるわけです。

 前にも少しだけ使用しましたね。


 まず真っ先に考えられるのは『核の被害者(家族)』の象徴。

 これは『牧悟郎』という人物の『本体(の一部)』で間違いないのですが、メタファーではなく直接的なので除外。作中で『妻を放射性物質で亡くしている』と直に表現されています。

 

 次に考えられるのは『人類(日本・核)に恨みを持つ生命体』の象徴。

 これもあり得ますが、小生は『牧悟郎』が『恨んでいた』とは考えていないので除外。ただ『ゴジラという最も進化した生命体』が『人類を滅ぼす』というのは、なかなか皮肉的な着眼点かなーと思います。


 うむむ、なかなかいい考えが浮かばないぞい。

 こういう場合は『牧悟郎』が『何をしたのか』を考えましょう。


 牧悟郎は『ゴジラを目覚めさえ、日本へと導いた張本人(主犯格)』である。

『第五形態』への進化を目的としながらも、ゴジラを『倒すための手段』を暗号化したうえで人類に残した。


 つまり、この物語を始まらせたのが『牧悟郎』ならば、この物語を終わらせたのも『牧悟郎』である、と考えることができます。


 この『シン・ゴジラ』という物語そのものが、全て『彼の計画通り』だった可能性を指摘することができます。そう考えるならば、『牧悟郎』という人物はまるで『シン・ゴジラ』という物語を作った『神様』のようですネー。

 

 はい、そうです。

 これが『小生の結論』になります。


『牧悟郎』が指し示す存在とは『(映画)製作者』である、と小生は考えました。

 もっと具体的に言うならば、総監督である『庵野秀明』氏のメタファーであると推測できます。


 つまり、『シン・ゴジラ』という作品を制作(監督)した『庵野秀明(氏)』と、『シン・ゴジラ』という物語(計画)を描いた『牧悟郎』は、物語の外から観察するならば、『同じ立ち位置にいる存在』と言えるでしょう。


 もちろん『同一存在』ではありません。

 あくまでも『庵野秀明』氏の一部が『牧悟郎』というキャラクターに宿っていると考えるべきですね。一部であり、あくまでもメタファーなので、物語的に影響を与えるような『本体』でもありません。


 ですが、そうすることによって、一つだけ意味を変化させることができる言葉があります。それは、


『私は好きにした。君らも好きにしろ』


 という言葉です。

 これを『庵野秀明』氏のメッセージである、と解釈するならば、こう読み解くことができます。


『私は好きにゴジラを製作した。君ら(視聴者・関係者)も好きに判断しろ』


 まるで監督からの『挑戦状』のようですが、『シン・ゴジラ』という物語の本質を捉えた文章であるような気がします。


 もしかすると、『監督』ですら自信が無かったのかもしれないません。

 視聴者がこの『シン・ゴジラ』という映画を受け入れてくれるか、という自信が。


 だからこそ、自分の好きなように作るしか無かった。

 自分が面白いと思う『ゴジラ』を視聴者に叩き付けるしか無かった。

 

 それが『私は好きにした。君らも好きにしろ』という文章に込められた本当の意味なのかもしれません。そして、各自が好きにした結果、『シン・ゴジラ』という作品は多くの人々に受け入れられたわけです。


 さてさて、こういう風に勝手に解釈すると怒られるような気もしますが、小生はそう解釈しました。小生も『好きにしている一人』なのだから、文句を言われても困るのである。ぷんぷん。


 では、次回最終回『小生とシン・ゴジラ』で会いましょう。


<第十六回 完>

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