81話 海難事故
九十九里浜。それは有名な海水浴場であり、夏場には毎日一万人もの海水浴客が来ることもある一大観光地だ。近年海水面の上昇に伴って砂浜面積がかつての1/5ほどにまで縮小してしまっているが、他の砂浜に比べればその被害は少ないほうで、閉鎖に追い込まれたビーチも少なくはないのだ。
6月27日に海開きを迎え、今年も例年通りたくさんの人が海水浴を楽しんでいた。事件が起こったのはそんなさなかだった。
ことの発端は海開きして三日が経った30日のこと。ライフセーバーの本部に行方不明者の情報が同時に複数入った。昼から夕方にかけて、合計7人も。
海難事故が多いとはいえ、一つの海水浴場でこれほど一度に行方不明者が出るのは異常だ。もちろん、その日いるライフセーバー総出で近辺を捜索したものの発見するに至らず、警察に捜索願を出すに至った。
そしてその次の日の朝。ちらほら客の来ているビーチに甲高い叫び声が上がった。
開店準備をしていた海の家のスタッフが見に行くと、そこには何か白いものが複数転がっているのが発見できた。――近くに行くとそれが人骨であることはすぐに分かった。
人骨はバラバラになった頭がい骨が二組と、どこのものかわからない骨が広範囲に渡って流れ着いていた。骨たちにはひとかけらも肉などが付着しておらず、まるで磨かれた模型のように白く光っていた。
当たり前だが、海で溺れてこのようになるわけがない。それ以前に、自殺にしても突き落とされたにしても、海で死んでうじ一匹湧かないなど到底考えられないことだ。
九十九里浜海水浴場はすぐさまビーチを閉鎖し、警察が捜査を始めた。だが、被害はこれで終わらない。
地球防衛軍水上部隊(位置的には海軍だが、海上保安庁のようなもの)が調査のため小型船でビーチのそばを航行中、急に何の前触れもなく沈没してしまったのだ。さらにそれを救出に行った小型船もまた同様に吸い込まれるように海に沈んでしまったのである。
ヘリでの救出を試みようとしたが、ライフジャケットを身に着けていたはずにも関わらず、ヘリが上空に到着した時には一人として影すらも発見できなかった。太古の昔恐れられたバミューダトライアングルのような話だが、これによって水上部隊のほうはかなり参ってしまったらしく、その報告は遂に日本支局東京本部にも回ってきたのだった。
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