83話 水着回?
何回か乗り換えつつ、電車に揺られること一時間ちょっと。たどり着いたちょっと寂れた田舎の駅からバスでさらに10分ほど。
青い空、青い海、ビーチパラソル、そして海の家。誰がどう見てもそれは紛れもなく完璧なビーチだった。
「やっほー!やっぱ海はテンション上がるね~!」
サングラスをかけてやたら上機嫌の琴里が山での掛け声をする。当然ながら返ってくるのはやまびこではなく波の音である。
一同は海を見てテンションが上がり、すぐにでもビーチに足を踏み入れたい、といった様子だが、ビーチの入口は虎ロープで閉ざされている。その様子を見て、ここのスタッフであろうTシャツの男性が近寄ってきた。
「あの……すみませんがビーチはただいま閉鎖中で……」
とても恐縮している様子でこちらまで「いえいえ」と腰を低くしたくなるような話し方だ。
「問題ない。我々は軍から来た者だ」
そう言ってエルは方の大きく出たワンピースのポッケから隊員証を取り出して掲げる。それに続き、ハクトらも各々の隊員証を取り出して提示した。
スタッフは面食らって一瞬動きを止めた。そりゃあ、どう見ても義務教育が終わってないような、子供っぽいワンピースに麦藁帽の女の子と、その近所の高校生のお兄さんお姉さんみたいなヤツらが隊員証を見せてくるんだから驚きもするだろう。弱冠二名はどう見ても遊ぶ気満々だし。
しばらくして一応状況は飲み込めたのか、「どうぞ……」と虎ロープを一部だけ外して中に入れてくれた。当たり前のことだが、ビーチに客は誰一人おらず、完全に貸し切り状態になっている。
「よっしゃ遊ぶぞー!」
砂浜に入った瞬間に琴里とメッシャは服を脱ぎ捨てた。女の子のビキニ姿を見るのは高校の修学旅行以来か。
そのまま服を丸めてその辺に置くと、さっさと海に入って水をかけたりなんだりし始めた。ちゃんと今日来た理由を理解しているんだろうな……。
「って、エルも脱ぐの!?」
「なんだ、私が脱いではいけない理由があるのか?」
エルはその身体によく似合う(?)スクール水着だった。最近は小学生ですらスクール水着を着る子は少ないと聞くが……。
ハクトも一応水着を下に着てはいるが、視界全部に警戒しておく。敵の攻撃はいつどこから来るのか分からないのだから。
――と、その時誰かのかばんからけたたましい音が鳴りだした。それを聞いた琴里がメッシャの手を引っ張って急いで戻ってくる。
「なんか来たよ!」
琴里はそう言いつつ、ユニットを体に装着し始める。
「なんかって何!?っていうかなんで分かんの!?」
「いつ敵が来てもいいように偵察用ドローンを飛ばしといたの。鳴ったってことは明らかな異変があったってこと」
いつの間にそんなことを……海中の異変を察知するようなプログラムなんてよくも組めたものだ。
「あ、見えた」
琴里に急かされて一同がユニット装着完了したちょうどその時、大きな足が海上に飛び出してきた。
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