80話 次の脅威
夕飯時。エルは連絡用タブレットを手元に、いつも通り上から下りてきた報告を告げ始めた。
「この三か月間で地球に飛来した小型兵器は787万強、飛来した場所は52か所、死者は300名強うち殉職112名、負傷者は1000名ほど、最後の飛来から約3週間音沙汰がない状態だ」
700万。途方もなさ過ぎて想像もつかない。最初に八王子に飛来した時が18万だったのだから、それのうん十倍だ。対飛隊が暇を持て余している間に地球上は小型兵器で埋め尽くされそうである。
18万の兵器が飛来した東京でさえ埋め立て地は兵器の残骸で溢れているというのに、700万なんていったら地球の何%を埋め尽くしているのだろうか。
「ちなみに被害者の多くは南米の小さな村での被害者だ。ヨーロッパやその他大都市では目立った被害はない」
「でも3週間何もこないって逆に不気味だよねー」
確かに、今までだと一週間、遅くても二週間に一度は飛来の報告がきていた。3週間となると何かを企んでいるのかと勘繰りたくなってしまう。
「私も小型兵器の数を数えたことはないが、もしかしたらそろそろ小型兵器も尽きてきているのかもしれない」
エルは腕を組んで何やら思案しているようだ。
「でもさ、ずっと思ってたんだけど、なんで小出しで襲ってくるんだろうね。700万がいっぺんに襲ってきたらそれだけでだいぶ脅威だと思うけど」
確かに、八王子に飛来してきたときも隊列を組んできていたから順番に倒していけばよかったが、あれがいっぺんに降り注いでいたら、とても市民を守り切ることはできなかっただろう。
「それはシステム的な問題が大きいな。いっぺんに下ろすとなるとそれぞれを若干ずらしつつ下ろさねばならない。そうすると一体一体プログラムし直す必要があり、莫大な時間がかかる。そこで、一部リーダーを決めて、他がそれを追いかけるようなプログラムにすれば、リーダーの位置情報を操作するだけで他の兵器はそれについていく」
エルの早口だと毎度のこと分かりにくいが、つまり先頭にみんながついてくるようなプログラムになっているということらしい。
「小型兵器が尽きたらどうなるノ?」
「この前のように再び鋼鉄兵器を持ち出してくるか……あるいは生物兵器を持ち出してくるか」
生物兵器。また厄介そうな言葉が飛び出した。
「生物ってことはあれ?触手とか?」
こころなしか琴里が嬉しそうなのはなぜなのか。
「そういうのもあれば、細菌のようなもの、怪物のようなものまで様々だ。いわゆる
「それの対策は大丈夫なの?」
ハクトが聞くとエルは大きく頷いた。
「ああ。進めているから心配するな」
「よっしゃ、面白そうな話聞いたし、さっさとご飯食べよう」
琴里が不謹慎なことを言った気がするが、目の前のご飯が冷えかかっているのは事実なので、一同は挨拶をして端を手に取ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます