82話 飛行ユニット改良

「お前たち。今から海に行くぞ」

 会議に出席していたエルが部屋に戻ってきて早々、エルを待っていたハクトたちにそんなことを言った。

「まじでー?えっと確か水着はー……」

「海!ビーチバリボー!一度やってみたかったんだよネ!」

 琴里とメッシャの二人は完全に海を楽しむ気満々だ。

「ちょ、ちょっとまって。いきなりどうして海なの?」

 ハクトだけはそのムードに流されずにエルに訊ねた。まさかエルのことだ、本気で遊びに行こうなどと言っているわけではあるまい。

「それがだな、千葉県の九十九里浜にて奇妙な海難事故が多数発生しているらしい。海水浴客だけでなく巡視船も巻き込まれていて、本部に要請がきた」

「つまり任務の一環ってこと?」

「当たり前だ」

 エルは涼しげな表情で言う。もちろん、それで怯むような二人ではなく、相変わらず洋服や水着を選んでいる。というかその小さいタンスのどこにそんなたくさんの洋服が入っていたのか。

「任務だったとしても海に行ったら楽しまないと」

 ――だそうです。

 しかし、ここでハクトは一つあることに引っかかった。

「ねえエル、もしそこに行って兵器とかが出てきたらどうするの?ユニットを身に着けていくんなら服は選べないよね」

 任務だという言葉に耳を貸さなかった二人がハクトの質問に動きを止めた。もしユニット付けるんなら水着は着られないのだから。

「いや、その点については大丈夫だ。こんなこともあろうかとユニットを改良してどの服の上からでも取り付けられるようにした。部品数も多いわけではないからかばんに入れて持っていけばいい」

「ひゅー!さすがエル!」

 琴里が口を「ω」みたいにして茶化す。エルには悪いが、今回の改良ばかりは余計だったとハクトは思った。


※ ※ ※


「お……重……」

 ユニットパーツの入ったかばんは総重量8kg。運動神経皆無の琴里は背負うのにも一苦労、背負った後も足がぷるぷるしている。ちなみにメッシャは軽々と持ち上げているが、それはそれで異常である。

「さあ、準備ができたら行くぞ」

 エルも身長に似合わない大きさのリュックを背負って一番先頭を歩いていく。あの小さな体のどこにそんな力があるのか教えてほしい。……もちろん、今回はエルも白衣一枚という奇怪な服装ではない。

 男のハクトにとっても重いかばんを背負って、一行は海を目指してえっちらおっちら出発したのであった。

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